米国領のサイパン島を訪れて出産し、赤ちゃんに米国籍を取得させる中国人妊婦が増えすぎたため、サイパン当局がこうした出産を禁止した。しかし、今も違法なブローカーが暗躍し、出産する中国人は少なくないという。中国・新華社が４月３０日付で報じた。

　２００９年に中国人がノービザで最長４５日間滞在できるようになってから、サイパンでは中国人による出産が急増した。一部報道によると、サイパンで生まれる赤ちゃんの７割が中国人という状況に。中国人が増えすぎたとして、サイパン当局は昨年、こうした中国人の出産を禁止した。

　しかし中国では今も違法なブローカーが暗躍しており、サイパンでの出産を希望する女性がイミグレーションなどのチェックをくぐり抜けられるよう、妊娠５カ月ごろから教育し、お腹がまだあまり目立たない妊娠６カ月ほどの時期に送り込んでいる。中国人がノービザで滞在できる期間は４５日間だが、１８０日以内に自ら退去すれば処罰はされない、というのがブローカーの説明だ。

　あるブローカーではこうした出産パッケージの費用が１０万〜１５万元（約１６０万〜２４５万円）。出入国のための手続きやサイパンでの病院の手配だけでなく、ベビーシッターまで用意できるという。

　３５歳のある女性は「子どもが大きくなって米国に留学すれば１００万元以上はかかる。出産の段階で１０万元ほどをかけて“アメリカ人”にしておくことは、とても合理的な投資だ」と語った。

　当然、こうした違法な出産にはリスクが伴い、順調に米国籍を取得できるとは限らない。中国人女性は妊娠していることが分かれば航空会社から搭乗を拒否されてしまうほか、例えサイパンで出産できたとしても、「悪意のあるオーバーステイ」と判断されれば、その後、米国に入国できなくなる恐れがある。広東省の弁護士は、出産する側とブローカーとの間にトラブルが発生する可能性もあるとして、注意を呼びかけた。（編集担当：古川弥生）（イメージ写真提供：１２３ＲＦ）