相手が緩いのでこちらも緩く対応できるのは利点……

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フランスで暮らしてみると様々な文化の違いに出くわす。システマティックな社会に慣れた日本人が、人間味あふれるフランスでぶつかりがちな壁を紹介します。

■店員が気付かないふり
フランスのカフェといえばギャルソンと呼ばれるホールの給仕がいて、こだわりをもってテキパキ行動しているイメージがある。しかし多くの場合、とても緩やかだ。何か注文しようと店員に合図しても忘れて来てくれなかったり、明らかに気がついていても忙しい時は気付かないふりをしたりする。注文を忘れることはあまりないが、いずれやってくれるだろうと黙っていても解決しないので、気持ちは言葉にして伝える。

■営業時間とは店員の就業時間
フランスの店は閉店前に閉まる。日本だと、例えば19時閉店でも19時までに着けば店内へ入れてくれるが、フランスでは19時が近づいた時点で入店を拒否されることも多い。閉店時間とは、客がすべて出て店が営業を終える時間。よって閉店10分前くらいに行って「10分間で終えるから! 」と言っても、店が面倒だなと思ったら入れない。しかし個人的な融通は日本以上に利くので、例えばスーパーマーケットの入口にいる警備員などと普段から顔見知りになっておくと、他の人は拒否していても特別に入れてくれることもある。早めに店が閉まる一方で、開店が遅れることもあり。

■責任者は責任者じゃない
フランスには責任者がいない。本当はいるが、別の何かのせいにして自分の責任として認めない。例えば配送だったり別の部門のせいと言う。また同じ質問を同じ部署の人にしても、人の数だけ返ってくる答えが違う。言われた通りのことをして再度連絡した際に、対応してくれた人が最初と連絡を取った人と別の人だと、まったく別のことを要求されたりする。しかしフランスでは文句を言って、相手が感情的になってしまうと余計解決は難しくなるので、「いかに自分が害を被ってかわいそうか、力になってほしい」という方向に持っていくのが、上手くことを運ぶコツだ。もちろん、理屈の通らない返答が何度来ても折れない心も必要。可能が不可能になる反面、不可能が可能になるのだ。

■宅配業者は宅配しない
宅配便とは家まで荷物を配り届けてくれるサービスのはずだが、フランスでは在宅でも家のポストに不在票を置いて、去ってしまう配送員がいる。結局届かないので、不在荷物を扱う最寄りの郵便局まで、こちらが受け取りに出向くことになる。不在票があればまだ良い方で、最悪の場合はまったく他人の家に配送されたり、届かないので問い合わせると、いつの間にか不在として発送元へ送り返されたりするケースもある。書留で送っても、毎回荷物が着くまで気は抜けない。

■パリ道路はトイレ
パリは路上の犬のフンで有名だが、意外と盲点になっているのが男性の立ちション跡だ。街中を歩いていると、建物の壁から歩道を横切って道端の排水溝に続く、細長い水跡を見つけられるはず。これらは犬か人間のどちらかの小用が流れたものであることが多い。パリの道路はどこでも少しだけ傾斜がかけられていて、水はすべて道端の排水溝に流れ込む仕組みになっている。そして時々、道端はゴミを流すために水が流れる(まるで水洗トイレ! )。踏んでも犬のフンほどの破壊力はないが、決して気持ち良いものではない。
(加藤亨延)