台湾の李登輝元総統が25日、自分の遺灰は台湾最高峰の玉山(ユーシャン)にまいてほしいと語った。李総統は台湾全土を巡る旅を続けているが、念願だった玉山登山は健康上の理由で医師が認めなかった。そのため、死んだ後は玉山から台湾を見守りながら、永遠に台湾と共にいたいという。台湾メディアの今日新聞などが報じた。

 李登輝元総統は1年あまり前から、「命の旅」と名づけた台湾全土を巡る旅を断続的に続けている。25日には2泊3日かの日程で台湾東部の花蓮と宜蘭を訪れる旅を終えた。一連の「命の旅」で、残されているのは基隆と新北と、いくつかの農村部だけになった。

 「命の旅」といっても、感傷にひたるのではなく、座談会への出席や取材に応じるなどでさまざまな意見を披露している。例えば25日までの旅では取材の記者に対して、台湾で2013年になってから大問題になった「黒心油」について指摘した。

 「黒心油」とは、品質の悪い食用油に添加材を加えて、高級なオリーブ油などに見せかけたものだ。李元総統は商道徳の低下を問題視し、「政府の取り組みはいい加減だ。こういうことで、国際社会における台湾の信用が失墜する。業者がこういう方法で金儲けをするのは、実によくない」などと批判した。

 25日までの旅では、しじみの養殖場や有機栽培の農園なども訪れた。養殖場ではしじみ料理を賞味し「私はしじみが大好物。家の食事でもたいてい、しじみ料理が出ます。90歳になっても、こんなに皮膚(ひふ)のつやがいいでしょ。しじみのおかげですよ」などとアピールした。

 李元総統は農業経済学者でもあり、総統在任中には、有機農業の奨励にも力を入れた。有機栽培の農園を訪れた際には経営者から、有機栽培への取り組みが大きな成果を上げていると詳細な説明を受けたという。

 順調に進み、充実な成果を上げてきた「命の旅」だが、李元総統は、「玉山に登れなかったことが、本当に残念」と告白。医師に「私の体の状態からして、玉山に登れますか」と尋ねたところ、「無理です」との答えだった。やむを得ず、医師の意見に従うことにした。

 李元総統は、「私が死んだら火葬にして、遺灰を玉山にまいてほしい」、「生きていた時には行けなかったので、死んでから行くことにしましょう」と述べた。その上で、「玉山は台湾の最高峰ですからね。そこに遺灰をまいてもらえば、台湾と共にいられる。永遠に台湾と共にいられます」と心境を語った。

 李元総統は自分の遺灰の扱いについて「子や孫が、私の言った通りにしてくれるかは分かりませんけどね。まあ、希望は伝えておきますよ」と笑いながら語った。(編集担当:如月隼人)