やさしい２４ 第１０話【芸術家・筒井はじめ】
理性ばかりで物事を処理すると波風が立つもんだ。
といって、そんなことに感情的になると世の中の流れと
逆らい、舟は揺れるもの。
人それぞれの価値観の違い、表現の違い、理解力、受け止め方、
その時の心理状態、色々あるからなー
相手や周囲のことばかり気遣うと、己の自由度がなくなり窮屈だ。
だからといって、逃げ出しても、今よりいい環境があるとも思えないし・・・
突如、やさしい２４がマドンナ的なバツイチ女優と現れた！
卑猥に指をたなびかせている。イソギンチャクみたいだ。
どうしたら、ぴったり意見を合わせられるんだ？
僕は考えてみた。。。。
考えていたら、手が落ち着かなくなった。
手が落ち着いてないけど、落ち着いてないから、描くしかない。
爆発だねぇー、手が落ち着かない時の絵筆は
今にもキャンバスからこぼれそうにいろどる。
立ち入るつもりはないけど、混沌の中に美を表現する理由があるんだろうねぇ。
もしかしてあれかい、現代人は内心混沌としちまってるようだから、
混沌の中の美を見せてやれば優しい人になれると思ってる口か？
そんなことしなくても、あんた、十分、優しいよ。大好きだ。
「おや、誰だろう？」
僕は忍び足で玄関に向かい、小声で「どなたですか・・・」そう聞いた。
「八麿です」
あらあら・・・そんな気分で、そそくさと八麿をアトリエにいれた。
腹は減ってねぇか？お前さん、ずいぶん若いのに真っ直ぐ生きたもんだよ。
しかし、同情するにも言葉が見当たらなかった。
なんて言えば、僕の言いたいことを言えるのかなぁ。。。
考えていたら、手が落ち着かなくなったもんで、
急いで筆を用意したが、それからの記憶がないのです。
意識はありました。ただ、なんとなくですが。。。
そして、完全に意識を取り戻したとき、八麿はいませんでした。
アトリエの壁には八麿を描いた絵が飾ってありました。
そして、やさしい２４が遠くから大きな声でいいました。
「いい絵だったから、飾ってオイタヨー」
僕も大きな声でいいました。
「ありがとうー」
筒井はじめ（Tsutsui Hajime)芸術家。東京都出身。小学生の時からアート活動を開始。賞歴は６歳から始まる。手掛けるデザインはファッション界も強く結びつき、早乙女太一の着物をはじめ、数多くの女優の衣装を担当する。各界から注目されはじめ、2013年4月ロイヤルミュージアム上野の森美術館で個展を開催した。日本お地蔵さまを守る会の臨時副会長。
FaceBookアカウント：筒井はじめ
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