「コップのフチ子」、大ヒットの理由とは?

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 今、巷で話題になっている「コップのフチ子」なるものをご存知だろうか? 筆者はよく行くバーで複数の「フチ子」を紹介され、一目見て気に入ってしまった。
 青色のオーソドックスなOLの制服を着た「フチ子」が主に出没するのはコップの縁。そこに乗って佇んでいることもあれば、危機一髪、ぶら下がっていることもある。また、時にはパンツ丸見えのアクロバティックなポーズをしていることも。
 ありそうでなかったこのミニフィギュアが初めて世に登場したのは2012年7月のこと。カプセルトイのシリーズ第一弾の発売以来、第二弾も含めるとこれまで300万体が売られている。
 そして、この程発売されたフィギュア付きオフィシャルムック『コップのフチ子Magazineプラス』(扶桑社/刊)によれば、玩具メーカーの奇譚クラブ(ちなみに雑誌の『奇譚クラブ』とは関係ない)が漫画家のタナカカツキさんに「ガチャガチャで何か作りませんか?」と声をかけたのが製作のきっかけだったという。

「お話をいただいたときに『あ、あのふざけた人たちだ!』とわかって・・・ここだったら何でも作らせてもらえそうだなぁって(笑)」(p14より)

 そんなタナカさんが最初に注目したのが、カプセルトイにはマグネットやストラップといった「くっつくもの」が多いということだった。「新しいくっつき方はないか」と考えていたそんなとき、会社員やOLがカフェで食事やお茶をしている風景の中にちょこんと置かれているフィギュアのイメージが思い浮かび、「フチ子」は誕生した。「フチ子」は、異質なものの組み合わせから生まれた、アイデア商品だったのだ。
 そんな「フチ子」のヒットの要因についてタナカさんは次のように分析する。

「フチ子さんの、原作もない、どこのキャラクターでもない、空洞でガワだけあるところが、“いま”の特殊な時代にちょうどフィットしたんじゃないかな」(p15より)

 「フチ子」には確かに無国籍な雰囲気が漂う。見る人を選ばないのだ。設定も何もないから、自由に思い入れができる。そんなところに、人々が魅かれた部分はあるだろう。ちなみに、タナカさん自身は「2、3個売れて終わりと思っていました(笑)」と言っている。
 
 また、「フチ子」の秀逸なボディラインは、原型師(フィギュアの原型を造る人)の高橋渉さんの志向だとタナカさんは言う。そんな高橋さんは「人形になったときにカワイイ」「人形になったときに魅力的に見える」という点に最も苦心したと話しており、製造過程においても様々な工夫が凝らされていることが語られている。

 『コップのフチ子Magazineプラス』は「コップのフチ子」初のオフィシャルムック。タナカさんや奇譚クラブによる裏話、ツイッター上に一般ユーザーがアップした「フチ子」の写真や、有名写真家が撮る「フチ子」など、「フチ子」づくしの一冊だ。嬉しいことにこのムックには、限定のオリジナルフィギュア「ハートのフチ子」がついてくる。
 6月にはシリーズ第2弾となる「コップのフチ子2」が発売されており、さらに「フチ子」との遭遇率は高まるだろう。もしかしたら、明日の朝、自分の席に座ったらデスクの上に「フチ子」がいるかも知れない。
(新刊JP編集部)