Facebookでもできる、体験を学び変える方法/柳田 善弘
「学ぶ力」の差が生む能力の差
ビジネスゲーム/ビジネスシミュレーションを活用した研修で学習効果を高めるためには、体験そのものはもちろんですが、その振り返りをいかに設計するかがより重要であると私は考えています。
そして、この振り返りのコツ(フレームワーク)は日々の活動から学びを得ることにも準用できます。
また、「学ぶ力」の差が生む能力の差は時間の経過とともに拡大していきます。
本稿が新社会人を含めた新天地で働くみなさんにとって、日々の活動を振り返り、学び、成長し続けるヒントになれば幸いです。
プロセスA「書く→話す→聞く」
本稿では体験から学ぶための2つのプロセスをご紹介します。
プロセスBはプロセスAの一部にもなっていますが、独立して考えることができるので、2つのプロセスとしています。
まずは1つめのプロセスです。
書く(個人で思考をまとめる)
グループワークなどでは、いきなりディスカッションをはじめてしまうと、声が大きい人の意見に思考が引っ張られてしまう人もいます。
そこで、まずは一人で自身の考えをまとめることをお勧めします。
その際に重要なのが「適切な問い」なのですが、こちらは後述します。
話す(他人に伝える)
自分で書いた内容を整理する方法として、その内容を他人に伝えることが有効です。
断片的なメモでも、誰かに伝えようとすると、いくらか体系的に、また文脈を意識するものです。
そのプロセスで、自分の考えがまとまっていきますし、もしまとまらなければ少なくとも「まとまっていない」と自覚することはできます。
聞く(フィードバックを受ける)
自分の考えを補正するだけでなく、深めるためにも他者の意見は重要です。
ここで重要なのは、本プロセスの目的は「体験からの学び」ですから相手を説得・論破しようとしないことです。
相手の意見を取り入れたり、質問に答えるために考えたりと、自身が得た学びに対して複数の観点から妥当性や改善点を検討する機会になります。
プロセス2「観察する→見出す→適用範囲を検討する」
先のプロセス1の「書く」で触れた「適切な問い」のヒントとしても使えるのがこのプロセス2です。
観察する(現象に注目する)
ゲームに負けると「悔しい!」「あいつのせいで!」と感情的になるかもしれません。
これ自体は真剣に取り組んでいればこそ、という面を表しているのでよいのですが、そこで終わってはもったいないです。
人と現象を分けて、「どのようなプロセスの違いが、最終的な成果の違いを生んだのか」という事実に目を向けます。
見出す(抽象化・具体化する)
現象の因果関係を抽象化し、ルールや法則を見出します。
また、その体験から得たルールや法則をふまえ、自身がビジネスや日常でどのように振る舞うべきかを検討します。
抽象化にあたってのポイントは、自身の思考や感情すら一般化して考えることです。
例えば「自分は・・・」というよりは、「人は、時間的余裕がない中で、選択肢を提示されると、どれを選んでも最適でないことに気づかない場合がある」という具合です。
こうすることで、似た状況に置かれた際にも「時間的制約の適切さ」や「選択肢の適切さ」に目を向ける習慣を持てるでしょう。また、解決できない場合でも「これは最適な判断をしづらい状況だ」と自覚することはできます。
また、せっかく見出したルールや法則に憶えやすい、できれば魅力的な名前をつけることは、その学びを記憶・定着させるのに有効です。
適用範囲を検討する(例外も考える)
ビジネスパーソンは学者ではないので、万能なルールや法則を見つける必要はありません。
そして、たくさんの課題を抱えるビジネスパーソンにとって、完全性を求めるよりも、そこそこ使えるツールを、より多く発見することが時間対効果として有効なことが多いでしょう。
そこで例外を気にして万能なルール・法則づくりに逡巡するよりも「こんなときは使えないな/こんなときしか使えないな」と適用範囲を設定して、万能さよりも実効性を高めることをお勧めしています。
SNSやブログ、雑談からでも始められる
今回ご紹介した日々の体験から学ぶ方法は、自然と「書く」で始まり、コメントも受けられるFacebookやTwitterなどのSNSやブログとも相性がよいです。
その際にポイントとなるのは、何よりも学びを目的としていることを強く意識することであり、その方法として前述の2つのサイクルを実践することです。
社内SNSでの運用ももちろん可能ですが、上司や先輩社員から上から目線でアドバイスという名の指導を受けることは、場合によっては学ぶ動機を損なってしまうこともあるでしょう。
そのような時は、最初にお伝えした継続的な「学ぶ力」の差が生む能力の差を思い出し、指導に感謝しつつその適用範囲を検討する等、自分なりに学びを深めるのもよいかと考えます。
以上のことは実は行動に移すことも難しいことではありません。
同僚とのランチや飲み会のときにでも、雑談混じりにオリジナルのビジネス版マーフィーの法則(ビジネスあるあるネタ)でも考えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
本稿を参考にしていただいた小さな行動の積み重ねが、みなさんの成長の一助となれば幸いです。