「ゲンロンカフェ、景気どうっすか?」 陽気なオーナー、東浩紀氏に聞いてみた
「ツイッターで記事を作るのではなく取材に来てくれ、J-CASTさん! いまならば工事中の現場も公開しますよ〜w」
思想家・小説家の東浩紀氏が、カフェバー兼イベントスペース「ゲンロンカフェ」をオープン――そんな話題をJ-CASTモノウォッチで取り上げたところ、なんと当の東氏からツイッターで取材のお誘いがあった。
そこでオープンから1か月ほど経った2013年2月21日、お言葉に甘えてお店を訪問してみることにした。多彩な活動で知られる東氏の新挑戦、畑違いの「カフェ」への参入だが、果たしてその繁盛ぶりはいかに。
50人収容のお店は満員御礼状態に
「いや、2月は予想以上の好調ですよ。今まで僕のトークイベントとか来たことない人も来てくれて。五反田という立地や、まだ寒い2月という時期もあって心配だったんですけど」
東氏が上機嫌で語るように、21日夜、真新しい店内には、満員御礼の約50人が詰めかけていた。
五反田駅から徒歩4分。こざっぱりとした店内では、小さなステージと壁一面を占める本棚が目を引く。テーブルに着くのは20〜30代の男性が中心だ。「Macbook Air」などノートPCや、タブレット持参組も多く、イベントをツイッターで「実況」する人も複数あった。もっとも東氏によれば、客層は日によってかなり異なるという。
「非常に面白いことに、イベントによって、お客さんの客単価から注文の仕方、カード利用率までもが全然違う。飲食業をやると、いろんなことが今までと違う観点で見えてきますね。あとはホットドッグに押す、お店のロゴ付きの『焼印』がいくらで作れるとか。こんな豆知識がどんどん増えていく」
と笑うあたり、「思想家・東浩紀」というよりは、陽気なカフェのオーナーといった風だ。「初体験」のカフェ経営を心から楽しんでいるように見えた。
ゲンロンカフェのコンセプトは、「文系と理系が融合する新型イべントスぺース&カフェ」。文学から現代思想、ジャーナリズム、さらにはプログラミングなど学際的に講座・トークショーなどを催すとともに、イベント終了後は登壇者や聴衆が一杯やりながら、ひざをまじえて交流できる場とする――それが東氏のビジョンだ。
「今や多くのイベントがネット中継で見られる時代。リアルの付加価値を考えたとき、客席や会場といった『フレームの外側』を体感できる場所にしようと思ったんですね」
東氏オススメのホットドッグも食べました
そんな東氏の目論見どおり、実際の営業でも半数近くの客がイベント後も店に残り、毎晩のように登壇者と一緒になって盛り上がっているそうだ。「まあ毎日いろんなことが起きてますよ。恋も、出会いも、あといさかいも(笑)」という東氏自身、2月中はほぼ毎日のように店に出て、その輪に加わっているとか。
「続けるとさすがに僕も死にますからね、3月以降はちょこちょこと。でもできるだけ時間を見つけて顔を出します」
話しかけても大丈夫ですか?
「ええ、ぜひぜひ。もちろん、お客さん同士でも声を掛け合ってほしい。その点、これまでのイベントスペースとは違うと思っています」
なおこの日は、「アートとしてのIT経営」をテーマに、東氏と実業家・家入一真氏の対談が行われていた。東氏の言葉通り、イベント終了後は2人とも客席に下り、気さくに客たちと言葉を交し合う光景が見られた。
ちなみに、イチ押しのメニューだという「ゲンロンスペシャルドッグ」(900円)もいただいた。決して安くないがサイズはかなり大きく、東氏ご自慢のオリジナルソースがぴりりと辛い。空腹の不勉強記者は「文系と理系の融合」より一足先に、「ホットドッグとビールの融合」を堪能させてもらった。