続・思考するWebディレクション 第4回
2013年01月18日
TEXT:文=田口 真行(株式会社デスクトップワークス)

前回に続き、今回はプレゼンテーション(以下、プレゼン)における「印象」を司るポイントについて話を進める。

■印象を司るポイント
プレゼンの印象とは、身振りや手振り、またスライドなどのツールを用いた見ばえだけに限らない。結論から述べるが、印象を司る最重要ポイント――それはプレゼンターの「思い」だ。

人は「興味ないもの」に比べて「興味あるもの」を説明するときのほうが、じょうずにプレゼンできる。さらに、第三者になにかを勧める状況においては「みずからが好きなもの」「みずからが惚れ込んでいるもの」のほうが、より前向きに「勧める理由=良さ」を伝えられる。まさに、思い入れの強さが伝達における印象を支えているといえる。



思い入れの強さがプレゼンの精度を高めることを理解していただくために、下記のワークを試してほしい。

【プレゼンワーク】
手元にあるアクセサリや文房具など、みずからが好んで使用しているモノを題材にして、第三者に勧めるプレゼンをしてみよう。実際にやると、そのモノへの思い入れが強いほど特徴や特性を引き出す視点が増え、説得力に差が出ることが実感できるだろう。



■プレゼン準備期間に意識するポイント
プレゼン準備期間とは「第三者に伝えるための準備期間」であると同時に、プレゼンター自身が、その提案内容に「絶対的自信=確信を得る」ための時間であるともいえる。思い入れの強さによって提案力が増して、より人を引きつけるパワーとなる。



プレゼンの前に今一度、提案内容が「相手にとって最良といえるか」「これを選ぶべきと胸を張れるか」と、みずからに問いかけてみてほしい。もちろん自信をもつことは、自己中心的に「自意識過剰になれ!」という話ではない。理由なき自信は、引きつけるパワーを生むどころか、相手を突き放す逆効果になりかねない。提案内容に確信をもちながらも、つねに意識すべきは相手の目線にあわせたプレゼンだ。

■相手の目線にあわせるポイント
ではどのようにして、相手の目線に合わせていくか。狙うべきは「相手の共感」を得ることだ。相手の共感を意識すると「相手の立場・状況」といった、別角度の切り口が見えてくる。これにより、押さえるべき視点が増えて、相手の目線にあわせたプレゼンができるようになる。



■第三者の共感を得るために
具体的な流れとして、まずプレゼンター自身が、その提案内容を良いと理解するまでの過程を振り返り、整理してみよう。企画を練る思案段階で、みずからが感じた懸念点、疑問点およびそれらを解決するための糸口を、アイデアが生まれた経緯ひとつひとつから掘り下げてみる。提案内容に含めたアイデアや企画要素が、相手にとって「なぜ必要であるか、なぜ最善であるか」といった背景と理由が見えてくるだろう。これがプレゼンにおいて共感へと導く「根拠」となる。

「選ばれる企画、勝つプレゼン」を達成する前提において「客観的に通用する、根拠を伴うプレゼン」は、相手の共感を誘いやすく、また採用されやすいため、そこを軸に提案内容を磨き、プレゼンの流れを構築していくとよいだろう。

■プレゼンにおける印象のまとめ
プレゼンにおいて、内容以上に印象が左右するとは「内容<印象」という図式ではなく、内容への共感をはぐくむために、印象をうまくコントロールして取り組む必要があるということだ。その印象を司るポイントであるプレゼンター自身の「思い」は、結局のところ内容が良くなければ発動しない。プレゼン内容への強い「思い」が、「共感」を育む要となる「根拠」を生む。さらにその思いがプレゼンの「印象」を司る。この連鎖的事由を忘れてはならない。

(続く)



■過去の記事
第3回「Webディレクションを左右する「勝つプレゼン」への取り組み(1)」
第2回「Webディレクターが意識すべき目線(2) ヒアリング」
第1回「Webディレクターが意識すべき目線(1)」

Åĸý¿¿¹Ô»á¶á±Æ[筆者プロフィール]
田口真行(株式会社デスクトップワークス 代表)●アルバイト先でWebデザインを経験、1999年に独立。フリーランスのWebディレクター・プロデューサーとして、企業Webサイトの企画、デザイン、制作、運用に至るトータルプロデュースを行う。2004年には「攻殻機動隊」のトリビュートCD3部作のジャケット、ブックレット、パッケージデザインを含む、全アートディレクションを手がける。独自手法のディレクションを題材にした、実践型の研修講師として、2002年より講演活動を継続的に行う。2006年、フリーランス形態から法人化し株式会社デスクトップワークスを設立。
http://d-w.jp/