これは究極の過保護教育か!?子供を家から一歩も出さずに育てる異常家庭とは
いつの時代でも、親は自分の子を世間のあらゆる危険から守ろうとするもの。時には、愛ゆえに行き過ぎてしまう例もあるが、「ここまでとは」と誰もが思ってしまいそうな一家が登場した。子供たちを“汚らわしさ”から守るため、一歩たりとも家の外に出さずに育て続ける異常な家族の生活を描いた、ギリシャ発のサスペンス映画『籠の中の乙女』(8月18日公開)がそれだ。
【写真を見る】子供たちの性の目覚めがきっかけとなり、小さな世界は崩壊していくのだが
第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリに輝き、アカデミー外国語映画賞にもノミネートされた本作。劇中に登場するのは、ギリシャ郊外に暮らす穏やかな家庭。彼らはとても裕福で、その広大な邸宅は周囲を高い塀に囲まれている。だが、家族の親密なつながりを誰にも邪魔されたくない父親は、3人の子供たちを一歩も家の外に出したことがないのだ。そればかりか、家族には幾つもの異様なルールが存在し、子供たちはそれに何の疑いも抱かず従っている。そんなある日、長男の性欲処理のため、父親が連れてきた女の登場をきっかけに、彼らの平穏な暮らしは少しずつ乱されていく。
高い塀に囲まれた裕福な楽園、そこから一歩も外に出たことのない子供たち、そして外の世界からやってくる女など、隠喩的なモチーフを巧みに組み合わせた本作には、さしずめ現代の神話といった趣きがある。監督のヨルゴス・ランティモスは「予言のようなものを意図したわけではない」と語っているが、本作を見て、これからの家族や社会のあり方について考えをめぐらせることは、決して見当違いではないはずだ。
劇中には性描写やショッキングな描写も盛り込まれているため、R18指定されているが、それよりも異常な状況下での生活を淡々と続ける家族の姿に戦慄を覚えるはずだ。説明的なセリフをほとんど排した演出や、アートフィルムのような洗練された映像も魅力的だ。この不気味な家庭に暮らす子供たちは果たして幸福なのか、それとも不幸なのか。その答えはあなた自身の目で見極めてほしい。【トライワークス】