にわかには信じがたい話だが、野田総理が「消費税増税法案」に着手した裏には、財務省の意向が働いたというのはもはや定説。この記者によれば、不倫騒動の起こる前から橋下氏と同省の間には熾烈な“攻防戦”が展開していたというのである。財務省関係者がこう続ける。
 「その最たるものが、7月5日に大阪維新の会が次期衆院選の柱として発表した『維新八策』。実はこの中には行政改革として、『歳入庁の創設』が、特別会計の見直しとして『消費税の地方財源化』が盛り込まれている。これに財務官僚たちが震え上がっていたのです」

 ご存じの通り、財務省の力の源泉は、予算配分と傘下組織の国税庁が集める莫大な税金だ。ところが、この「歳入庁の創設」は、雇用保険料の徴収効率化のため、日本年金機構の保険料徴収部門を国税庁と統合、財務省から独立させようというもの。そのため、権力の源泉を奪われそうな財務官僚たちが大慌てなのだ。
 また、前出の在阪政治部記者はこう語る。
 「『維新八策』に明記された『消費税の地方財源化』にも、省内は戦々恐々としている。というのも、当然ながら地方財源化すれば国庫は潤わない。これが断行されると財務省は内側からぶっ壊され、“キング・オブ・省庁”と謳われたその権力も地に落ちるともっぱらなのです」
 要は、こうした水面下の攻防戦が“橋下潰し”につながったとの噂が絶えないのである。

 ただし、その一方では「それは橋下氏がこの時期“挙兵”に動き出した一因に過ぎない」とする見方も多い。というのも、最近になって同氏は「『消費税増税法案』の成立を心待ちにしていた」との驚くべき情報がもたらされているからなのだ。
 大阪維新の会関係者が橋下氏の目論みをこう話す。
 「実は、橋下さんは当初は消費税増税に反対したが、その後はこの法案を成立させてかっさらおうと腹を決めていたのです。解散・総選挙後には、維新の会が中央政界を牛耳るのはほぼ確実。消費税を地方の直接財源とすることもたやすく、財源が火だるまの大阪都構想の実現にも打ってつけだからです。つまり、橋下さんは法案成立まで野田氏を泳がせていただけ。増税決定と同時に焼き打ちにしよう狙っているのです」

 なんとも恐ろしい限りだが、実際、最近の橋下氏の水面下の動きにはこうした思惑が見え隠れしているのも事実なのだ。
 前出の在阪政治部記者がこう話す。
 「橋下氏は今後、みんなの党と連携し、『歳入庁の創設』や野田降ろしを進めていく方針を固めている。ところが、野田降ろしについては『小沢氏と足並みを揃える』、あるいは『後方支援をする』と吹聴しているという話も流れているのです。要は、小沢が突き、野田がこねし天下餅を、その後悠々と食らおうと手ぐすね引いているのです」

 一部週刊誌によると、大阪維新の会が全国に300人の候補者を立てた場合、「100議席を大幅に超える議席数を獲得する」との票読みも出ている。橋下氏がこうした“一流の策謀”を企てるのも、ある意味当然といえるのだ。