「陸上のスプリントは同じ動きの繰り返しです。反対にサッカーなど球技の走りは常に変化し、2回として同じ動きにはなりません。そのために走りの基本をより精密にするか、応用が利くように幅を持たせるかといった違いはあります。しかし使うべき筋肉を使い、力を抜くところ、入れるところを正しく理解して動かすという走りの本質は同じなのです」

 FWは1歩の出足の鋭さがあれば、相手DFの前に体を入れられる。岡崎のようなタイプの選手に100m11秒台のスピードはいらない。勝負の瞬間は3歩、つまり5mの距離だ。そこでトップスピードに乗る動きが自然にできれば、力むことなくシュート体勢にまで移れる。すべては「走りの動き」にかかっているのである。

 今後、岡崎のプレイを見る際には動き出し、特に最初の一歩目が大きく前に振りだされているか、そして地面についている支持足が曲がることなく、真っすぐ地面を押し込めているかを見て欲しいと杉本氏は言う。これは100mの世界記録保持者ウサイン・ボルト(ジャマイカ)、そしてFCバルセロナのリオネル・メッシにも共通した動作。岡崎自身がイメージ通りに動けているかどうか、コンディションのバロメータがここなのだ。

「今後はポジション取りの質についても、もっと高めていけるはずです。常に最短距離を走れるようになれば、彼の代名詞でもあるダイビングヘッドをしなくてもシュートできる位置まで動けるはず。この効率性を考えて走る技術が上がれば、ザックの戦術にもさらにフィットしてくるでしょう」

 目指す走りに対し、完成度はまだ8割程度。現時点での岡崎は接触プレイを厭(いと)わない姿勢、全力でボールを追う運動量から、「泥臭い」といった印象が強いが、理想の走りに近づいていけば、「泥臭さ」だけでなく、当たり負けしない「強さ」や一瞬の「キレの鋭さ」といったイメージも備わってくるに違いない。

 岡崎のさらなる進化に注目である。

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