こんにちは、神戸市上海事務所の張文芝です。今回は、神戸市に本社を置く川崎重工の現地法人、川崎重工諮詢(上海)有限公司の董事総経理、永田泰さんに、高速鉄道事業や環境・省エネ事業などについてお話を伺いました。

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【張文芝の国際人探訪】

 こんにちは、神戸市上海事務所の張文芝です。今回は、神戸市に本社を置く川崎重工の現地法人、川崎重工諮詢(上海)有限公司の董事総経理、永田泰さんに、高速鉄道事業や環境・省エネ事業などについてお話を伺いました。

神戸市民の誇りに

 張文芝: 川崎重工(川重)の本社は神戸市にあります。私が神戸に留学中、初めて携わった仕事が川重と上海の宝山鋼鉄の商談の通訳でした。以来、私にとって川重は特別な企業です。神戸市民にとっても、御社は“技術の企業集団”として誇りになっていますね。

 永田泰さん: 川重と神戸市の関係は、1881年に遡ります。この年に神戸に造船所を設立しました。当社の歴史は造船から始まり、その後、事業領域を拡大し、現在は鉄道車両、航空宇宙、エネルギー設備、産業機械、環境・リサイクル、インフラ整備、レジャー製品と、その事業領域は陸、海、空、それから宇宙から深海にまで広がっています。

――川重が神戸海洋博物館内に設置した企業ミュージアム「カワサキワールド」に行くと、その技術力と幅広い製品群に圧倒されます。特に現在の技術や製品だけでなく、「未来の乗り物」など、川重が考える未来の製品が展示されているのが素晴らしいです。実は、上海で中国海洋博物館が建設中ですが、同博物館の関係者の中には、神戸海洋博物館およびカワサキワールドに感銘を受け、参考にしたいと考えているひともいます。

新幹線技術を供給

――中国で川重は、航空機事業以外、日本で展開するすべての事業を行っています。永田さんが董事総経理を務める川崎重工諮詢(上海)有限公司は、どんな役割を果たしているのですか?

 中国には、川重グループの工場、販社、事務所が約30拠点あります。当社では、会社立ち上げ時のフォローや、拠点からの各種問い合わせへの対応など、中国におけるグループ会社の補佐的な役割を果たしています。

――近年、川重の中国ビジネスで最も脚光を浴びているのが、高速鉄道事業ですね。

 高速鉄道事業は、中国の鉄道車両メーカー、南車青島四方機車車両に新幹線技術を供与する“技術供給”の形で進めています。新幹線技術が生かされ製造されている車両は、「CRH2型電車」で、中国の高速鉄道の半数を占めます。まもなく開通する北京―上海の高速鉄道にも、CRH2型電車の派生型の「CRH380A型電車」が一部導入される予定です。

――広州の地下鉄にも川重の車両技術が採用されているそうですね。

 広州の地下鉄4号線は、中国で初めてリニア地下鉄(鉄輪式リニアモーターカー)方式を採用したことで知られますが、この車両には川重の車両技術が使用されています。このほか、車両関係ですと、南車青島四方機車車両と、車両の設計を行う合弁会社を山東省青島市に設立しています。

――車両の内装は、中国では“日本式”の受けがいいです。

 そうですね。特に客席を進行方向に向けられる日本式の客席が、非常に評判がいいです。

省エネ機器の販売が好調

――中国では近年、省エネ、環境保護への関心が高まっています。こうした中、御社の環境・省エネ関連事業も好調のようですね。

 エネルギー多消費産業である、セメント工場向けの排熱回収発電設備の拡販が順調です。セメントは、石灰石を化学反応させて製造しますが、石灰石が燃焼する過程で排熱が大量に発生します。その排熱を集め、発電するのが排熱回収発電設備です。

――当初は日本政府と協力したモデル事業だったそうですね。

 環境・省エネ分野における日中間での協力が注目されていますが、当社の排熱回収発電設備事業は数少ない日中環境ビジネスの成功事例となっています。同事業はモデル事業として出発しましたが、その後、設備を導入した安徽海螺(CONCH)が導入効果に大変満足し、当社と合弁会社を作ることになりました。CONCHは、世界第3位のセメントメーカーで、アジア最大の生産量を誇ります。この合併会社を通じ、中国各地のセメントプラントへの導入を進め、現在140弱のプラントに導入されています。投資資金の回収が3年ほどで可能で、「導入しなければ損」と業界で認知されるまでになっています。

――南通における造船事業も順調です。

 世界的な海運会社、中国遠洋運輸集団(COSCO)と、江蘇省南通と遼寧省大連に合併会社を設立して事業を進めています。この10年で約80隻の船を造りました。中国は造船大国ですが、その中で南通の工場は中国で最新鋭の工場として評価されています。

――中国は建設ラッシュですが、建設機械に使用される油圧機器への引き合いが増えていると聞いています。

 日本の建設機械メーカーは現在、中国で油圧式建設機械の拡販に取り組んでいます。中国の建設機械メーカーも性能向上に努め、メーカー間で激しい競争が繰り広げられています。当社では、こうした建設機械に使用される油圧機器を製造、販売していますが、非常に好調です。油圧機器は高度な技術が必要で、中国で製造できるメーカーはまだ少なく、当社の強みのひとつとなっています。

世界の人々に“価値”を与える

――中国では近年、沿岸部で労働力不足が顕著になっていますが、こうした背景から御社の産業用ロボット事業も伸びているのではないですか?

 その通りです。製造業が工場の自動化を進めており、産業用ロボットの需要も拡大しています。自動車や半導体の工場へ導入され、溶接や塗装、ハンドリングなどで利用されています。

――今日はいろいろお話を伺いましたが、やはり川重の技術力は本当に素晴らしいと思いました。世界の人々に大きな“価値”をもたらすお仕事をされていると思います。

 現在は世界のメーカーがグローバルで競争を繰り広げる大競争時代ですが、技術力こそわれわれの重要な存在意義であると考えています。当社の技術力は百数十年の歴史の中で、先輩方が積み重ねてきた努力の結晶です。

――本日はどうもありがとうございました。川重が今後もその技術力を武器に、中国で大きく羽ばたいて行かれることを期待しています。(2011/07/01)(情報提供:ウェネバー/ビズチャイナ/ビズプレッソ 取材担当:岩下祐一 編集担当:水野陽子)

==================================================================プロフィール:永田泰(ながた・やすし)

1989年神戸市外国語大学中国学科卒業、同年川崎重工入社、ジャカルタ事務所勤務等東南アジア市場を担当。その後、台湾地区高速鉄道案件に従事した2001~2004年を除き、1994年来中国関係業務を担当。北京・上海で計11年勤務。北京事務所長兼務。神戸が本社の会社に就職したにもかかわらず、入社直後の研修期間を除き神戸勤務の機会がなく、いずれは神戸勤務になりたいと考えている。