――それぞれ役作りについて意識されたことはありますか?

藤原:しっかりとJAXAの意見を聞き、自分で納得して、その専門用語や行動、いろいろなことを明確にした上で細かくやっていこうと僕は思っていました。JAXAの方たちも本当に丁寧に親切にいろいろなことを教えてくれて、あの人たちがいなかったら、この映画は完成していなかったと思います。

――「健人」という役自体についてはいかがでしょうか?

藤原:三浦さん演じる伊佐夫という父親へ対する思いと、はやぶさに対する思い、その二つのどっしりしたものを胸の内に溜めてやっていこうとは思っていましたね。

――杏さんは、役作りで何か工夫されたことがありますか?

:「夢見る理学系、それを叶える工学系」というセリフがあって、「あ、なるほど」とそこで初めて理学系と工学系の大きな特徴について知りました。私は、理学系で宇宙にロマンを持っているような役でしたので、とにかく宇宙のことを知ったり、想いを馳せる機会を増やそうと思いました。あとは、クランクインの前にJAXAに見学に行ったら、奈緒子みたいな、ちょうど30代前後の理学博士の方が、宇宙と交信をしていました。人当りよく説明してくださる側面もありながら、「ちょっと待ってて下さい。今コマンド送ってきまーす!」みたいな、専門的なことを当たり前にこなしている格好良いところもあって。他の方もそうでした。科学者ってビン底メガネみたいなイメージがあったので(笑)意外でした。

藤原:そうだよね。

:そういう人がいるんだな、というのがすごくホッとして。勿論、最新鋭の作業をしながらも、思いは「頑張れ!」というすごく純粋な気持ちを持っているということは大事にしたいなと思いました。

――お二人はご自身で理学系と工学系とどちらだと思いますか?

藤原:僕なんかは、全く分からない。そういうところで育ってきてないから。

:答えが一つしかないような数学とか理系はすごく苦手でしたね。理学か工学かで言ったら、たぶん奈緒子の方の理学なのかもしれないなと思います。

――夢を馳せる方ですね。

:夢を馳せるだけだったら、もう…みたいな。勿論、それだけじゃないと思うんですけど(笑)

――撮影の時に一番大変だったことはどんなことですか?

:セッティング待ちの暑さじゃない?

藤原:まあ、暑い時もありましたけどね。

:3Dのカメラってセッティングにすごく時間がかかるんですよね。レンズのずれの調整とかがすごくシビアだったみたいで。それを閉めきった管制室の中で座って待っている時は、真夏だったので「暑い」とぐったりとなって。

――その時に、何か暑さ対策はしましたか?

藤原:何にもないですよ。エアコン入れる訳にもいかないしね。

:スースーするオイルを、私がみんなに配って塗ってスーッとするくらいで。

藤原:あれは何?アロマ?

:アロマ。

藤原:杏ちゃんのアロマで、みんな撮影を乗り切ったようなものですよ。

――杏さんは、撮影現場で「ある意味」重要な役割を担っていたのですね(笑)

藤原:もう、だって、みなさん男優さんばっかりだから、杏ちゃんにみんな和ませてもらいましたよ。存在そのものに(笑)

:年代が20代から60代までいるJAXAのチームの中で、60代の大杉漣さんまで男の子みたいなノリでお話しされていたのが、少年みたいだったので見ていてすごく楽しかったです。