ビジュアルで理解する科学、入賞作ギャラリー
全米科学財団と『Science』誌は、毎年「科学・工学画像化チャレンジ」を開催している。[2010年度の入賞作品を紹介した日本語版記事はこちら]
2011年度には、33カ国から200のエントリーがあった。入賞作品は、2月2日付けのネット版Scienceで紹介されている。
カテゴリーには、動画やゲームも含まれている。以下、各カテゴリーの上位入賞作品を紹介しよう。
マウスの眼球細胞
この染色は、あらゆる細胞の中にさまざまな濃度で存在する3種類の分子の、それぞれに結合する抗体を利用して行われた。それぞれの抗体に赤、青、緑を割り当てたことで、眼球の中にある70種類もの異なる細胞の色分けが可能となった。
ナノ世界の断崖
写真部門で「ピープルズ・チョイス」賞を獲得した電子顕微鏡写真。チタン化合物のごく薄い層を撮影したものだが、峡谷の断崖にそっくりだ。
「Ti3AlC2」というチタン化合物を、フッ化水素酸にひたすと、アルミニウムが失われて「Ti3C2」という化合物になる。これは原子5個分という薄さの層が積み重なった、ほとんど2次元素材と呼んでいいようなもので、開発者らはこれを「MXene」と名付けた。
キュウリのイボ
選外佳作に選ばれたこの写真は、まだ若いキュウリの表面に生えているイボを800倍に拡大したものだ。専門的には毛状突起(trichome:トライコーム)と呼ばれる。
毛状突起の先端は鋭く、裁縫用の針の40分の1という細さだ。キュウリが熟す前に食べられてしまうことのないよう、先端からは苦味物質が放出される。この苦味物質はククルビタシンといって、発見されている中では最も苦い化合物だ。
[ククルビタシンは、ウリ科植物に特有のステロイドの一種で、特にゴーヤに多く含まれる。ユウガオおよびヒョウタンを食べた際の中毒の原因にもなる]
3Dで見た細胞の構造
細胞の構造は複雑なので、理解することが難しい。この動画では、細胞の中にある構造を整理して理解しやすくするための教育用プログラムが紹介されている。ビデオ・カテゴリーの第1位と「ピープルズ・チョイス」賞の両方を獲得した。
自己組織化するナノ構造
スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』の一場面を借用した場面から始まるこの作品は、セルフ・アセンブル(自己組織化)を行うナノ構造が、次世代の燃料タンクの開発の鍵となる可能性を説明するものだ。
科学ゲーム部門
インタラクティブ・ゲーム部門で圧勝したウェブ・ベースのゲーム『Foldit』は、タンパク質の複雑な折り畳みパターンの解析に、20万人のプレイヤーの力を合わせようというプロジェクト(日本語版記事)だ。
同部門で「ピープルズ・チョイス」賞を受賞した『Velu the Welder』[溶接工ヴェル](下の画像)は、『Wii』および一般的なコンピューターでプレイできる。学校教育からドロップアウトした若者が、実社会で役に立つ技能を身につけられるよう、インドで開発された。
『Powers of Minus Ten』
『Powers of Minus Ten』[10のマイナスのべき乗]というゲームでは、プレイヤーは人間の手の中にズームインして、さまざまな倍率での見え方を通じて、人体について学習することができる。上のスクリーンショットでは、人体が細胞レベルまで拡大され、分裂中の細胞が描かれている。[1968年に制作された有名な教育用映画『Powers of Ten』に対するトリビュートとなっている]
『Meta!Blast』(すぐ下の動画)も同じくズームインによるゲームで、プレイヤーは、研究室の同僚の体が縮んで植物の細胞の中に閉じ込められてしまったのを救出しながら、その過程で細胞の構造を学んでいく。
『Build-a-Body』(最後の画像)では、プレイヤーは人体の各器官を配置しながら、さまざまな疾病について学習できる。
暗黒物質
暗黒物質(ダークマター)は、目に見える物質の6倍以上の質量がありながら目に見えないという、宇宙の重要な構成要素だ。上の画像は、暗黒物質の影響をアーティストが視覚化したものだ。
上下の長さは、宇宙空間の2億4,000万光年に相当する。左右の軸は、ビッグバン(左)から現在(右)までの時間の経過を示し、時期ごとの宇宙の構造を描いている。
オレンジ色の紐状に描かれているのが暗黒物質で、幅1,000万光年にもおよぶ超空洞[宇宙において、銀河の存在しない超巨大空間]の辺縁に沿って発達し、今日の宇宙に見られるようなフィラメント状の銀河の網の目を形成している。
この画像は、インフォメーショナル・グラフィック部門で1位となった。
複合関数
画像は「ドメイン彩色」(domain coloring)という技法によって、ある複合関数を視覚化したものだ。ゼロ値を黒、無限大の値を白として、その間の値はそれぞれ異なる明度で表わしている。それぞれの色は、特定の複素数を表わしている。
カーボン・ナノチューブ
上のイラストには、さまざまな形のカーボン・ナノチューブが描かれている。現代のナノテクノロジーではこうした形のものを実際に作成することができる。
癌細胞と有糸分裂
H・P・ラブクラフトの影響を受けたような上のイラストに描かれているのは、触手のような突起を持つ乳癌の癌細胞だ。手前に浮かんでいる緑の塊は、癌細胞と闘うべく設計された「TRA-8」という抗体だ。
下の3D画像は、細胞分裂の1種である有糸分裂の様子を示したもの。青い部分は細胞膜、黄色は染色体を表わしている。画像の左上に、細胞から飛び出す形で表示されているのは、染色体の標識に使われる「MiniSOG」という蛍光タンパク質だ。
エボラウイルス
エボラウイルスの視覚化。インフォメーショナル・グラフィック部門で選外佳作に選ばれた。
TEXT BY Dave Mosher
TRANSLATION BY ガリレオ -江藤千夏
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