ジャイアンツ阿部慎之助選手のお父さん、阿部東司さん。豪快な見た目とは裏腹に、色々な質問に丁寧に答えてくださった素敵な方でした。ありがとうございました!

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名選手の影に名将ありといいわれますが、それが実の親であることもしばしば。ゴルフの石川遼選手、卓球の福原愛選手、体操の内村航平選手などのように親の影がちらほら伺えるケースも少なくありません。特に選手の低年齢化が進んできている近年は幼少期の頃の親の影響力は大きいはず。ということは、名選手を育てた親御さんに話を聞けば自分の子供も名選手になれる!? いや、名選手にまではなれなくとも何か子育てのヒントにはなるかも。

だったら聞いてみよう! ということで誰もが認める名選手、日本を代表するキャッチャー巨人軍の阿部慎之助選手(背番号10)のお父さん、阿部東司さんの子育て法を聞いてみました。

「私自身が一歳半の時に父親を失ってるんですよ。だから父子の関係がどういうものかわからなかった。でもずっと運動部にいましたから先輩・後輩関係ならわかる。だから親と子というよりは人生の先輩として接しようと思ったんですね」

東司さん自身も実は往年の名選手。高校時代は4番バッターとして3番を打っていた元阪神タイガースの掛布雅之さんと一緒に習志野高校を甲子園に導く活躍をされ、中央大学でも中心選手でした。プロ入りも嘱望されたもの怪我のためにノンプロに進んだ名選手。

ならばさぞかし慎之助選手をプロ野球選手にしたかったことでしょう。

「いやぁ、プロなんて考えなかったね。ノンプロにでもいければ食いっぱぐれはないかなくらいには思ってたけど」

「だから特に野球は教えなかったね。あいつが2歳とかまだオシメをしてた時、グローブをさせてボールを転がしてあげるでしょ、そうしたら二つのことしか言わないの」

「グローブに入ったら『スゲー』、入らなかったら『惜しい!』って。バットを振らせても一緒。当たったら『スゲー』、空振りだったら『惜しい!』」

なんてポジティブ! でも「惜しい!」の後に「もう少しこうしたらもっとよくなるよ」とかアドバイスはしなかったんですか?

「しない、しない。なまじ高校野球とか囓ってる人はすぐに教えたがっちゃうんだよね。でもそれじゃあ子供は野球が嫌になっちゃう。まだ小さな子供なんだもん。野球を好きになってもらうことが一番ですよ。だから『スゲー』と『惜しい!』だけ」

素晴らしい! これはできそうでなかなかできない。その他に気をつけたことはあるんですか?

「感謝の気持ちだね。まずは先祖への感謝の気持ち。やはり自分が存在するのは先祖のお蔭ですから。だから墓参りとかは欠かさせなかった。そして生きた先祖として婆さんも大事にさせたね。ついでに『一番近い先祖は親だぞ』とも言って聞かせたけど(笑)」

「だから裏方さんへの感謝の気持ちも絶対に忘れちゃいけないって、ずっと言ってきましたね」

素晴らしい! 先日阿部選手の提唱で被災地支援のチャリティーイベントを取材する機会がありましたが、スーパースターになっても奢ることなくみんなの力になる根底には感謝の気持ちがあったのですね!

やはり子供がどう育つかには親の影響は大きそうですね。それでは子供をスポーツ選手にしたい親御さんになにかアドバイスはありますか?

「とにかく褒めてください。野球だったら野球を好きにさせてください。『スゲー』と『惜しい!』だけ。とにかく褒めてあげてください」

褒めて育てる、とよくいうけれど、一流の子育てはここまで徹底するのですね。 好きこそものの上手なれ、納得です!
(鶴賀太郎)