――作品の中では、主人公たちが、どうしようもない状況に追い込まれていきますが、ご自身の現在の状況はいかがですか?

鼠先輩:プー太郎みたいなものですからね。この映画のようなスリリングな感じはないですね。でも、人生を投げ打ってまでも、そこだけに懸けて生きるっていうのは好きです。ある意味、俺も“一発屋”なので。男性だったら好きなんじゃないかな?

――憧れるところはありますね。

鼠先輩:俺は憧れますね。でも、みんなしないでしょうけどね。

――守るものがあったりして、なかなかその勇気はないですね。

鼠先輩:守るものがあるし、そこまで人生を懸けたら博打ですよね。俺は好きですけどね。


歌は、どうでもいい

――鼠先輩に人生を懸けるものがあるとしたら、それは何ですか? 歌でしょうか?

鼠先輩:歌は、どうでもいいですね。

――そうなんですか?

鼠先輩:「ポッポ」しかやってないですからね。歌の半分が「ポッポ」ですからね。あんなのに懸けられないですよ。人生そのものじゃないですか? だって、いつか死ぬし、人の人生なんて時間が決まっていて、それが早いか遅いかだけ。自分は人生が博打みたいなところがあって、浮き沈みがあるから、そういうことは常日頃から思っていますね。サラリーマンみたいにずっと同じことをするのが苦手なんです。そういう生き方しか出来ないですね。

――人生に浮き沈みがある中で、現在はどの辺にいらっしゃると感じていますか?

鼠先輩:今は、一般的には沈んでいるでしょうね。売れている時は毎日のように、テレビに出て、本当に寝る暇もないくらいのスケジュールでやっていたんですが、今は寝過ぎて頭が痛いくらい。でも、そういう波があるから人生だし、良い時もあれば悪い時もあるし、忙しい時もあれば、そうでない時もある。その方がスリリングだし、どうなるか分からないので面白いですよ。

――2008年に「六本木〜GIROPPON〜」でブレイクされましたが、あのような状況にもう一度返り咲きたいと思いますか?

鼠先輩:返り咲きたいというか、普通でいいんです。それも波があるなと思っていて、また来るかも分からないし、来ないかも分からないし、それはもう誰にも分からないことですよね。でも、来るかも知れないから、そのために準備をしておかなきゃいけない。ジェットコースターじゃないけど、繰り返すんだろうな、という風な捉え方はしていますけどね。

――「窮鼠猫を噛む」ということわざがありますが、作品の中から、ピンチに追い込まれた時に自分はこうしよう、というようなヒントは得られたりしましたか?

鼠先輩:俺は、楽観的に考えるようにしていますけどね。あんまり考えすぎてもそのようにいかない場合があるし、考えなくてもいい方にいくこともあるし。作品にもあるように、結局、人間社会で生きているから、人と人との繋がりは、なるべく大切にしようとは思っています。それが、やっぱり良い方向へ転がるような気がしますね。


格好とギャップがある行動

――被災した岩手県の南三陸町でボランティアをされているそうですが、それも「繋がり」を大切にしているからでしょうか?

鼠先輩:あれは好きで行っているから。暇だっていうのもあるんですけど。ただ、目の前でそういう人がいる訳ですよね? それをなかなか放っておけないという性格で。普通に酒飲んで帰っている時に倒れたかわいいお姉ちゃんがいたら、「大丈夫ですか?」と言いますよね? 別にかわいくなくてもいいんですけど。これからもずっとやっていきたいです。

――今の格好と、かなりギャップがある行動ですね。

鼠先輩:見かけでよく判断されるんです。まあ、俺も人は見かけで判断するんですけど。こんなのはキャラクターですからね。パンチパーマなんて一刻も早く止めたいんですけどね。デビューの設定を間違えたと思いました。金もないのに月に1回1万円以上払っているわけですからね。しかも、火傷していますからね。火傷してまで行きたくないんですよ。でも、しょうがないと思っていて。

――歌で被災地の方を勇気づけることはしないんですか?

鼠先輩:俺の歌で勇気なんて与えられないのは分かっています。悪ふざけでやっているんですからね。たぶん、その時はいいけど、本質的に歌では救えないと思いますよ。一過性のものですよね。俺はそれが嫌で、継続的にやりたいんです。


5秒で殺される主役

――この作品をどんな人に観てもらいたいですか?

鼠先輩:人として生まれたからには、観るべきなんじゃないかな、と思いますね。ここまで愛のために、好きな人のために人生を投げ打ってまで行動する人ってなかなか最近いないですからね。だから全ての人にいんじゃないですか? 愛に飢えている人とかね。

――愛に飢えている人は、たくさんいますからね。

鼠先輩:ほとんどが飢えているんじゃないですか? 愛の定義も分からないし。何が愛なんだろうなっていう。この映画は愛の物語って言っちゃったけど、これが果たして愛なのかも分からないし、愛なんていろいろな形がありますからね。そういうことを考えるには、すごく良いだろうし、そこでサスペンスだったり、アクションだったり、いろいろな要素が入っていて、娯楽としても面白いし、くだらない映画が多い中で、俺は良いと思いますよ。この映画を観て、考えて、それで家族を大切にするきっかけになれば、それは素晴らしいと思いますけどね。他の映画の悪口を言うわけではないけれど。

――映画の中でラッセル・クロウが掛けているサングラスと、鼠先輩のサングラスの形が似ていると思うのですが、もし今回のクロウの役が、鼠先輩にオファーがあったとしたら、やってみたいと思いますか?

鼠先輩:普通にやりたいです。でも、登場して5秒くらいには殺されたいですね。

――分かりました。ありがとうございました。



映像作品にも造詣が深い鼠先輩は、ラッセル・クロウとポール・ハギス監督による『スリーデイズ』を絶賛していた。時に笑いを交えながら、基本は大真面目に語る鼠先輩。ビジュアルとのギャップがとても魅力的に感じた。ふたたび“ポッポ”するための「鍵(キー)」を、鼠先輩はもう手に入れているのかも知れない。

映画『スリーデイズ』は、9月23日(祝・金)より全国ロードショー。

映画『スリーデイズ』公式サイト
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