交通事故で大脳の約50%の機能を失った青年がこのほど、江蘇省南京市にある東南大学を卒業した。王亦〓(ワン・イーカイ)さんだ。授業は1回も欠席しなかったという。中国新聞社が報じた。(〓はりっしんべんに「豈」)

 王さんは東南大学合格直後の2005年、交通事故で重傷を負い、右脳は75%以上を失った。大脳全体では50%以上が機能を失ったという。医師は事故直後、「このまま意識を取り戻さない可能性が極めて大きい」と宣言した。

 昏睡から目覚めたのは事故発生から10カ月後だった。その後、両親による懸命のリハビリで意識を徐々に回復した。知能や運動機能だけでなく、感情面などを含め人格を全面的に取り戻したことが「人間の脳が持つ偉大な力を示すもの」という。

 中国では学年が9月に始まる。王さんは2007年9月に復学した。授業に出席する前に交通事故にあったので、“新入生”として再スタート。4年間を経て、2011年6月に卒業した。

 在学中の2009年、英語の国家試験4級も合格した。大学生としては一般的なレベルだが、国家試験合格は“奇跡の回復をみせた特別な人”に対しての評価ではなく、他の受験者と同一条件で合格できたことがうれしかったという。

 王さんにはガールフレンドがいる。2年前に知りあった。報道では「奇跡の回復」などと順調ぶりが強調されていたが、実際には体を動かすこともままならず、後遺症と思われる記憶力の減退にも悩んでいた。そんな彼を助け、時には強制的に課題を与えたのが、彼女だったという。

 英語の国家試験でも、単語の暗記力が落ちていたので、同級生は「無理ではないか」と考えていた。彼女は逆に「あなただからできる」と言った。「彼女の期待を裏切ることはできない」との気持ちが、勉強に集中する原動力になったという。

 今でも、左足と左手が思うように動かない障害がある。王さんはこれまでにブログで、「私にとって前に進む勇気があるかどうかは、問題でない。退路はすでにない」などの心境をつづった。失ったものを悔やんでも意味がない。「今の自分をどう向上させるか」だけを考え、懸命に努力した学生生活だった。

 卒業できただけでなく、「最愛の女性」を得ることもできた。ふたりは来年(2012年)5月に結婚する。(編集担当:如月隼人)



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