東京電力が今後長期にわたって電力供給不足になることがほぼ確定的な中で、東京ドームは、その存在自体が問われることになりそうだ。テント形式のために電気で空気を送り続けないと形を維持できない施設。そして昼でも煌々と明かりをつけないと野球が出来ない施設。札幌ドーム、ナゴヤドーム、京セラドーム、福岡ドーム、西武ドームなども電気の消費量は莫大だが、東京ドームとは異なり使っていないときは、電力消費は少ない。

巨人が早々にドームでの試合を急ごうとしたのは、そうした声が上がる前に既成事実を作りたかったからではないだろうか。東京ドームと読売グループと直接の資本関係はないが、ドームと周辺施設が読売系列と深い関係にあることは明白だ。巨人と言うチームのアイデンティティは、東京ドームを使うことによって保たれている部分も大きい。

今回のセリーグの迷走の背景には、例によって渡辺恒雄球団会長の意向があったとされる。16日に行われた巨人軍の財界後援会「燦燦会」の席上でも意気軒昂で、サイン会や撮影会が自粛されたと聞いて「懲罰する」と怒ったという。何もかもが自粛自粛に流れる中で、この老人の発言は悪いとは思わない。しかし、この人はマスメディアの長にはふさわしくないことに、常に「唯我独尊」の言動をするのだ。「巨人だけが」「読売だけが」「自分だけが」。巨人には一応滝鼻というオーナーがいて、清武と言う社長もいるが、この二人が渡辺さんに逆らったことはない。またセの他球団も表立って異論を唱えることはない。今回のセリーグ3月25日開催も、パリーグが早々に4月12日開催に踏み切ったことに同調したくないために決めたのではないかと思う。

政府筋からクレームが出ても、すんなりとパリーグと歩調を合わせるのはしゃくだと言わんばかりに中途半端な修正をして、世間からさらに非難を浴びている。3月29日から開催、4月4日からはドームでナイターという決断も愚かしいが、それ以上に試合を9回で打ち切るという判断が情けない。試合に決着をつけなくても満足できたのは、昔のファンだ。延長回の息詰まる攻防をなくすよりも、試合のスピードアップを促進すべきだったと思う。

個人的には、3月25日開催でも良かったと思っている。しかし、その際には神宮や多摩川や横浜など、屋外の球場でデーゲームをやるべきだった。多少の寒さはあっただろうが、それも観衆と分かち合うことで、非常時の野球の姿を見せるべきだった。そして被災した楽天を支援するために、交流戦を前倒しにしても良かったと思う。

MLBでは近年、屋根なし自然芝の球場建築が主流となっている。選手への身体的負担が小さい上に、観衆にも好評だからだ。雨天延期のときはダブルヘッダーも普通に行われている。

今からでも遅くはない。巨人は東京ドームを出て、青空の下で野球をすべきである。そして、メディアは選手が躍動する姿を被災地に届けて、「あなたがたのために野球をしているのだ」というメッセージを送り続けるべきだと思う。

⇒元記事はこちら

【関連記事】
・タンパベイ・レイズ野手陣の2011年｜2011MLB展望-20
・タンパベイ・レイズ野手陣の2011年｜2011MLB展望-19