ついに来たか…。史上空前の国内自動車製造の大転換が、現実味を帯びてきた。まず、日産自動車が動いた。

 2010年10月5日、日産は「九州工場を母体とした新会社設立の検討を開始する」と発表した。以下がプレスリリースの全文だ。やや長いが、本稿の議論を進めていく上で重要なので、是非目を通していただきたい。

日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:カルロス・ゴーン)は5日、同社九州工場を母体とした新会社設立の検討を開始すると発表した。本検討は、同社の日本事業強化の一環として、日本におけるモノづくり競争力を強化するために行うものである。

 現在、自動車産業を取り巻く環境は、各国通貨に対する円高の進行や世界経済の長期的な低迷、新興国企業の台頭、エネルギー・地球環境問題に対する関心の高まりなどによる小型車へのシフトや電気自動車をはじめとした電動化車両の市場投入など、従来にない厳しさを増すと同時に、大きな転換期を迎えている。

 こうした状況のもと、日産がグローバル自動車企業としていっそう成長していくためには、将来にわたり小型車も日本で生産し続けられるグローバル競争力を持った生産拠点をつくりあげていく必要がある。それを実現することで、国内100万台レベルの生産を確保・継続する。

 九州工場は、アジア地域のLCCサプライヤーの拠点にも近く、また周辺にコスト競争力に優れたサプライヤーが集積するなど、国内工場の中でも特に地理的優位性を持っている。この優位性を十分に活用し、グローバル競争力を持つ会社となるようチャレンジしていく。

 日産は、2011年秋の新会社設立を念頭におき、今後日産自動車労働組合とも協議を重ね、その実現に向けた詳細な検討を行っていく」(本文ママ)。

 以上を筆者流に要約すれば、「儲からない日本国内生産の根本的な見直し」である。事は、九州工場だけに止まらない。日産グループ全体、サプライヤー、さらには日産の関連施設がある地方自治体に対する「大変化への事前通知」である。本社機構の変革、関連企業・施設の統廃合、給与規定の変更など「大ナタをふるう前の心構え」を提示したといえる。

 さらに本件は「検討」であることがミソだ。労働組合や世論に対する「猶予期間」を設けて、「大ナタなのだが、ソフトランディングのイメージ」を打ち出している。

 日産の志賀俊之COOは今年1月の自動車工業会・新春賀詞交換会の席上、「世界市場が大きく変化している現状で、日本国内に(生産拠点や研究開発拠点など)何を残すべきなのか、弊社内で協議を進めている真っ最中だ」と語っていた。

 また最近、筆者が開発、実験、購買、製造、販売等、日産のさまざまな部署の関係者と話していると、「近年中に(社内に)大変化があるのは当然」と答える人が多い。彼らのこうした言葉は自社に対してだけではなく、日本国内自動車産業(特に製造)に対してである。

 今回発表された、「九州工場の新会社化への検討」はまさに、志賀COOの「何をどう残すか」そのモノである。

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