阿部寛(撮影:野原誠治)
 1987年に映画「はいからさんが通る」で俳優デビュー。端正な顔立ちとモデル出身の抜群なスタイルながら、コミカルな役を演じたテレビドラマ「TRICK」シリーズ(テレビ朝日)で人気を博した俳優、阿部寛。その後、ドラマ「HERO」(フジテレビ)、「結婚できない男」(フジテレビ)、「天地人」(NHK総合)など次々と話題作に出演。日本演劇界において欠かせない存在となった。そんな阿部が今回挑んだのは、「マッハ!!!!!!!!」のヒットが記憶に新しい“タイで最も有名な映画監督”プラッチャヤー・ピンゲーオ監督最新作「チョコレート・ファイター」だ。並外れた身体能力を持つ主人公の美少女・ゼンの父親役を熱演した。撮影中にケガを負うアクシデントもあったという阿部だが、リアルにこだわる監督の姿勢に感銘を受けたという。

――まず、お互いの第一印象を教えてください。

プラッチャヤー・ピンゲーオ監督:非常に物静かでソフトな印象を持ちました。阿部さんはたくさんの経験を持つ“スター”なのでもっと違うイメージを持ってたんです。阿部さんに出演OKの返事を頂いてから興奮してしまうと同時にとても緊張してしまいました。もし断られていたらもっと気楽だったかもしれません(笑)。

阿部寛(以下、阿部):僕もそうですね。「マッハ!!!!!!!!」「トム・ヤム・クン!」でタイを代表する大監督になられた方ですし、監督のやることなら国をあげて全員が協力するという話も聞いていたので、どんな方なんだろうと思って。でも実際は現場でも僕の意見をよく取り入れてくださって、異国の地に1人で来た僕に仕事をしやすい環境を作ってくださいました。

――今回、阿部さんを起用された理由は何ですか?

プラッチャヤー・ピンゲーオ監督:阿部さんの一番好きな所は目なんです。目が真剣味の伝わってくる光り方をしています。主演のジージャーもとても素晴らしい目の輝きをしている子なので、親子の役にピッタリだと思ったのです。

――そのオファーを受けて、阿部さんはどう思いましたか?

阿部寛:まず「マッハ!!!!!!!!」を観た時、大きな衝撃を受けたんですね。それまで、ブルース・リーとジャッキー・チェンのアクションを超えるアクションは生まれないだろうと思っている時に、凄まじいリアルアクションが突然出てきて。CGで色々な事ができる時代に、ノンCG、ノンワイヤーであれだけ魅せるってすごいですよね。その監督からオファーがくるなんてまさか思ってなくて。「アクションはあまりできませんが」という前置きをしてすぐお返事させていただきました。

――映画には日本刀を使ったアクションなど日本の要素が多く含まれていましたが、影響を受けた日本の作品はありますか?

プラッチャヤー・ピンゲーオ監督:日本の映画は色んなものを観てます。なので、映画はどの1本に多く影響を受けたということはいえません。アニメも含めて好きなので、子供の頃から仮面ライダー、タイガーマスクなどを観てきました。日本の作品の、繊細さと素晴らしいテクノロジー。その2つが同居している所に憧れます。

――今回の来日で次回作へのヒントは見つかりましたか?

プラッチャヤー・ピンゲーオ監督:実は「チョコレート・ファイター2」を作ろうと考えています。まだストーリーは全くできていないんですけど、撮影のほとんどを日本でしたいですね。まだ阿部さんにお願いしていないんですけど、次回作にはストーリーの段階から加わって欲しいなって思います。まだ本人にお願いもしていない段階で、今記者さんに話してしまってるんですけどね(笑)。

阿部寛:もちろん、末永くお待ちしております。

プラッチャヤー・ピンゲーオ監督:今度はもうちょっとアクションを増やそうかと思っていますよ。

阿部寛:いやいや! アクションシーンは少なめでお願いします(笑)。