フランス代表FW、ティエリ・アンリ(30)が17日のユーロ2008予選リトアニア戦で後半34分に先制ゴールをあげ、ミッシェル・プラティニのもつフランス代表歴代最多得点記録をぬりかえた。アンリはその2分後にも追加点をマークし、フランスを勝利に導いた。

 この試合は、フランスにとって勝たなければ自力での予選突破が消滅する大事な一戦。序盤から波状攻撃で再三のチャンスをつくりながら、守り中心のリトアニアにことごとく阻まれた。試合時間が残り10分に近づき、重苦しいムードが漂いはじめたところで生まれた値千金のゴールが、アンリにとっての代表42得点目だった。

 アンリのゴールラッシュは、奇しくも同じナントのスタジアムではじまった。初ゴールは代表4試合目となる98年W杯フランス大会の初戦(対南アフリカ)で生まれた。このときは、相手ディフェンスに当たってのゴールだったため、公式にアンリの得点と認定されるまで2日間かかった。「練習を終えたとき、(ゴール認定を)父が教えてくれた」とアンリは当時の思い出をレキップ紙に語っている。

 その父はいま病気と闘っているという。“将軍”プラティニのもつ大記録を20年ぶりに更新したアンリは試合後、TF1局のインタビューに答え、「やっとフランス全国にスマイルをプレゼントできる」とカメラの前で笑顔をつくった(これまでアンリはあまり素直に喜びを表さないと批判されてきた)あと、真面目な顔に戻って、「父のことを考えている。彼がいなかったら、いまの僕はなかった。このゴールは父に捧げたい」と神妙に語った。

 この試合のアンリのゴールは、個人の記録としてだけでなく、フランス代表にとって非常に大きな意味をもつ。同日の試合で同じB組のスコットランドがグルジアに敗れたため、フランスがグループの単独首位に躍り出た。次のウクライナ戦に引き分けても予選突破が可能になる。後に続くスコットランドとイタリアが直接対決を残してプレッシャーを背負うだけに、心理的にかなり優位な展開となった。