〈29歳女性記者がレポート〉“立ちんぼ”取り締まりのその後…「捕まるの? それは知らなかった」歌舞伎町ホテル街で男たちを直撃、“買う側”規制への本音
1956年に制定された売春防止法が、大きな転換点を迎えようとしている。今年9月、法務省の有識者検討会が取りまとめた報告書では、これまでの売春防止法では処罰規定のなかった“買う側”の勧誘等についても、新たな規制を設ける方向性が示された。
【画像】「3年前、昨年、そして現在」大きく変わった大久保公園の“立ちんぼ”
大久保公園周辺では、取り締まりの強化を受け、一部の“立ちんぼ”の女性が、場所を移動しながら客を待つ“歩きんぼ”や、路地などに座って客を待つ“座りんぼ”へと姿を変えている。“買う側”の男性たちはどう変化したのか。“立ちんぼ”取材を続ける29歳女性記者が大久保公園周辺のラブホテル街を1カ月半ぶりに歩いてみた。
“買う側”への規制強化に歌舞伎町の男たちは…
「待ち合わせ中なので、答えることはできないです」
新宿・歌舞伎町の大久保公園周辺にあるラブホテル街。ホテル前に立つスーツ姿の中年男性に声をかけると、うつむいたまま顔を上げることなく、取材を拒んだ。
大久保公園周辺では、2023年以降、売春目的で客待ちをする“立ちんぼ”の女性が目立つようになり、警視庁が取り締まりを強化。現在の売春防止法では、売春そのものではなく、売春目的で公衆の目に触れる方法で客待ちをする行為などが処罰の対象とされている。
そのため、警察官に声をかけられた女性が待ち合わせを装い、場所を移しながら客待ちを続ける光景も珍しくない。
そうしたなか、今年9月、法務省の有識者検討会が、売買春をめぐる規制の見直しについて報告書を取りまとめた。これまで処罰規定のなかった“買う側”についても、勧誘行為等に新たな罰則を設けるよう求めるというものだ。
大久保公園周辺で“立ちんぼ”を探す男性たちは、今回の動きをどう受け止めているのか。記者が、約1カ月半ぶりにラブホテル街を歩くと、行き交う通行人たちに紛れて周囲をうかがう男性の姿が点在した。
冒頭の男性が口にした「待ち合わせ中」という言葉は、奇しくも、“立ちんぼ”が取り締まりをかわす際にも使われる言葉だ。
別の男性は、当初こそ取材に応じていたものの、売春防止法の見直しについて話を向けると、途端に態度を変えた。
「変なことに巻き込まないでください」
そう言い残すと、その場から足早に離れていった。
一方、国内では大きく報じられている売春防止法の見直しを、歌舞伎町を訪れる外国人男性は知っているのか。ラブホテルの壁にもたれ、酒を飲んでいた外国人男性2人組に声をかけた。
トルコ国籍で日本語はまったく話せないというが、歌舞伎町には頻繁に来ているという。ここで何をしているのか尋ねると、男性の一人は目を合わせないまま、こう聞き返した。
「How much?」
記者だと告げると、今度は翻訳機を使い、トルコ語で「何の取引をするつもり?」と尋ねてきた。
売春防止法の見直しについて伝えると、2人は気まずそうに言葉を詰まらせたあと、顔を見合わせて「OK」とうなずき、「自分たちは何も買っていない」と説明した。
さらに、ホテル街を歩くと、自転車に乗ったネパール人男性から突然、「ホテル行こう」と日本語で声をかけられる場面もあった。在日10年以上で、日本語は得意だという。
再び記者だと名乗り、取材中だと説明したが、男性は笑いながら「ホテルは行かないの?」と繰り返す。「普段も女性とホテルに行くのか」と尋ねると、「ホテルに行きたいときは行く」と答えた。
そこで、売春防止法の見直しが検討されていることを伝えると、男性の反応が変わった。
「捕まるの? それは知らなかった。僕は仕事が終わったら家に帰るから、お金を払って女の子とホテルに行くとか、そういうことをしたこともないです。お金も持ってないので、ホテルは彼女としか行かないです」
売春か自由恋愛か…あいまいな規制の“線引き”
取材した男性の多くが、記者に声をかけたり、値段交渉をしたりしてきたものの、「取材」と伝えると口を閉ざしたり、関与を否定した。
一方、取り締まりの強化をさほど警戒する様子もなく、警察の動きを冷静に眺める“ベテラン男性”の姿もあった。
大久保公園周辺に30年以上通っているという70代の男性は、こう話す。
「そもそも『売春禁止法』ではなく、『売春防止法』ですからね。これだけ話題になっちゃうと、警察も取り締まっている姿勢を見せなきゃいけないんですよ。
私服を着て最初から摘発することを目的に動いている警察官もいますが、ずっと見ていれば分かりますよ」
警察の取り締まりを意識しているのは、女性側だけではないようだ。大久保公園周辺に頻繁に足を運ぶという50代男性は、過去に女性とホテルから出たところで警察官に職務質問された経験があるという。
しかし、買う側の勧誘等への新たな規制については、線引きの曖昧さを指摘する。
「買う側が罰せられたら、やばいです。でも、どうやって線引きするんだろうとは思いますよ。『交通費を渡しただけです』『お茶をして、たまたま恋に落ちました』みたいな話にもできるわけですから」
実際、ホテル街を行き交う男女が、必ずしも売買春を目的としているとは限らない。近くで働く風俗店勤務の男性は、最近の変化についてこう話す。
「自分が見ている限りでは、若い男の子が若い女の子に声をかけて、そのままホテルに入っていく姿が増えていますね。地方から遊びに来た人が、『せっかく歌舞伎町に来たんだから、記念に声をかけてみよう』みたいなこともあるんじゃないですか」
では、路上で“立ちんぼ”の女性を探す中年男性については、どう見ているのか。
「そういった女性を買う中年男性が、うちの店も利用するかというと、それは、働けない(若い)年齢の女性を好むような、“そっち側”の人の話になりますね……。歌舞伎町というのは、やっぱり、どう考えても怖いところなんです」(前出・風俗店従業員)
近隣のサービス業に勤務する20代男性は、取り締まりが強化されて以降、“立ちんぼ”だけでなく、彼女たちを探す男性側の変化も冷静に見ている。
「規制が厳しくなってから、女の子たちも建物の隙間みたいなところに座るようになって、逆に言うと、おじも目立つ環境になったと思います。なんでそこまでしてオフで頑張ってるんだろうと思いますね」
この日、記者が水商売関係者らに街の変化を聞いたところ、法改正の議論が進むなかでも、「人の出入りに何も変わりはないですよ」と口をそろえていた。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
