《「間違えた」と泣いても安楽死が遂行》83歳祖母、「死の注射なんていらない」はずが…本人の意思めぐり波紋「決めるのは家族ではない」【カナダ】
「死の注射なんていらない」──そう話していた83歳の女性が、その数か月後、医療的な安楽死によって亡くなった。家族によると、女性は実施2日前に泣きながら「間違えた」と訴えていたという。
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家族が調査を求め、警察も捜査を開始。海外メディアが相次いで報じ、ネット上では「本人の意思に反して安楽死させられることなんてあるの?」「家族が祖母に安楽死してほしくなかっただけでは。決めるのは家族ではない」など、女性の意思をめぐって波紋が広がっている。
カナダ・オンタリオ州の介護施設で7月10日、ステージ4の胃がんを患っていたブリギッテ・ステーゲマンさん(83)が、医療的死(MAiD)によって亡くなった。孫娘は、祖母は本当は死にたくなかったと主張している。
ドイツ生まれのステーゲマンさんは、英語は母語ではなかった。耳もかなり遠くなっていたという。孫は12年以上にわたって祖母の介護に携わり、6年前からは医療に関する代理権も持っていた。
ステーゲマンさんは以前、MAiDは自分の信仰に反するとして拒んでいた。2月には、点滴用のポートを安楽死に使うものだと思い込み、「死の注射なんていらない」と言って何度も自分で引き抜いてしまったという。孫が「これは痛みを和らげるためのもの」と説明して、ようやく受け入れた。
カナダでMAiDを受けるには、本人が自発的に申請したうえで、2人の医療従事者がそれぞれ適格性を審査する必要がある。ステーゲマンさんの場合はどうだったのか。
「10日間の旅行に出掛けた孫に知らされないまま、施設でステーゲマンさんとMAiDについて話し合いが行われ、1人目による審査が進んでいました。その後、施設から2人目の審査を予定していると連絡を受け、孫は旅行を切り上げて戻り、審査に立ち会いました。
2人目の審査で、ステーゲマンさんは『きょうだいは何人いるか』と聞かれ、『いない』と回答。実際にはきょうだいが13人おり、2人が存命。うち1人とは約1か月半前に会ったばかりでした。申告内容に事実誤認があったわけですが、医師は、MAiDに適格と判断しています」(海外ジャーナリスト)
約45分にわたり、泣きながら「間違えた」
孫はステーゲマンさんにMAiDを選択できるだけの判断能力があったのか疑問視している。ステーゲマンさんがいつ、どのような形でMAiDを申請したのかも不明だった。
MAiDが行われる2日前、孫が「金曜日に死ぬことになるって、わかっている?」と尋ねると、ステーゲマンさんは驚いて泣き出した。そして、約45分にわたって「間違えた」と涙ながらに繰り返したという。
翌日は孫とドイツのポルカ音楽に合わせて踊り、アイスクリームを食べて過ごした。
迎えた7月10日。家族によると、点滴の針がなかなか入らず、何度も刺し直したため、腕や寝間着、枕に血が付いたという。点滴の準備が整うと、医師はステーゲマンさんに最終的な同意を確認した。しかし孫によると、祖母は目を開けず、うなずくことも、言葉を発することもなかったという。
最終的な同意を示さなかったことで、処置は行われないと考え、家族は安堵した。ところが、医師は「では、進めます」と告げ、処置を開始したと孫は証言している。このとき、孫が医師に処置をやめるよう求めたのかどうかについては、本人のこれまでの証言からは確認できない。ステーゲマンさんは約10分後に死亡し、両手は祈るように組まれていた。
本当に自らの意思で死を選んだのか
「MAiDは原則として、実施の直前に本人へ撤回の機会を与え、最終的な同意を確認することが求められています。ただし、死が合理的に予見される患者については、判断能力があるうちに必要な条件を書面で取り決めていれば、その後に判断能力を失っても最終同意を免除できる場合があります」(同前)
ステーゲマンさんについて、こうした書面があったかどうか、家族は確認していない。家族は現在、申請書などMAiDに関する書面の開示を求めている。「誰がMAiDの話を持ち出したのか」と施設側にも尋ねたが、明確な回答は得られていないという。
施設や担当医は公にコメントしていないが、ステーゲマンさんは法的に同意していたとの立場だと報じられている。
「間違えた」と泣いた2日後、ステーゲマンさんは本当に自らの意思で死を選んだのか。家族は州の検視官事務所などに調査を求めている。ベルビル警察も、刑事捜査課がこの件を捜査していることを認めている。
