教員らが起こした卑劣な事件の悪影響は、こんなところにも--(写真はイメージ)

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 深く影を落とす教員による不祥事--。愛知県名古屋市の市立小学校2校が年度始めの恒例行事だった学級写真の撮影を中止し、保護者の間で困惑が広がった。その背景にあったのは、昨年同市で発覚した、教員らによる児童の隠し撮りや画像の共有だという。生成AIの発達によるディープフェイク画像や動画への懸念は高まっているが、影響はどこまで広がるのか。

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保護者からの“相談”で市教委も把握

「年度始めの学級写真の撮影がなかった、という保護者からの相談があって事態を把握しました」

 こう説明するのは、名古屋市教育委員会義務教育課の担当者だ。名古屋市内には250以上の公立小学校があるが、このうち年度始めの学級写真の撮影を中止したのは瑞穂区にある2校だという。

教員らが起こした卑劣な事件の悪影響は、こんなところにも--(写真はイメージ)

 同課の説明によると、端緒となったのは、小中学校の教諭らによるSNSのグループチャットで児童を無断で撮影した画像を共有したとして、名古屋市内の市立小学校教諭が昨年6月に逮捕された事件。学校の備品であったデジカメも悪用されたとされる。この事件を受けて、市教委では昨夏の段階で市内の各小学校などに通知を出したという。

「各学校での(デジカメやスマートフォンなどの)私用端末の取り扱いや教員の撮影に関する通知です。通常の写真撮影においても、職員による撮影は児童の学習にとって真に必要なのかについて精査するよう、各校に通知しました」(義務教育課)

 この通知を受けた形で検討した結果、2つの市立小学校が学級写真の撮影を中止するに至った。こうした判断については各学校の裁量に委ねられていることから、両校が中止の判断をした時点では市教委として把握しておらず、保護者からの相談によって初めて事態を知ることになったというのが実情だ。

保護者は困惑、反発や抗議も

 ところが学級写真撮影中止の決定をした小学校では、保護者から困惑の声が上がった。各家庭には、恒例だった学級写真の撮影を中止することと、それに代わって各行事でスナップ写真を多く撮影していくことが説明されたお知らせが配られた。これに対し、保護者らの意見の聞き取りなどが行われなかったことなどへの不満が噴出したのだ。そのため学校側は児童の全世帯にアンケートを取ったが、撮影中止の判断にはやはり反対の声が大きかったという。

「アンケートは約630の世帯を対象に行われました。そのうち回答があったのは約200世帯。このうちの7割は『やはり集合写真を撮ってほしい』との声だったということです」(同)

 半面、学校の決定に理解を示す声もあった。今回の一連の騒動の端緒ともなった教員らによる事件の影響だ。事件は名古屋市ほか全国各地の小中学校の教諭らが児童を隠し撮りした画像をSNSのグループチャットで共有したもので、AIなどによる性的なディープフェイク画像を教員が所持していたことも明らかになった。学校の決定に理解を示す声は、正面を向いた顔がはっきりとわかる写真がそうしたディープフェイク画像に使われかねないという懸念を反映しているとみられる。学校側はこうしたプライバシーの保護の観点や、全クラスの撮影に全体で約3時間かかることから、撮影をなくして授業を優先させるとする理由も挙げた。

 だがその後、9月には保護者らの221世帯が継続を求める署名を学校側に提出するに及んでいる。これに対し、市教委は次のように言う。

「当該の学校においては、現在のところ、年度始めの学級写真撮影については復活させるつもりはないということです。しかし、秋に行う『スポーツフェスティバル』という行事の練習の際に全員揃う機会があるので、初めての試みとしてその場で全体写真を撮影し、学級写真の代わりにするとの報告を受けています」(同)

 ただ、依然として年度始めの学級写真自体の復活を望む声は大きい。

「そうした声があることは事実ですので、我々としては学校の方を支援しつつ、保護者のかたにも丁寧に説明していく必要があると思っています。何とか正常な学校運営ができるように今後もしていきたいと考えています」(同)

卒業アルバムへの懸念は……

 名古屋市教委の説明によると中止されたのは年度始めの学級写真の撮影だけ。正面からの個人写真などが掲載される卒業アルバムについては、何の影響もないという。

 ところが、お隣韓国ではディープフェイク画像や個人情報保護などの懸念から、「イヤーブック」と呼ばれる卒業アルバムの制作中止が相次いでいるそうだ。日本の卒業アルバム制作会社の関係者が解説する。

「生徒だけでなく先生の写真も載っているため、先生との間に揉め事などのわだかまりを抱えたまま卒業した生徒らによって、先生の写真が悪意のある使われ方をすることがあります。その懸念から先生側の顔写真を抜き取って制作したり、もしくは一切作られなくなってきていると聞いています」

 AIの発展は目覚ましく、写真類も悪用される可能性が高まってきているのが実情だ。卒業アルバムに、児童・生徒や先生・職員の住所や電話番号といった個人情報が載らなくなって久しいが、日本でも韓国と同じような動きが出てこないとも限らない。

 一方で、前出の卒業アルバム制作会社の関係者は次のように指摘する。

「思い出を伝えて残しておくもの、という卒業アルバムと、ディープフェイク画像を使った犯罪の話を同じ土俵で考えるのはおかしい。ディープフェイク画像に対する懸念から学級写真の撮影や卒業アルバムの撮影をなくそうという話であるならば、それは短絡的だと思います。卒業アルバムを作る側としては、そうした流出に至らないような技術、例えば写真のスキャンを防止するような技術の開発に注力していくべきだと考えたいですね」

 AIがさらなる発達を遂げる中で、思い出を残すための写真の取り扱いをどのようにしていくか。悪用する者がいるからこそ浮かび上がる懸念だが、学校現場での暗中模索はまだ続きそうだ。

デイリー新潮編集部