「甲状腺」の異常は更年期と勘違い?だるさやむくみを招く“あの意外な原因”

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甲状腺機能低下性ミオパチーは、症状がゆっくりと進行するため、疲労や年齢のせいと見過ごされやすい傾向があります。疲れやすさ・むくみ・体重増加など、更年期障害に似た症状が多いことも、発見を遅らせる要因です。どのような変化が日常生活に影響を与えるのかを、具体的な例とともに確認します。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)

2014年岩手医科大学卒
2016年仙台市立病院循環器内科
2019年江戸川病院糖尿病・代謝・腎臓内科
2023年岩手県立中央病院糖尿病・内分泌内科 兼 救急診療科
2023年医療法人社団啓愛会理事
2026年孝仁病院美希病院
所属学会
日本医師会 産業医
日本循環器学会 循環器専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本内科学会 総合内科専門医

女性が気づきにくい甲状腺機能低下性ミオパチーの特徴と日常生活への影響

甲状腺機能低下性ミオパチーは、症状がゆっくり進行するため、日常生活の中で見過ごされがちです。このセクションでは、女性が特に気づきにくい病気の特徴と、日常生活にどのような影響が出るのかについて詳しく説明します。

更年期症状と混同されやすい理由

甲状腺機能低下性ミオパチーでよく見られる症状には、以下のようなものがあります。

・なんとなく体が重だるい、疲れやすい

・手足の筋肉や関節が重く感じられる、こわばる

・食事量は変わらないのに体重が増える、顔や足がむくむ

・便秘がちになる、寒がりになる

これらの症状は、40~50代の女性が直面する「更年期症状(更年期障害)」とそっくりです。そのため、「年齢のせいだから」「更年期を過ぎれば治るだろう」と自己判断し、医療機関の受診を先送りにしてしまうケースが後を絶ちません。

しかし、両者は原因が全く異なります。更年期障害は卵巣から分泌されるエストロゲンの減少が原因ですが、甲状腺機能低下性ミオパチーは甲状腺ホルモンの不足が根本原因です。病院での簡単な採血検査(TSHやFT4などの甲状腺ホルモン測定)を行えば、両者を明確に判別することができます。

また、甲状腺機能低下症では「皮膚の著しい乾燥」「髪の毛が抜ける」「声が低くしががれる(嗄声:させい)」「脈拍が遅くなる(徐脈)」といった独特のサインも併発することがあります。更年期だからと決めつけず、これらの症状を多角的にチェックすることが重要です。

日常生活への具体的な影響

甲状腺機能低下性ミオパチーが進行すると、筋力低下によって日常生活の基本動作に支障が出てきます。

特に、身体の中心に近い大きな筋肉(近位筋:太もも、お尻、肩、二の腕など)が影響を受けやすいため、以下のような動作がつらくなります。

・低い椅子やトイレから立ち上がる時に、手すりや膝に手を突かないと立てない

・階段を上る際に足を一歩踏み出すのが非常に重く感じられる

・つり革につかまり続ける、洗濯物を高い所に干すなど、腕を上げ続けるのが苦痛になる

さらに、成人になってから甲状腺機能低下症になり、筋肉が腫れて太くなり、激しいこわばりや痛みを伴う病態を医学的に『ホフマン症候群(Hoffmann症候群)』と呼びます。太ももやふくらはぎの筋肉が一見すると鍛えられたように太く盛り上がる(仮性筋肥大)にもかかわらず、実際には筋力が著しく落ちていて硬く痛むという特徴的な症状が現れることもあります。

このような筋肉の痛みやこわばりは、家事や仕事の効率を著しく低下させます。

まとめ

甲状腺機能低下性ミオパチーは、甲状腺ホルモンの不足によって全身の筋力低下や筋肉痛、こわばりが引き起こされる病態です。橋本病などを背景として特に女性に多く発症し、初期症状が疲労や更年期障害と似ているため見過ごされやすいという特徴があります。

しかし、血液検査によって正しく診断されれば、レボチロキシン(チラーヂンS)による甲状腺ホルモン補充療法によって、多くの患者さんが症状を大幅に改善させ、元通りの生活を取り戻すことができます。

「階段が上がりにくい」「身体が重くて力が入らない」「更年期の治療をしているのに不調が続く」といった症状に心当たりがある人は、ぜひ一度、内科や内分泌内科を受診して甲状腺の検査を受けてみてください。早期の発見と適切な治療が、あなたのしなやかで健康な毎日を守る第一歩となります。

参考文献

日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」

国立国際医療研究センター病院「甲状腺疾患について」

厚生労働省「難治性疾患政策研究事業 甲状腺疾患に関する情報」

慶應義塾大学病院「内分泌・代謝内科 甲状腺疾患」

東京大学医学部附属病院「内分泌・代謝内科」