「糖尿病」の発症リスクが高いのは「ストレス」と「睡眠不足」どっち?医師が徹底解説!

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糖尿病の発症リスクが高いのは「ストレス」と「睡眠不足」どっち?メディカルドック監修医がストレスや睡眠不足が続くと現れる症状などを解説します。

監修医師:
久永 香織(医師)

【経歴】
2015年宮崎大学医学部医学科卒業.東邦大学医療センター大森病院,東京蒲田医療センターなど勤務.糖尿病専門医,指導医,内分泌代謝専門医,内分泌代謝・糖尿病内科領域指導医,医学博士の資格を有する。

糖尿病とは?

糖尿病とは、血糖値が高い状態が続く病気です。普段血糖値は、膵臓から出る「インスリン」というホルモンによって一定の範囲に保たれています。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませる「鍵」のような役割を持っています。このインスリンが十分に作られなくなったり(分泌の低下)、量はあっても効きが悪くなったり(インスリン抵抗性)すると、血糖が下がりにくくなり糖尿病になります。糖尿病は大きく1型と2型に分けられ、1型は膵臓がインスリンをほとんど作れなくなるタイプ、2型は食べ過ぎ・運動不足・肥満などの生活習慣や体質が関わるタイプで、日本人の糖尿病の大多数は2型です。初期は自覚症状が乏しく、健康診断の血糖値やHbA1c(過去1~2か月の血糖の平均を反映する値)で見つかることも多くあります。高血糖が続くと、目(網膜症)・腎臓(腎症)・神経の障害や、心筋梗塞・脳卒中などの合併症につながるため、早めの対策が大切です。この記事では、糖尿病と深く関わる「ストレス」と「睡眠不足」について解説します。

ストレスが続く・溜まると現れる症状

ストレスは、外部からの刺激によって心身に生じる反応です。強いストレスが長く続くと、次のようなさまざまな症状が現れ、血糖にも悪影響を及ぼします。

自律神経の乱れ・血糖や血圧の上昇

強いストレスが続くと、アドレナリンやコルチゾールといった「ストレスホルモン」が分泌され、交感神経(体を緊張・活動モードにする神経)が優位になります。これらのホルモンには血糖値や血圧を上げる働きがあるため、ストレスがかかると血糖が高くなりやすく、血糖コントロールを乱す一因になります。動悸や肩こり、頭痛といった体の緊張症状として現れることもあります。とくに糖尿病の方や予備群の方では、ストレスが血糖値を悪化させる要因として無視できません。

睡眠の乱れ

ストレスは寝つきの悪さや、途中で目が覚める、眠りが浅いなど、睡眠の質を下げます。眠れないことがさらにストレスになり、その睡眠不足が血糖や心身の不調を悪化させる、という悪循環を招きます。後述するように、睡眠不足は血糖コントロールに影響するため、ストレスによる睡眠の乱れは軽視できません。

食欲の変化

ストレスがかかると、食べ過ぎてしまう人もいれば、反対に食欲が落ちる人もいます。とくに、ストレス発散のためのやけ食いや、甘い物・脂っこい物のとりすぎは、血糖値の乱れや体重増加につながり、糖尿病のリスクを高めます。「イライラすると甘い物が欲しくなる」という経験は、ストレスと食行動が結びついている一例です。

胃腸の不調

胃や腸は自律神経の影響を受けやすく、ストレスがかかると胃の痛みや不快感、胃もたれ、下痢や便秘などを起こすことがあります。こうした心理的な要因が関わる体の不調を「心身症」と呼びます。長引くと、胃・十二指腸潰瘍などにつながることもあります。

気分の落ち込み・イライラ

気分が沈む、不安になる、イライラする、集中できないなど、こころの面にもさまざまな症状が現れます。ストレスによる抑うつ状態は、生活の質を下げるだけでなく、糖尿病の発症・悪化とも関わることが知られています。強い落ち込みや不安が長く続く場合は、我慢せず専門家に相談することが大切です。

睡眠不足が続くと現れる症状

睡眠は、心身の疲れを回復し、ホルモンや代謝のバランスを整える大切な時間です。睡眠不足が続くと、次のような症状が現れ、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクが高まります。

日中の眠気・集中力の低下

睡眠が足りないと、日中に強い眠気が出たり、集中力や判断力が落ちたりします。仕事や勉強、運転などのパフォーマンス低下につながるだけでなく、事故のリスクも高まります。休日に「寝だめ」をしても、平日の睡眠不足による心身への影響は十分に取り戻せないことがわかっています。

食欲の増加・体重増加

睡眠不足になると、食欲を抑えるホルモン「レプチン」が減り、食欲を高めるホルモン「グレリン」が増えます。その結果、とくに高カロリーの物を食べ過ぎてしまい、体重が増えやすくなります。わずか数日の睡眠不足でも、こうしたホルモンの変化が起こることが報告されています。肥満はさらに糖尿病のリスクを高めるため、注意が必要です。

血糖コントロールの悪化(インスリン抵抗性)

睡眠不足は、インスリンの効きを悪くします。この「インスリン抵抗性」の状態になると、同じ食事をとっても血糖が高くなりやすくなります。慢性的な睡眠不足が続くと、糖尿病の発症リスクが高まり、すでに糖尿病がある方では血糖コントロールが難しくなります。とくに不眠のある人は、糖尿病のリスクが1.5~2倍になるとも報告されています。

血圧の上昇

睡眠不足は交感神経を高ぶらせ、血圧を上げる方向に働きます。本来、睡眠中は血圧が下がって血管が休まりますが、睡眠が足りないとその休息が十分にとれません。高血圧は動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中のリスクにつながります。

気分の不安定・意欲の低下

睡眠不足が続くと、イライラや気分の落ち込み、やる気の低下が起こりやすくなります。こうした精神面の不調は、ストレスをさらに増やし、生活習慣全体を乱す原因にもなります。心とからだの健康を保つうえでも、十分な睡眠時間を確保することが大切です。

糖尿病の発症リスクが高いのは「ストレス」と「睡眠不足」どっち?

「どちらか一方が明確に上」と断定できるデータはなく、ストレスも睡眠不足も、どちらも2型糖尿病の重要な危険因子です。
睡眠については、10件の追跡研究をまとめた解析で、睡眠時間が短い人(1日5~6時間以下)は糖尿病の発症リスクが約1.3倍、寝つきが悪い人は約1.6倍、途中で目が覚める人は約1.8倍に高まると報告されています。睡眠は「短すぎても長すぎてもリスクが上がる」U字型の関係が知られています。
一方ストレス面では、うつ病がある人は2型糖尿病の発症リスクが約1.6倍、仕事の強いストレスがある人は約1.15倍というデータがあります。両者は互いに関連し合い(ストレスが睡眠を乱し、睡眠不足がストレス耐性を下げる)、重なるとリスクはさらに高まると考えられます。どちらが上かを競わせるより、両方を整えることが大切です。

ストレスが続く・溜まると発症しやすい病気

うつ病・不安障害

慢性的なストレスは、気分の落ち込みや強い不安を引き起こし、うつ病や不安障害の発症につながることがあります。実際、うつ病のある人は2型糖尿病の発症リスクが高いことが報告されており、糖尿病とうつは互いにリスクを高め合う関係にあります。心の不調を感じたら、早めに相談することが大切です。

高血圧・心疾患(心筋梗塞など)

ストレスによる交感神経の高ぶりや血管への負担は、高血圧や動脈硬化を進めます。ストレスホルモンは血圧を上げ、血管の内側を傷つけたり血液を固まりやすくしたりするため、抑うつやストレスは心筋梗塞の危険因子としても知られています。糖尿病と重なると、これらのリスクはさらに高まります。

胃・十二指腸潰瘍などの心身症

ストレスは胃酸の分泌や胃腸の働きに影響し、胃・十二指腸潰瘍などの「心身症(心理的な要因が関わる体の病気)」を起こすことがあります。胃の痛みや不快感が続く場合は、背景にストレスが隠れていることもあるため、生活の見直しとあわせて医療機関に相談しましょう。

睡眠不足が続くと発症しやすい病気

2型糖尿病

睡眠不足や不眠は、インスリンの効きを悪くし、食欲を高めて肥満を招くことで、2型糖尿病の発症リスクを高めます。追跡研究をまとめた解析でも、睡眠が短い人・寝つきが悪い人・途中で目が覚める人は、いずれも糖尿病になりやすいことが示されています。

高血圧・心血管疾患

慢性的な睡眠不足は血圧を上げ、動脈硬化を進めるため、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などにかかりやすくなります。とくに、睡眠中に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」があると、体に負担がかかり、この傾向はさらに強まります。大きないびきや日中の強い眠気がある方は注意が必要です。

肥満・うつ

睡眠不足は食欲を高めて過食・肥満を招き、気分の不安定さからうつにもつながりやすくなります。肥満はインスリンの効きを悪くして、さらに糖尿病のリスクを高めるという悪循環を生みます。睡眠を整えることは、体重管理とこころの健康の両面から糖尿病予防に役立ちます。

「糖尿病のストレスと睡眠不足」についてよくある質問

ここまで糖尿病のストレスと睡眠不足について紹介しました。ここでは「糖尿病のストレスと睡眠不足」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

糖尿病の方が睡眠不足になるとどうなりますか?

久永 香織(医師)

糖尿病のある方が睡眠不足になると、インスリンの効きがさらに悪くなり、血糖コントロールが乱れやすくなります。加えて、食欲を高めるホルモンの影響で食べ過ぎや体重増加が起こり、血糖管理がいっそう難しくなります。慢性的な睡眠不足は血圧や動脈硬化にも悪影響を与え、心筋梗塞や脳卒中といった合併症のリスクを高めます。とくに大きないびきや日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。糖尿病の方にとって、十分な睡眠は血糖・血圧の管理と合併症予防の両面でとても重要です。気になる場合は主治医に相談しましょう。

まとめストレスと睡眠不足の両方を整えて糖尿病を予防しましょう

糖尿病は、インスリンの働きが不十分になり血糖が高い状態が続く病気で、その多くを占める2型は生活習慣と深く関わります。ストレスと睡眠不足は、どちらも血糖値を乱し、2型糖尿病の発症リスクを高める重要な要因です。ストレスはストレスホルモンを介して血糖・血圧を上げ、睡眠不足はインスリンの効きを悪くし、食欲を高めて肥満を招きます。しかも両者は、ストレスが睡眠を乱し、睡眠不足がストレスへの耐性を下げるというように、互いに関連し合っています。「どちらのリスクが上か」を競わせるよりも、両方を同時に整えることが、糖尿病の予防にも、すでに糖尿病がある方の血糖管理にも役立ちます。ストレスをためこまない工夫と、十分な睡眠時間の確保を日ごろから心がけ、気になる症状が続くときは早めに医療機関に相談しましょう。

「糖尿病」と関連する病気

「糖尿病」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

内科の病気

2型糖尿病高血圧脂質異常症メタボリックシンドローム睡眠時無呼吸症候群

胃・十二指腸潰瘍

心筋梗塞・脳卒中


精神科の病気

うつ病

不安障害

ストレスや睡眠不足は血糖変動が起こりやすくなり、糖尿病発症の一因となる可能性があります。

「糖尿病」と関連する症状

「糖尿病」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

のどの渇き

多尿

倦怠感

疲れやすさ

体重の変化

日中の眠気

不眠

食欲の変化

一時的な症状ではなく継続する症状がある場合には、早めに医療機関を受診し検査を受けることをおすすめします。

参考文献

Spiegel K, Tasali E, Penev P, Van Cauter E. Brief communication: Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004;141(11):846-850.

Cappuccio FP, D’Elia L, Strazzullo P, Miller MA. Quantity and quality of sleep and incidence of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. Diabetes Care. 2010;33(2):414-420.

Mezuk B, Eaton WW, Albrecht S, Golden SH. Depression and type 2 diabetes over the lifespan: a meta-analysis. Diabetes Care. 2008;31(12):2383-2390.

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