「端数の800円は負けてあげるね!」…酒豪だらけの女子会で“割り勘負け”する下戸のモヤモヤ「私はただの割り勘要員?」【FPが助言】
自分はソフトドリンクを2~3杯しか飲んでいないのに、テーブルでは高額なワインが何本も空いていく--その会計は、当然のように人数割り。楽しいはずの飲み会のたびに、ひそかに積もる“割り勘負け”への不満。だがそこで「空気を壊したくない」と口をつぐんでしまう人は少なくない。割り勘負けから「自らのお金」と「心の平穏」を守るにはどうすればよいのか。自らも数多くの飲み会に参加しているFPの山口京子さんに聞いた。
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【Case】1本1万円のワインが空く飲み会で、「端数はいいよ」と言われ…
都内の大手IT企業で働く千夏さん(42歳・女性)は、職場の同僚女子会のことを考えるとモヤモヤしてしまう。

「集まるのは、私を含めて同期の女性社員4人。自分以外の3人は職場でも有名な酒豪で、明るく場を盛り上げてくれる陽キャです。一方、私はお酒がほとんど飲めない体質で……」
「お疲れ様!」の乾杯については、さほど文句はない。酒豪の3人が頼むスパークリングワインも、千夏さんが頼むモクテル(ノンアルコールカクテル)も1000円前後だ。ただ、千夏さんがモクテルをちびちびと飲む傍らで、酒豪組はグラスのスパークリングワインを一瞬で飲み干し、即座にボトルワインの注文へと突入する。
「最初はおいしいお酒から飲もうよ」とメニューから選ばれるのは、1本1万円前後の高級白ワイン。肉料理を頼んだら赤ワイン、さらには「もうちょっと重いの、いっちゃいますか!」と、あっという間に3本のボトルが空いていく。途中、「千夏ちゃんも一口飲んでみなよ、これすごく飲みやすいから」とグラスを差し出されるが、飲めないものは飲めない。
「お会計は4万円を超えることが多いですね。で、ほぼ割り勘です。小銭程度の端数については『千夏ちゃんはお酒飲んでないから、端数の800円は私たちでもつよ』などと割り引いてくれますが……」
料理は全員でつまんだものの、総額の大半を占めているのは間違いなく3本のワイン代。酒を飲んでいないからこそ、素面で「自分が飲み食いしたのは実質これくらいだな」と計算できてしまう。でも、ごきげんに酔ったメンバーにそれを言うのは気が引ける。
「陽気なみんなとのひと時は楽しい。お酒好きの人はだいたい食にも詳しいから、予約する店はどこもおいしい。みんな多趣味で、話の内容もおもしろい。でも、時々、私は“楽しい仲間”として呼ばれたのではなく、頭数を増やして1人あたりの飲み代を安くするための“割り勘要員”なんじゃないか……、そんなふうに勘ぐってしまうことはあります」
【FPが助言】飲み放題でも防げない!?高級ワインを別注する酒豪の無邪気さ
「千夏さんのような体験をしてモヤモヤする下戸の方は、たくさんいらっしゃいます」と、FPの山口京子さんはうなずく。
「この問題の厄介なところは、酒豪の側に気遣いがないところ。『不公平を強いている』という悪気が一切ない点にあります。彼女らにとって、食事の場でおいしいお酒を何本も開けるのは呼吸をするように自然なこと。しかも“その場の楽しい空気を共有するのだから、みんなで割り勘が当たり前”になっているんですよね」
そうした人に「飲んでいないからそのぶん安くしてほしい」などと正論を言おうものなら、周囲から「ケチくさい」「細かいことを気にして、楽しい雰囲気に水を差した」と逆に白い目で見られがちだ。
さらに恐ろしいのは、割り勘負けを防ごうと「飲み放題付きコース」を選んだとしても、この手の酒豪の「おいしいお酒」への欲求は防ぎきれないことだと山口さんは指摘する。
「コースの飲み放題に含まれているハウスワインでは満足できず、『このお肉にはマルベック(重口の赤ワイン)が合うよね』などと言い出して、飲み放題メニューの外にある高い別注ボトルを勝手に頼んでしまうことも(笑)。もちろんそのワインも、当然みんなで割り勘です。酔っ払って声が大きい人のパワーの前では、シラフの下戸は圧倒的に不利ですね」
【山口さんの処方箋(1)】「5000円の入場料」に見合う対価があるか見極めよ
では、下戸は泣き寝入りを続けるしかないのか。山口さんは「まず、その飲み会に自分が支払っている『差額分の価値』があるかどうかを冷静に見極めては?」と提案する。例えば、自分が本来飲み食いした金額と、請求された割り勘額との差額が5000円だったとする。その5000円を「搾取」や「損失」とするか、「価値ある対価」とするか、考えるのだ。
もしその会が、重要な情報を得たり、自分のキャリアを引き上げてくれる人脈に通じたり、好奇心を刺激される話題が飛び交ったり、会員制の予約困難店に行ったりできる機会であるならば、その5000円は「情報料」や「イベントの入場料」として割り切る価値がある。多少の割り勘負けは人生の必要経費として目をつぶるのも大人の戦略だ。
「でも、集まって話している内容が、単なる悪口や愚痴、くだらない噂話ばかりなら、余分なお金を払う価値はまったくありません。自分に何も残らない不毛な時間に5000円もの大金を差し出すなんて、もったいない。そんな惰性の集まりからは足を洗うのが金銭的にも精神的にも正解でしょう」
【山口さんの処方箋(2)】相手は変えられないが「友達と店」は自分で選べる
「お酒を多く飲んだ人が多めに払うべき」と考える人もいれば、「楽しい時間を共有したのだから、細かい計算などせず皆で同じ金額を払おう」と考える人もいる。
「それは価値観の違いによるものであって、その相手の価値観や性格を変えることはほぼ不可能だと考えておきましょう」と山口さんは強調する。
「ただ、お金に関する違和感は放置しないことです。違和感が積み重なると、もともと好ましく思っていた相手が嫌いになってしまうことも。それは残念ですよね。価値観が違うけど関係は保ちたい、そういう人とは適度な距離感を保つことが大切です。不公平な飲み会は、『あいにくその日は家の用事があって』とだけ伝えて断り、回数を減らしてはどうでしょう。『家の用事』という魔法の言葉を使えば、それ以上深く詮索してくる人はいないはず」
そして、そのメンバーとの交流を続けたいのであれば、相手に店選びを丸投げせず、自分が幹事になって「割り勘負けが起きにくい店」を先手を打って提案するのも賢い方法だ。例えば、注文ごとに各自で支払うバルや、1杯数百円で楽しめる立ち飲みワインビストロ、食事がメインで深酒しにくい名店など。「この前インスタで見つけたすごくおいしそうなお店があるから行かない?」と明るく誘導してしまえば、割り勘負けは生じにくくなる。
「相手に変わってもらう」より、「自分が無理なく参加できる条件を選ぶ」ことが、割り勘負けのストレスを減らす近道というわけだ。そうやって無自覚な酒豪と距離を少しずつあけていけば、新たに別の縁も生まれていくことだろう。
「下戸であることに引け目を感じる必要などありません。これからは、飲めないメンバーを気遣って自然に傾斜配分してくれる心優しい仲間や、お酒抜きでも心から会話を楽しめる相手と過ごす時間に、あなたの大切な時間とお金を使っては? どんな人と付き合い、何にお金を使うかは、あなた自身が決められるんですよ」
※プライバシー保護のため、記事中の事例は、具体的な状況の一部を変更しています。
今回のアドバイザー/山口京子(やまぐち・きょうこ)さん
1966年名古屋生まれ。金城学院大学卒業。大学在学中から、テレビ・ラジオに出演。2000年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。のべ2,500組以上の家計相談を受け、お金と人生の悩みを解決に向けてサポートしてきた。また、家計管理、貯蓄・資産運用のプロとして、金融庁、証券業協会、東京証券取引所の講演会にも出演。2024年には、「KOKUSAIには愛があるプロジェクト in あいち」のメインキャラクターに。『お金も人生も薔薇色!老後計画』(主婦と生活社)など著書多数。
取材・文/鷺島鈴香
デイリー新潮編集部
