今年のWBCでは侍ジャパンの精神的支柱に

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監督が示唆したダルの引退

 サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有(40)が“揺れている”。昨年10月に受けた右肘手術のリハビリを経て、ブルペンでの投球練習を再開させたのは既報の通りだが、同時に「引退の可能性」も囁かれている。彼自身も日本の一部メディアに対し、「自分がどうしたいのか分からない」とその胸中を語っていた。しかし、本当に揺れているのは新オーナーを迎える球団のほうかもしれない。

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「パドレスの新オーナーは、クリアレイク・キャピタルの共同創業者であるホセ・E・フェリシアーノ氏(53)と、その妻で歌手、実業家、慈善活動家の肩書を持つクワンザ・ジョーンズ夫人(53)の投資家グループです。夫妻はこの時点でメジャー史上最高額となる39億ドル(約6240億円)で球団を買収しており、サンディエゴ市民は新体制に好意的です。前オーナーのピーター・サイドラー氏が亡くなった後、残された一族が主導権争いで裁判に発展したのも影響していると思われます。それと、フェリシアーノ氏はプエルトリコの出身。サンディエゴの町はヒスパニック系の住民が全体の約3割を占めており、スペイン語がごく普通に飛び交っています。フェリシアーノ氏に親近感を持つ市民もたくさんいます」(米国人ライター)

 MLBオーナー会議による承認も得ており、すでに新体制は始まっているが、フェシリアーノ氏らへの球団売却の交渉時期とダルビッシュのリハビリ期間は重なっている。球団はダルビッシュを良い意味でも大人扱いしてきた。そのため、リハビリ期間中は球団トレーナーが様子を見に行くことがあっても“単独行動”となる日も多く、「一人で考える時間」も長くなってしまった。

今年のWBCでは侍ジャパンの精神的支柱に

 気になる「引退の可能性」だが、元を辿ってみると、発信源はクレイグ・スタメン監督(42)だった。ダルビッシュは自身が8月26日にブルペン投球を再開させたことを告げる動画を配信。動画を見る限りでは順調そうだったが、その映像を受けて翌日、スタメン監督は出演したラジオ番組や、地元メディアの「Al Bat Baseball」でこう発言した。

「彼はまだ、本当に復帰したいのか、引退したいのか、あるいは球団での次の役割は何になるのか、分かっていない。我々は彼に時間を与え、自由にやらせている」

 スタメン監督のコメントということで、米国の野球ファンは「引退の可能性」には信憑性を感じたという。

「スタメン監督はパドレスで現役を終えた元投手です。そのままフロント入りし、昨年オフ、マイク・シルト前監督(58)が突然の退団を決めた際は『新監督を選ぶ側』にいました。でも、最終候補の人選に入る際、編成トップのA.J.プレラーGM(49)が待ったを掛け、スタメン監督を提案しました。監督は現役時代に大学に復学し、不足分の単位を取得した努力家です。彼自身も足の怪我のリハビリ中に引退を決意した経緯があり、米国の野球ファンはそのことを思い出したようです。リハビリ中に引退を決意した監督の言葉だからダルビッシュの気持ちも分かったのだと、ファンは捉えました」(前出・同)

「Al Bat Baseball」の「Shockwaves of The Padres」(パドレスに激震)と銘打った記事はサンディエゴ市だけではなく、カリフォルニア州全体に広まった。新オーナーの会見が8月24日(現地時間)だったので、その3日後のことである。

「ダルビッシュはその後も球団施設に顔を出し、軽めの練習をしていますが、毎日ではありません。気になるのは、球団と新オーナーグループです。コメントは出していませんし、彼を慰留しようという動きも見えません」(現地記者)

新オーナーの心意気

 筆頭オーナーとなるフェリシアーノ氏だが、会見から「強い個性」を見せていた。まず、会見場にホテルなどではなく、パドレスの本拠地「ペトコ・パーク」のインタビュールームを選んでいる。サンディエゴのファンはこれにも好感を抱いた。会見のスタートは音楽で始まった。

<You know we’re all in、you know we’re all in、you know we’re all in>

<We’re gonna win、we’re gonna win、we’re gonna win>

<私たちが本気で取り組んでいるって分かっているよね。私たちは勝つ、勝つ、勝つ>

 およそ4分間、音楽が流された後、オーナー夫妻がラフな服装で登場した。司会者がジョーンズ夫人の作詞であることを紹介し、彼女は「バックコーラスに誘われて、ちょっとだけ参加した」と言って笑いを誘った。さらに、フェリシアーノ氏もレコーディング中にコーラス参加の誘いを受けた経緯が明かされた。すると、フェリシアーノ氏は同名の歌手であるホセ・フェリシアーノのことを引き合いにし、「私が持っている音楽の才能は名前だけだ」とジョークを飛ばした。会見は終始、和やかなムードで行われていたようだ。同会見場にいた現地記者がこう続ける。

「フェリシアーノ氏も写真撮影の際、21の背番号が入ったユニフォームを羽織りました。理由を聞いたら、『ロベルト・クレメンテに敬意を表して』と答えていました。クレメンテはヒスパニック系選手の先駆者的存在で、攻守にわたって偉大な成績を残しています。しかし、パドレスに在籍したことはありません。同じナ・リーグでも、中地区のピッツバーグ・パイレーツ一筋でした。でも、往年のヒスパニック系選手の名前を出したので、サンディエゴの市民を喜ばせたというか、彼らの気持ちをしっかりと掴んだと思いました」

 約40分間の会見では「勝つ」「このチームは諦めない。過小評価されているんじゃないか」などの意気込みが語られた。ただ、具体的な補強案や強化策はゼネラルマネージャーの職域だからか、語られなかった。

 オーナーは選手とフロントが働きやすい環境を作るのが仕事だ。そのためには巨額の投資が必要だが、ジョーンズ夫人はかつて母校のプリンストン大学に同大学史上最高額となる寄付も行っている。その金額は公表されなかったが、その後、「クワンザ・ジョーンズ学生寮」が建設された。名前を冠した学校施設が増設されたくらいだから、「新オーナー夫妻はカネを惜しまない」とサンディエゴの市民は捉えているそうだ。

新しいチームはどのように……

「フェリシアーノ夫妻はサッカーのプレミアリーグ・チェルシーの共同オーナーでもあります。夫妻がクラブ経営に参加した22年、5億ユーロ(約600億円)の補強費を注ぎ込んでいます。フェリシアーノ夫妻のメジャーリーグ球団経営の参入は、オフの労使協定にも大きな影響を与えるでしょう。年俸総額に上限を定めるサラリーキャップ制度の導入に反対してくると予想されています」(前出・米国人ライター)

 パドレスは投手力が充実したチームであり、マニー・マチャド(34)やザンダー・ボガーツ(33)など、30代半ばが多くなった内野陣の若返りと、打線の強化が課題だ。

「外部からの大量なチーム補強と、契約途中のレギュラー選手たちのトレード放出もあり得ない話ではありません」(前出・現地記者)

 ダルビッシュは23年2月に6年1億800万ドル(約151億円/レートは当時)の大型契約を結んでおり、28年の42歳のシーズンまで野球を続けることができる。「30代後半の投手に長期契約を提示した前オーナー体制への批判もないわけではない」との声も聞かれたが、サンディエゴの町を調べ尽くした新オーナー夫妻は、彼がチームの精神的支柱でもあることを把握しているのだろうか。

デイリー新潮編集部