YouTubeチャンネル「TOMO’S TRAVEL / トモズトラベル」が、「【名古屋の黒歴史】350億円を投じ「97%完成」したのに一度も走らなかった鉄道」を公開した。名古屋市内に点在する巨大な未完成の高架構造物を巡り、莫大な予算が投じられながら一度も列車が走ることなく放置された「南方貨物線」の歴史的背景を解説している。

名古屋市の住宅街に断続的に残るコンクリートの構造物は、旧国鉄が計画した貨物専用線「南方貨物線」の跡である。1960年代の高度経済成長期、東海道本線は旅客と貨物が混在し、輸送能力の限界を迎えていた。さらに、当時の貨物輸送の中心だった笹島駅は東京方面から直接入れず、稲沢操車場まで往復20km以上も迂回する非効率な状態だった。このボトルネックを解消するため、名古屋駅周辺を避けて貨物列車を別ルートで通す一大プロジェクトが立ち上がった。

用地買収は100%完了し、主体工事も97%まで進捗していたにもかかわらず、計画は頓挫した。その背景には、新幹線の騒音問題を発端とする沿線住民の激しい反対運動があった。さらに、高速道路網の整備に伴い、物流の主役が鉄道からトラックへと急激に移行し、国鉄の貨物輸送そのものが減少。国鉄の経営悪化も重なり、1983年に工事は完全に凍結された。動画内では「造ると決めてから完成するまでに、社会の方が先に変わってしまうことがある」と、巨大インフラ整備の難しさが語られている。

総額約350億円を投じながら、一度も使われなかった南方貨物線。現在は一部が、高架下という特殊な空間を活かして工場として転用されており、「天井が高いから使いやすい」という現場の生の声も紹介された。しかし、全線の撤去には莫大な費用がかかるため、大部分は手つかずのまま街の中に姿を残している。時代に翻弄された未成線の存在は、社会の変化を見据えたインフラ計画の難しさを色濃く象徴している。

チャンネル情報

地上波で取り上げられない場所、テーマに触れ、歴史的背景などを交えて解説しています。 動画に関するお問い合せやメッセージなどございましたら、インスタグラムのDMか下記メールアドレスまでお願いいたします。 tomos.trip1102@gmail.com