敷布団の場合、1枚に約30万匹、多い布団だと100万匹ものダニが検出されるという。寝具にはダニのエサとなる皮脂やフケ、毛髪などがふんだんにあるからだ。ダニのアレルゲンを大量に吸い込むとアレルギーを発症する恐れがある。ベストな対策は? 専門家に取材した。

■一匹のダニが3カ月後に100万匹に

ダニは、温度と湿度が高くなると爆発的に増える。室内に棲むダニにとって快適な環境は室温25度、湿度60~80%。フケやアカなど人や動物の皮膚などをエサにして増殖する。条件さえ整えば、1匹のチリダニのメスが3カ月後には100万匹のダニ数に達する計算という。

「家の中でダニが多いのは、1位が布団やベッドなどの寝具類、2位が畳やカーペットなどのマット類、3位が押入れやクローゼットです」

と、元埼玉県衛生研究所の研究員で獣医師の高岡正敏氏(ペストマネジメントラボ代表)が指摘する。高岡氏はダニを研究して50年、数多くの家庭でダニが繁殖している場所や、その数を調査してきた。

「どの家庭でも寝具類にダニが多い。寝具といっても色々ありますが、掛け布団やタオルケットより敷布団のほうがダニが繁殖しやすいです。1枚の布団からおよそ30万匹、多いと100万匹を超えるダニが検出されることもあります。敷布団は他の寝具より体により密着しているためエサ(人の皮脂やフケなど)が溜まりやすく、湿度や温度も高く維持されるからでしょう」

寝具の中では、ダニの死骸やフンなども年々蓄積していく。それらを含めてアレルギーの原因物質(アレルゲン)になるという。

「そういった布団で睡眠をとると、就寝中、寝返りを打つときなどにアレルゲンが舞い上がり、吸い込んでしまいます。そして人によっては喘息などの発作や皮膚炎、鼻炎、結膜炎などといったアレルギーの発症につながってしまうのです」

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元埼玉県衛生研究所の研究員で獣医師の高岡正敏氏(ペストマネジメントラボ代表) - 本人提供

■使用3年以上の布団は要注意

寝具をきれいにするため、シーツを洗ったり、布団を干したりしているかもしれない。もちろん、やらないよりはやったほうが圧倒的にいい。しかし、いくら外側のシーツを綺麗にしても、長く使用していると布団の中にはダニが相当数潜んでいるのだ。

高岡氏によると「使用3年以上の布団は要注意」という。

「布団を使用して一年経てばアレルギーを起こすのに十分な量までダニなどのアレルゲン物質が増え、使用5年後にピークに達します。その後はダニの繁殖に適した環境ではなくなるためか、ダニのアレルゲン量は横ばいに。けれども汚染されていることには違いありません」

また布団を干す行為も、ダニを死滅させることはできないという。

「布団には厚みがあるため、ダニは(天日干しによって)熱くなれば中や裏側に逃げ込んでしまいます。それにダニは50度以上でも生きられますから、日光によってダニを殺すことは難しい。ですがダニを増やさないという効果があるのです。なぜなら一般的にダニは湿度50%以下になると極端に増殖を抑えられるので、布団を乾燥することを継続すれば、ダニが増えにくい環境を維持できます」

写真=iStock.com/buru
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/buru

■60度以上の熱処理でダニは死滅

だが今現在、アレルギーの症状が出ていたり、またこれまでなんの対策もせずに寝具類を使っていたりするのであれば、涼しくなってきた今こそ、まずは安い布団でいいので「新しい布団に買い換えること」がお勧めだ。経済的負担が大きければ、コインランドリーで布団を洗濯乾燥するのもいい。

「洗えば布団の中のアレルゲン物質は流れていきますし、60度以上の熱処理でダニは死滅します。最近は宅配で布団を回収して洗ってくれる業者もありますから、利用するのもいいと思います」

寝具をきれいにしたら、ダニを増やさないための対策を取りたい。高岡氏は「高密度繊維カバーを使用すること」を提案する。するとダニやほこりが布団内部に侵入しにくくなり、ダニの増殖を長期的に防げるという。

そしてもう一つ、寝室を含む「室内の通気換気」を心がけることも大切だ。

近年、住宅の断熱性・気密性が高まり、室温を一定に維持できるようになった。それにより脳血管疾患などの病を防ぎ、脳年齢を若く保てる。私も『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』という本をかつて出版した。しかし一方で、その気密性がダニの繁殖につながり、喘息や皮膚炎に苦しむ可能性が出てきてしまった。

かといってダニを死滅させようと強力な殺虫剤を使えば、室内の空気が汚れ、人体にも有害だ。これは複数の専門家が指摘している。だからダニを殺すのではなく異常繁殖させないために、一日のうちに何度かは窓を開けて換気を行おう。加えてこまめに掃除をしてダニのエサであるほこりを取り除く、といったことを習慣にしたい。

■掃除機内からはい出てくるダニ

また閉め切ったままの「押入れ」や「クローゼット」はないだろうか。そこも湿度が低い日には戸を開けて乾燥させよう。ダニは何より“乾燥”に弱いのだ。

高岡氏は「押入れに調湿機能をもつ『炭』を置くこと」や、「密閉した衣類ケースに防虫剤と一緒に乾燥剤を入れること」をアドバイスする。そのほかカーテンやカーペット、ぬいぐるみなどにもダニが繁殖しやすいため、洗えるものは洗いたい。

私がギクリとしたのは「掃除機内のゴミ袋」。高岡氏が以前行った調査では「掃除機内のゴミを捨てる期間は、1~3カ月くらいという家庭が多いことがわかった」という(我が家もまさにそうだった)。

「それでは掃除機内からはい出てくるダニもいるでしょう。少なくとも数週間以内には掃除機内のゴミを捨てるように心がけてください」

■秋はアレルギーを起こす人が一番多い

梅雨から夏にかけてダニは増殖し、気温が下がり乾燥する秋から冬になると減っていく。しかし秋はダニによってアレルギーを起こす人が一番多い時期とされる。

「夏に増えたダニは、秋からどんどん死んでいきます。すると体がバラバラに壊れて小さな破片になる。その死骸がアレルゲンになるのです。私が家庭のダニの数とアレルゲンの量を測定したところ、ダニの数のピークは8月ですが、アレルゲンの量は10月が最大でした」

寒くなると押入れにしまっていた厚い布団を出すが、布団の中にも夏の間に増えたダニの死骸や糞が蓄積されている可能性が高いという。その布団に寝ればダニのアレルゲンを大量に吸い込んでアレルギーの症状が出てしまうというわけだ。

まとめると、重要なことは大きく3つ。

1・古い布団は処分し、できる限り新しい寝具を購入する。それが難しければコインランドリーや宅配クリーニングを利用して布団を丸洗いする。

2・できる限り高密度繊維でできた布団カバーを使用し、定期的に寝具類を洗う。

3・室内の通気換気を行い、押入れやクローゼットなども湿度を下げる工夫をする。

“ダニだらけの家”にしないため、室内の環境を整えたい。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ノンフィクション作家、ジャーナリスト
1978年生まれ。本名・梨本恵里子「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)、『老けない最強食』(文春新書)など。新著に『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)がある。
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(ノンフィクション作家、ジャーナリスト 笹井 恵里子)