【解説】日米首脳会談から米中首脳会談へ…その注目点と評価など専門家の見方は?
日本時間の24日朝7時ごろ、中国の習近平国家主席がアメリカのワシントン近郊にあるアンドルーズ空軍基地に降り立ちました。トランプ大統領とメラニア夫人が空軍基地で出迎え談笑を交わす様子も。
大統領自ら出迎えるのは極めて異例のことです。その後、両国の国歌が流れ、上空を爆撃機が飛行しました。
(アメリカ トランプ大統領)
「お迎えできて良かった。感謝されたと思う。素晴らしい人たちだ」
日本時間の24日夜にもホワイトハウスで歓迎式典が行われた後、世界が注目する米中首脳会談が行われます。
会談では貿易戦争の休戦延長のほか、AIの管理方法、台湾問題などが焦点となる見通しです。
この会談を前に動いたのが高市首相です。国連総会での演説のためアメリカを訪れていましたが、23日、日米首脳会談に臨みました。
(アメリカ トランプ大統領)
「彼女は素晴らしい首相になるだろう。歴史に名を残す偉大な首相の一人となるはずだ」
(高市首相)
「今アジアも含めて、非常に安全保障環境が厳しい中で、きょう私たちがドナルドと私が国連本部でこうやって首脳会談をするということは、世界に向けて日米同盟の強さを示すことになると考えています」
米中首脳会談の直前に行われた日米首脳会談。経済安全保障を含めた中国を巡る諸課題について意見交換を行い、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致したということです。
(高市首相)
「日米同盟の強さを示すことができたと思っております…米中関係が日本を含む国際社会の安定に資するものとなることが重要だと考えておりますので、ここは日米で緊密に連携をしてまいります」
元朝日新聞・編集委員でアメリカ・中国での駐在経験があり、10年以上、アメリカ政治やトランプ氏について取材。現在、民間研究機関で外交政策などを専門とする峯村健司氏に話を聞きました。
(キヤノングローバル戦略研究所 峯村 健司 氏)
「今回、トランプ氏が直出迎えに行くというのは、私が知る限りはこれないです。過去でいうと…最高級のもてなしだといっていい…私、先日までずっとワシントン、ニューヨークに行ってですね、トランプ政権の関係者たちと話を聞きました。今回最も両国が重視のが、まさにその厚遇、接遇、接待の度合い…大統領が迎えに行くとか、赤いカーペットをしっかり出すとか、あとはディナーをどうするのかというような、その形式をものすごく重視してるってのが今回のポイントになります…なぜその形式にこだわるのかというと、トランプ、習近平両氏とも、実は国内問題を抱えているという点にあります。トランプ氏に関していうと、トランプ神話が今崩れています」
峯村氏が指摘するのは支持率の低下です。11月に中間選挙を控える中ロイターが公表した最新の世論調査では支持率は32%に低下し、過去最低となりました。
(キヤノングローバル戦略研究所 峯村 健司 氏)
「米中でしっかりやっているというところを見せて支持率回復を狙っている。しかも、もうすぐ中間選挙がありますので、この中でなんとか得点稼ぎをしたいという思惑があった。一方の習近平氏もですね、来年、共産党大会を迎える、そこで今度3期目から4期目になると見ています…やはりこのアメリカとしっかりと大国同士、手を握っていると演出するというところで、習近平氏にとっても形式が重要になる」
一方、今回の米中首脳会談で「経済・貿易」「AI 」などが議題にあがると見られるていますが、峯村氏が注目するのは「台湾問題」です。
(キヤノングローバル戦略研究所 峯村 健司 氏)
「今回も5月の時と同じように台湾については重大な警告というものをやってくる。むしろ習近平氏の狙いはそれだけだと言ってもいいぐらいだと思いますね」
前回、米中首脳会談が行われたのは5月。その時も注目されたのが『台湾問題』です。中国は『台湾問題』を米中関係における最も重要な問題だとしていて台湾の独立について『反対』の立場です。
一方、歴代のアメリカの大統領で中国が求めている『独立反対』を明言した人は誰もいなくて、今回の会談で習主席はアメリカから『独立反対』を引き出したい思惑があるとみられています。
前回の首脳会談では、中国外務省によれば、習主席は台湾問題に触れ、「うまく処理できれば両国関係は安定し、うまくいかなければ衝突する危険な状況になるだろう」などと強調したということです。
一方、ホワイトハウスの発表では、首脳会談において台湾に関する言及はありませんでした。
(キヤノングローバル戦略研究所 峯村 健司 氏)
「今回も、どうも中国側の狙いを見ていると台湾問題については相当釘を刺してくるという…1番で言うと、武器売却はもうずっとこのまま、今、延期してる状況ですけど、これはやめてほしいと1つ。もう1個言うと、台湾独立に明確に反対しろというようなこと。今までのアメリカ政府のスタンスでいうと独立を支持しないというところだったんですが、これ反対というとですね、相当踏み込んでいる…最大の譲歩でいうと、やはり、何か有事、台湾に中国が手を出したときに、アメリカはもう手を出してくるなと、介入してくるなというような、何らかの譲歩を迫る可能性が私は捨てきれないと見ています」
峯村氏によると、高市首相はトランプ大統領との会談で「台湾問題」についてかなり深い議論をした上、安易な妥協をしないよう訴えたということで一定の歯止めになると評価していますが、それでも米中首脳会談の行方は読めないといいます。
(キヤノングローバル戦略研究所 峯村 健司 氏)
「今回もワシントンで複数の関係者、研究者も含めて聞きましたが、誰もわからない。これはもう“トランプさんのみぞ知る”というようなことを皆さん口をそろえていました。つまり、かなり危うい状況、トランプさん任せというところで結構ここはかなり危ない橋、台湾問題、東アジアのこの安全を考えると危ない橋でもあるというところですね」
(スタジオ解説)
(徳増 ないる アナウンサー)
トランプ大統領による異例の出迎えから始まった習主席のアメリカ訪問。2026年2回目の米中首脳会談が日本時間の24日夜にも行われます。主な議題としてはこちらです。貿易やAI、そして台湾問題、イラン問題とありますが、青山さんはどこに注目していますでしょうか?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)中国としては、とにかく台湾問題でトランプさんから妥協を引き出したい。「台湾独立反対」の言質、そして武器売却をやめてもらいたい。一方、トランプさんは中間選挙を前にして支持率が32%という低さ…ちょっとアメリカ大統領としては信じられないくらいまで下がっているんです。そんな中で貿易で最大のディールを、農作物や航空機などの輸出で勝ち取ったと宣伝したい。この両者の思惑が一致する形で、台湾問題と貿易問題が取引されちゃうと日本にとっても非常に大きな問題になります。あともう一つの焦点はAIの問題です。今、AIの開発スピードを遅らせないと、人類がAIに滅ぼされる可能性だってあるんじゃないかというくらいの危機感を…AI企業の人たちが持っているわけですね。そんな中で、米中の開発競争をどうリスク管理するのか、規制をするのか…コントロールの枠組みができるかどうかが私は大きな焦点だと思います。
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
台湾について1点だけ確認したいんですが。アメリカ政府は台湾の独立について支持しないということをずっと言ってきました。でも、中国側は明確に反対と言わせたいんじゃないかという話が先ほどありました。この言葉が変わることでどういう変化があるんでしょうか?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
反対するということは、台湾の独立的な動きに対して否定的な意味を持ちます。となると中国が台湾独立の動きを抑える名目で行動を起こした時に、アメリカは手出しをしないという理屈に近づいてくるわけです。もしアメリカが介入しないことが担保されれば、台湾を統一するという習近平さんの野望に近づくわけですね。そういった譲歩を少しずつ勝ち取っていきたいということだと思います。
(徳増 ないる アナウンサー)
日本としては台湾問題も非常に心配なんですが、高市首相は米中首脳会談を直前に控えたタイミングでトランプ大統領と会談をしました。そこで話していたのがこのようなことです。「日米同盟の強さを示すことができた」。また、「米中関係は日本を含む国際社会の安定に資するものとなることが重要」と述べていて、日米で緊密に連携していく方針を示しました。青山さん、この会談の成果、そして高市首相の外交手腕はどう見ますか?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
高市さんとしては、米中首脳会談の前にどうしてもトランプさんに一言…ここにある「米中関係は国際関係の安定に資するものとなることが重要です」と釘を刺しておきたかった。国連総会の場は各国の首脳が入り乱れていてトランプさんも時間を取るのは難しい。それでも35分とはいえ直接会談する時間を作ったのは、それだけでも成果だとは思います。私も現地に行っている外務省幹部にも直接取材しましたけども、一定程度米中の会談の前にくさびは打ち込めたし、ICCの問題でも、これはちょっと別の話ですけど、言いたいことは言えたと話しています。一方、今回の首脳会談で見えたのは、高市さんはどうしてもお願いする立場なんです。今、日中関係が非常に冷え込んでいる。その上、中国にロシアが接近して、北朝鮮とも関係を強化している。日本が東アジアで極めて厳しい状況に陥っていることで、アメリカ頼み、トランプさんに過剰に気を遣わざるを得ない情勢であることは、今回の首脳会談で浮き彫りになったと思います。
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
高市さんの外交の中で日米同盟の強さを示す、これはこれで確かに大事なことかもしれませんが、日本とアメリカは運命共同体ではありません。日本は日本で中国ともしっかりと外交交渉しなければならないと思いますが、高市さんの対中国外交って今どのような状況ですか?
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
高市政権が発足した直後から存立危機事態発言などをきっかけに日中関係は極めて厳しくなった。それ以降は習近平さんが完全に背中を向けている状況になっています。本当に日中関係は冷え込んでいて、首脳会談ができないだけじゃなくて官僚レベル、財界レベルでも交流ができない。ようやく国会議員が少し中国に行くようになったんですが、まだ事態改善に向けて交渉するような状況にはなってないんです。もちろん国益を損なうような妥協をする必要はありませんし、オーストラリアとかインドとか周辺の他国と連携して圧力をかけることもそうですが、中国とのパイプをどう作っていくのか、もう少し努力しなきゃいけない状況です。対話の扉は開けているといっても、開けているだけでは、なかなか進展しない状況になっていると思いますね。

