無人タクシーの27年商用化を目指す川鍋一朗会長(15日都内で/弁護士JPニュース編集部)

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日本交通株式会社、タクシーアプリ「GO」を運営するGO株式会社、そして米Alphabet傘下の自動運転技術企業Waymoの3社は15日、都内で記者会見を行い、2027年中に東京で国内初となる「自動運転レベル4」の完全無人走行による商用タクシー運行を目指すと正式発表した。

「自動運転レベル4」とは、自動運転の進化における6つの段階のうち4段階目。限定された地域やルートの中でシステムが全ての運転操作を担う。車内に運転手は存在しない。「特定自動運行実施者」が遠隔監視を行い、安全確保と事故時の対応義務を負う。2023年4月施行の改正道路交通法により、許可制度のもとで認められるようになった。

記者会見では、有人タクシーと比べ、人身事故が大幅に削減されたというデータも示された。

一方、ドライバーがいない無人のタクシーで、万一事故が起きた場合の法的責任は誰が負うことになるのかという点に課題が残っている。 

 公道で人が同乗しての試験走行を経て完全無人へ

会見の冒頭、全国ハイヤー・タクシー連合会会長で、日本交通取締役、GO会長を務める川鍋一朗氏が壇上に立ち、タクシーの歴史を振り返りながら今回の発表の意義を語った。

「タクシーは1912年、大正元年、このすぐ近くの有楽町で2台からスタート しました。そして2027年、115年目にして史上最も大きな変化を迎えます。いよいよ無人の自動運転タクシーが普通のタクシーとして、誰でも乗れるという世界が日本にもやってまいります」

川鍋氏がWaymoの車両に初めて乗車したのは2023年8月。当時はまだ米アリゾナ州フェニックスでしか運行されておらず、3回の乗車で「これが未来だ」と確信。Waymoに協力を要請したという。

川鍋氏の要請を受け、日本展開を決めたWaymoはGoogleの親会社であるAlphabet傘下の自動運転技術開発企業で、15年以上にわたり完全自動運転技術の開発を続けている。現在、米国15都市で毎週50万回以上の商用走行を提供し、完全自動運転で2億マイル(約3.2億キロ)以上の走行実績がある。

サービス当初の車両はジャガーのバッテリーEV「i-PACE」に第5世代の「Waymo Driver」を搭載したものとなる。料金体系については「現在の日本のタクシーの認可に基づく料金制度が基本」(日本交通・若林泰治社長)とのことだ。

国内初の無人タクシー商用化までの道のり

日本での商用化へ向け、3社は2025年から東京都内の港区、新宿区、渋谷区、千代田区、中央区、品川区、江東区の7区で公道試験走行を開始。日本仕様へのローカライズを続け、現在は日本交通の乗務員が同乗した状態で自動走行試験を進めている。今回の発表は、その実績を踏まえ、完全無人での商用化に向けた新たな段階への移行を宣言した形だ。

都内で試験走行に使われている車両(公式サイトより)

東京への展開における具体的なロードマップとして、Waymo共同CEOのテキドラ・マワカナ氏は段階的なアプローチを説明。まず規制当局(国土交通省、警察庁、東京都など)の許認可取得を進め、その後は社員の移動から検証を開始。商用化後は初日からGOアプリとWaymoアプリの双方で完全無人の配車サービスを提供する計画という。

自動運転の安全は確保されているのか

完全無人での自動運転が実現に近づく一方、クリアしなければならない2つの問題がある。第一に、安全性は確保されているのかという問題、第二に、事故が起きたときその法的責任は誰が負うのかという問題である。

まず、第一の安全性の問題について、同社共同CEOのテキドラ・マワカナ氏は、15年以上にわたって完全自動運転技術の開発を続けてきたことを強調。現在、米国15都市で毎週50万回以上の商用走行を提供し、完全自動運転で2億マイル(約3.2億キロ)以上の走行実績を持ち、その最大の成果として安全性を挙げた。

「人間のドライバーと比較して人身事故を94%削減した」というデータを示したうえで、「15倍以上安全であることが実証されている」と述べた。

また、Waymo Driverによる完全無人運転での走行160万キロあたり、人間による運転との比較で、物的損害に関する保険請求が88%、人身傷害に関する保険請求が92%減少したという保険会社との共同研究の結果も公開されている。

事故が起きたら誰が法的責任を負うのか

とはいえ、事故が発生する確率は理論上ゼロにはならない。

そこで第二の「事故が起きた場合の法的責任を誰が負うのか」という問題が生じる。

まず、刑事責任についてはどうか。

デジタル庁所管の『AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ』の構成員を務める髙橋正人弁護士は、無人運転で事故が起きた場合の刑事責任について、現行法上では「運転していることが前提の過失運転致死罪等にはならず、業務上過失致死罪になる」と指摘。そのうえで、プログラムに欠陥があったか、道路交通法に順守しないプログラムになっていなかったかが大きなポイントになると解説する。

自動運転に関する法務に詳しい岩月泰頼弁護士 (名古屋大学未来社会創造機構客員准教授)は、レベル4での事故を想定した刑事責任の検討において、主に「システムの設計・製造に関与する者の過失」「設計・製造のほか運行体制を監督する者の過失」「整備・情報提供等に関するオペレーターの過失」の3場面を念頭に置いた類型的な検証が重要だと指摘。

あらかじめ事故が起こり得る場面を類型化し、責任主体と注意義務を場面ごとに整理・特定し、各場面における基準を策定・対策しておくことが、事故の予防と発生時の責任を左右するという。

民事の損害賠償責任に関するルールはどうなっているか?

国交省の報告書 には「レベル4」の自動運転タクシーで、万が一の事故が起きた際の民事上の損害賠償責任(自賠法)の暫定的なルールが整理されている。

最大のポイントは、「被害者の迅速な救済」を最優先し、従来の有人タクシーと同様に「サービスを提供する大元の事業者(運行供用者)」が原則として責任を負うという点だ。

具体的にはケースごとに以下のようになっている。

【ケース1】乗客⇒責任なし
乗客は単に運送サービスを受けているだけであり、自動運転の操作に直接関与しないため、賠償責任(運行供用者責任)を負うことはない。

【ケース2】タクシー会社や自治体(サービス提供主体)⇒責任あり(原則)
旅客運送事業を行うタクシー・バス会社や、公共ライドシェアを提供する自治体・NPO法人などは、自動運転車を用いて利益を得ており、運行を支配しているため、第一義的な賠償責任を負う。

【ケース3】遠隔監視などを請け負う「委託先システム業者」⇒責任なし(原則)
タクシー会社等から車両の遠隔監視などを委託されている業者は、原則として自賠法上の賠償責任を負わない。被害者から見て「誰に賠償請求すればよいか」を分かりやすくするため、責任はあくまで大元のタクシー会社等に一本化される。※委託先が指示に従わず無断で車両を乗り回した等の例外を除く。

では、ソフトウェアや通信トラブルが原因の場合はどうなるのか?

事業者は「自分たちに過失がなかった」と証明できれば責任を免れる(免責)が、レベル4ならではの以下の事象では、基本的に事業者の責任が問われる。

【ソフトの更新忘れによる事故】
 事業者(タクシー会社等)には、委託先のシステム業者がソフトウェアや地図情報を正しくアップデートしているか監督する義務がある。委託先が更新を怠って事故が起きた場合、事業者の「注意義務違反」となり責任は免れない。

【通信の遮断による事故】
 通信トラブルで遠隔監視装置が機能せず事故が発生した場合、車両に「構造上の欠陥や機能障害」があったとみなされ、事業者が責任を負う可能性がある。 

システムに道交法をどう読み込ませるのか…

加えて、そもそも「自動運転システムに道路交通法をどう読み込ませるか」という根本的な問題もある。たとえば道路交通法では、信号機のない横断歩道で子どもが飛び出してくる可能性を踏まえた安全速度での走行が求められる(同法38条)。しかし、こうした予測困難な状況をシステムにどう組み込むのかは容易ではない。

そもそも、1960年に公布された道路交通法は、自動運転車の存在を想定していなかった。同法の改正と、プログラミングしやすい形への「可読化」が今後の最大の課題になりそうだ。

事故が減り、ドライバー不足が解消され、交通空白を埋めるポテンシャルを秘めるーー。無人タクシー商用化への期待は膨らむが、技術がどれほど成熟しても、法的な枠組みの整備は別次元で積み上げなければならない課題だ。

川鍋氏は「千里の道も一歩から」と語った。もとより、まず走り出すことが変化の起点になることはいうまでもない。だが、乗客が安心してその扉を開けるためには、技術の信頼性と同じ高さで、法的な安全網の整備が社会に示されなければならない。

【取材協力弁護士】

■髙橋正人弁護士(髙橋正人法律事務所 )

被害者専門弁護士として凶悪犯罪における犯罪被害者事件のほか、交通事故で工学鑑定や医療知識を必要とする事件、その他幅広く、医療事件・科学関係の事案などをカバーする。

■岩月泰頼弁護士(松田綜合法律事務所) 

企業不祥事における危機対応と不正調査、食品事業関連法務、自動運転/フィジカルAI関連法務などビジネス領域に精通し、広く業務分野とする。