ドラッグストア業界は決算期がバラけていて、6月期の決算を待ってようやく各社が出揃う。ということで、2025年度の売上ランキングを作って眺めてみた。

【写真で見る】地方にばかり増えている「コンビニみたいなドラッグストア

 トップはウエルシアと統合した新ツルハだ。2025年12月に統合した関係でウエルシア分が通期反映していないものの、ウエルシアとツルハの通年売上実績を足せば2兆4604億円であり、圧倒的なトップ企業となっている。次いで、マツキヨココカラ、コスモス薬品、スギHDの3社が1兆円超え。その下のサンドラッグまでの上位5社で全体の約7割に達している。


ウエルシアと統合したツルハ(公式サイトより)

 今後は上位企業による下位企業の買収などを含めたシェアの争奪戦が始まり、下位企業への圧力は高まるばかり--という見方もしたくなるが、この業界はそう簡単な構造でもない。上位企業は下位より圧倒的に強いか、というと、案外そうでもないところが面白い。

2003年時点で1位だったチェーンは、やっぱり……

 せっかくなので、20年ほど前のランキングと比べてみよう。

 2003年時点のランキングだが、マツキヨ、サンドラッグ、ツルハ、スギ薬局が10位以内にいる。現在の上位銘柄の大半が、昔からの大手であることが分かる。

 ウエルシアについていえば、当時は中堅どころだったグリーンクロス・コアという母体企業をイオンがグループ企業として軸にした。それをイオンがM&Aによって集めてきた企業と再編してウエルシアとなり、同じくM&Aで大きくなっていたツルハと統合して、“大ツルハ連合”となっているのが今日である。

 2003年ランキング図の右端は、その後統合された相手を記載している。上位、中堅の多くが再編統合されて、ウエルシア、ツルハ、マツキヨココカラ、サンドラッグ、スギのいずれかの陣営に加わっていることが分かるだろう。つまり、上位企業の20年は、M&Aによって規模拡大を実現してきた時代だった、ということになる。

 さて、業界内で再編が進んだこの20年だが、避けて通れないキーワードがある。それが「フード&ドラッグ」である。

大手すら脅かし始めた新潮流「フード&ドラッグ」とは何か?

 2025年ランキングに割り込んできた企業はコスモス薬品、クスリのアオキ、クリエイトSD、ナチュラル、ゲンキー(Genky DrugStores)といった銘柄だ。これらは食品スーパーの3分の1~半分をドラッグストア売場にしたような業態という特徴を持つ。これこそが「フード&ドラッグ」の正体だ。

 フード&ドラッグで成長した各チェーンは、人流の薄い地方や郊外ロードサイド出身が多い。少ない来店客を増やすため、購買頻度の高い食品をディスカウント販売し、来てくれた顧客に薬粧類(医薬品、化粧品などのこと)をついで買いしてもらうことで生き残る、という道を選んだわけだ。

 これらは見た目がほとんどスーパーみたいな売場だが、生活必需品が結果としてなんでも揃う。地方では「大きなコンビニ」のような機能を評価され、消費者の支持が高まってきた。ここで薬粧が買われてしまうと、既存のドラッグストアは少しずつ売上を奪われていくことになる。

 ここで再び、冒頭で示した直近の売上ランキングを見てみよう。今度は、フード&ドラッグを手掛ける企業に網掛けをしている。

 最近5年での売上増減を見てもらうと、この流派がいかに成長しているかが分かると思う。いわゆる大手の増収は再編統合に拠る部分が大きいのだが、フード&ドラッグ各社は同業M&Aをほとんど行っていない。この点を踏まえると、ここ20年のドラッグストア業界の方向性が見えてくるだろう。

 要は、フード&ドラッグが各地に広がって中堅クラスのドラッグストアのシェアを奪ったため、中堅が存続のため大手の傘下に入って対抗した、という構図が見えてくる。そして、寡占化も進んできた今、フード&ドラッグは大手のシェアをも侵食しつつある。

 大手はこのフード&ドラッグ軍団を打破するか、もしくは仲間に加えなければ、自らのシェアを圧迫されかねない状況になってきたわけだ。「今のシェアが高いから安泰」「大手だから安泰」という構図は、この業界には存在しないのである。

ツルハ・ウエルシア連合の裏で起きていた“騒動”

 そんな中、業界としては大きな事件が起きた。

 ウエルシアとツルハの統合の主役であり「小売りの王者」でもあるイオンと、資本業務提携関係にあったクスリのアオキが提携を解消したのだ。

 実質的には、よりアオキとの関係を深めようとするイオンに対して、自主性を維持したいアオキが離脱を決断した、という構図のようだ。

イオンと決別した北陸の雄「クスリのアオキ」とは何者なのか

 20年ちょっと前、北陸の地方ドラッグストアだったアオキは、トップ・マツキヨの1割ほどの存在でしかなかった。前述の通り同規模だった企業の多くは、のちに大手に統合されていることを踏まえると、単独での成長は困難であったといえる。

 アオキがとった選択は、イオンの10%出資を受け入れ、資本業務提携を行うこと。イオンとの競争を避け、さらにプライベートブランド(PB)商品の供給を受けて、フードの集客力を強化することで生き残る、というものだった。

 果たして2025年、アオキは売上5668億円となり、サンドラッグに次ぐ業界6位にまで成長、見事生き残りに成功した。一方で盟主イオンは、2.4兆円という巨大企業の新ツルハを成立させ、トップシェア確立とフード&ドラッグを戦力として保有するため、アオキとの関係強化を望んでいた。

 しかし、客観的にみれば、アオキがイオンとの同盟関係を維持してきたのは、生き残るための方便であって、元々進んでイオンの傘下に入りたいはずもない。雑に例えるなら、戦国時代に織田信長が地方勢力の1人だった時期に、武田信玄や上杉謙信に対して低頭外交で、対立を避けていたのと同様であろう。その後、どうなったかは皆さまご存じの通りで、自らの勝算が見えれば、そんな同盟は破棄されることになるのである。

 しかし、2.4兆円企業の新ツルハが出来たタイミングで、数千億円規模のアオキがなぜ独自路線で生き残れると踏んだのだろうか。続く記事では、北陸出身の中堅に過ぎないアオキが、小売りの盟主であるイオンに見切りをつけた具体的な理由と勝算についてみていく。(つづく)

なぜイオンは“ナゾの地方企業”に「切られた」のか ドラッグストア業界に起き始めた“地殻変動”のウラ側〉へ続く

(中井 彰人)