「学園祭で使うからと騙して写真を…」元男子高校生が明かすAIディープフェイク作成の裏「マジの盗撮じゃないから悪くない」
教育格差から貧困問題まで、子供に及ぼす社会問題の暗部を掘り下げてきたノンフィクション作家・石井光太氏による新連載「ルポ 生成AI時代」。10代のディープフェイク被害が急速に拡大している中、教育現場では戸惑いが広がる。AI時代に生まれた新たな加害行為のリアルと、若者たちの暴走とは?
【画像】「ディープフェイク」について注意を呼び掛ける警視庁のちらし
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©AFLO
「正直、罪悪感はありませんでしたね」
ディープフェイクポルノとは、AIを用いて、実在する人物の性的画像を生成することである。これを作成した元男子高生の言葉だ。
「高校にプログラミングとか色々と詳しい奴が何人かいて、その仲間内で同級生の女子の裸の画像を作るのが流行っていたんです。専用のソフトを使えば、数秒ででき上ります。
女子の画像は、それ専用に撮影していました。その子には『学園祭で使うから』とか嘘ついて撮らせてもらうんです。もともとネットに詳しい仲間たちだったんで、そこから動画も作るようになりました。
正直、罪悪感はありませんでしたね。だって、作っているのは事実とはまったく違う画像じゃないですか。マジの盗撮はヤバいと思いますけど、AIでフィクションの画像を作成しているだけなので、悪いことをしている気持ちはありません」
彼がディープフェイクポルノを作り出したのは高校2年の時だ。だんだんとスキルが上ってきたことから、1年も経たないうちに仲間内だけでなく、それ以外の生徒とも共有するようになった。
高校3年になって間もなく、同級生からの通報で学校側に露見。その際に彼が語った言葉がこれだ。
学校側は警察に通報しない代わりに、自主退学を求めたという。
ローカルAIを駆使した「ディープフェイクポルノ」
ディープフェイクは、「ディープラーニング(深層学習)」と「フェイク(偽物)」を掛け合わせた用語で、人物の顔や声など、映像を本物そっくりに合成・生成するAI技術だ。中でも深刻な社会問題となっているのが、この技術でポルノ(性的コンテンツ)を生成するディープフェイクポルノである。
静止画にせよ、動画にせよ、エンジニアであれば自分で専用のローカルAIを構築しているが、そうでなければネット上のソフトを使って生成する。
もともとChatGPTやGeminiといった一般的に使われているAIは、倫理規定に基づいたフィルターがかかっていて、基本的には性的コンテンツの生成はできないようになっている。
だが、中国や欧米の独立系企業によって開発されたAIは、オープンソースAIといって、プログラムの中身が一般公開されて、改良が可能になっている。エンジニアであれば、それを用いて、制限を外した自分専用のローカルAIを構築してディープフェイクポルノを作ることができる。
こうしたソフトは、「nudify」系と呼ばれ、ディープフェイクポルノの愛好者の間に広まっている。服を着た人間の映像データを自動的に裸へと加工することを目的としたものだ。ソフトの固有名詞を検索すればヒットするようなものから、秘匿性の高いSNSでひそかに取り引きされているようなものまであり、性能も様々だ。
用意した写真をアップするとオリジナルのAV動画に…
また、アダルトビデオの顔を入れ替えることができるサービスもある。アダルトサイト「フェイススイッチ」が代表的だ。
ここでは、サイト内のAV作品の出演者の顔を、自分が用意した写真(付き合いたい女性や職場の後輩、友人・知人などの写真)の顔と差し替え、ディープフェイク動画を生成することが可能だ。無料版と有料版とがあり、ダウンロードこそできないものの、オリジナルのAV動画を簡単につくれてしまう。これがどれほど危険なものか、子をもつ親なら想像に難くないだろう。
NPO法人チャイルド・ファンド・ジャパンと追手門学院大学の調査によれば、日本の16~24歳の男女のうち3.7%がディープフェイクポルノの被害に遭った経験があると回答している。男女合わせて1クラスに1人の割合だが、被害者が気づいていないだけで、実態ははるかに多いだろう。
驚くのは、こうした犯罪が若い人たちの間で引き起こされている点である。
警察庁の発表によれば、2026年の上半期に18歳未満が被害者になったディープフェイクポルノ事案は123件で、前の年と比べて倍増している。実は、加害者の7割近くが同じ学校の生徒か、同級生という実態があるのだ。
『いじり』『ギャグ』という軽い感覚の加害者たち
一体、10代の若者たちは、どういう感覚でディープフェイクポルノを生成するのか。
首都圏のある高校では、ここ数年、ディープフェイクポルノに関するトラブルが4件起きたという。同校の40代の教員・武井宗之(仮名)は次のように話す。
「学校でのディープフェイクポルノは、特定の生徒にたいするいじめとして捉えられがちです。ただ、当人たちは、『いじり』とか『ギャグ』といったもっと軽い感覚でやっていますね。
私が中高生の頃は、一部の生徒がエロ本に同級生の顔写真を貼って遊んでいました。今の子もそれと似た感覚なんでしょうが、AIが介在することによって重大な犯罪になってしまっている。科学技術の負の側面だと思います」
こうした傾向は、子供たちがカメラ機能付きの携帯電話を持ち出した頃から発生している。
語弊はあるかもしれないが、かつて子供たち同士のスカートめくりやズボン下ろしといった行為は「悪ふざけ」とされて見過ごされてきた。だが、カメラ機能付き携帯を持つ時代になると、彼らはその行為を撮影し公開するようになった。そのため、彼らの悪ふざけは児童ポルノという重大犯罪になった。そして今、子供たちが生成AIを使用しだしたことで、ディープフェイクポルノという新たな犯罪が生まれているのである。
武井が懸念するのは、当事者がそれをする感覚が昔と同じくらい軽いという点だ。科学技術を利用することで悪ふざけが犯罪になったにもかかわらず、やる側の意識は変化していないのだ。
1000人以上の参加者を集めていた画像販売事件
彼はつづける。
「学校側も処分には頭を悩ましています。私が勤める高校では、友達内だけで悪ふざけの延長でやった程度だと判断した場合は、保護者を呼んで厳重注意の上で停学処分にしています。警察に通報することはありません。
しかし稀に生成したデータをネットで公開するケースがあります。本校の生徒ではありませんが、他校では作ったデータを売買していた子がいたという話も聞いています。こういうケースでは、警察に通報し、生徒も一発退学になります」
ディープフェイクポルノを販売するとはどういうことか。未成年の事案はほぼ詳細が報じられないが、2025年に起きた成人の例を示そう。
京都府警察に20代の男性がディープフェイクポルノを用いて金儲けをしていたことで逮捕された。
この男性は、SNS「Discord」上で会員制のグループチャットを運営し、1000人以上の参加者を集めていた。そこで「主のコラ作品公開部屋」と名付けたページを設け、自身が作成したディープフェイクポルノの画像を公開し、会員から依頼があれば一つ数百円で画像生成の仕事を請け負っていたという。
ただ、日本には他国と違ってディープフェイクポルノに特化した法律が存在しない。そのため、京都府警察は、わいせつ画像をネット上に出したとする「わいせつ電磁的記録記録媒体陳列」の疑いで逮捕した。その量刑は軽く、逮捕からわずか3カ月後に開かれた裁判では、執行猶予付きの判決が下され、男性は刑務所への収監を免れることとなった。
おそらく未成年がディープフェイクポルノを売買する場合も、これとほぼ同じだろう。ディープフェイクポルノは、一般のポルノのような不特定多数向けコンテンツというより、依頼者から「この人物のディープフェイクポルノを作ってくれ」と注文を受けて作られることが多い。だが警察に通報されても、ほとんどの場合が不処分、ないしは保護観察処分で済まされているのが現状だ。
実在の女子生徒をモデルにAIで官能小説を作り……
武井によれば、10代の若者のAIとポルノの問題は、ディープフェイクポルノより一歩先に進みつつあるそうだ。
武井の言葉である。
「私が心配しているのは、子供たちがAIを使って簡単にアダルトコンテンツを作れるようになっていることです。
たとえば、うちの男子生徒が実在の女子生徒をモデルにして官能小説を作ったというトラブルがありました。AIを使って、同級生たちが性行為をする物語を作成し、生徒間で共有していたんです。女子生徒の親から相談があって発覚しました。調べたところ、男子生徒が使用していたのは、官能小説を作れるAIソフトでした」
ChatGPTやGeminiなどのAIでは、画像同様にテキスト生成でもフィルターがかけられていて、倫理規定に触れる文章は作れない。
だが、ネット上には、それらのAIに官能小説を創作させるための上手なプロンプトの書き方を指南する情報があるし、官能小説を生成できるソフトも公開されている。それを使えば、実在する人物のわいせつなシーンをプロの小説家顔負けの文章で生成することができる。
「同人ポルノ」全盛期の時代
武井はつづける。
「官能小説はかわいい方で、ITスキルの高い生徒たちの中には、マンガやアニメといったアダルトコンテンツを作れる人もいます。AIによって一から十まで生成してオリジナルの作品を制作するんです。このジャンルは一般的に人気があるらしく、上手な子であれば立派なビジネスになるようです」
近年、アダルトメーカーではなく、素人がAIを用いてポルノ作品を作る流れが生まれている。「同人ポルノ」と呼ばれるジャンルがそれだ。
国内最大手のアダルトコンテンツサイト「FANZA」では、従来のアダルトビデオやライブチャットと並んで、「AI」「同人」というコンテンツがある。ここには、素人がAIで作ったコミック、動画、CGといったポルノ作品が約30万タイトル並んでいる。1作当たりの価格は、500円~2000円ほどだ。
FANZAは日本国内の企業が運営する合法的なサイトなので、素人が創作した作品をここで販売する場合は、運営側の厳正な審査を受けなければならない。当然、高校生の参加は禁止されており、それ以外にも実在の人物の使用禁止、モザイク処理の必須、出品本数の制限など法律に照らし合わせた細かな規定もある。
では、高校生以下の年齢の子供たちが制作や販売をしないのかといえば、そういうわけではない。親や兄の身分証を使って年齢認証をごまかしてやったり、SNSを悪用して作品を個人間で売買したりする子たちが出てきているのだ。
武井は言う。
「昔はよほど絵が上手な子でなければ、アダルトアニメを制作することなんてできませんでした。できたとしても、恥ずかしくて公言しなかったでしょう。
でも、今はAIを使えば誰もが簡単に作ることができてしまう。また、作品のクオリティ=ITスキルの高さと見なされるので、恥ずかしげもなく堂々と作りますし、それで大金をつかめればビジネスとして成功したというイメージが広がる。そうしたこともあって、参入するハードルがかなり低くなっているのです」
少し前、武井は卒業した男子生徒から在学中にアダルトコンテンツを自主制作していたことを教えられたそうだ。その男子生徒はSNSを介して販売し、1年ほどで300万円を稼いだと豪語していたという。
一時代前までアダルトコンテンツは、若者にとって消費するものだった。だが、今はAIの普及によってクリエイターとして制作するものになりつつある。時代の流行や性に敏感な若者たちが、ポルノ制作の最前線に躍り出る日が到来しているのだ。
こうした流れを、社会はどう受け止めて対応していくのか。IT企業の規制や、リテラシー教育に期待するだけでは、根本的な解決にはならないのは明白だ。
INFORMATION
本連載では、「若者社会におけるAIの光と影」をテーマに取材を進めています。その中で「AIによるショート動画などのAIスロップの大量生産に詳しい方」「推し活アプリやAIパートナーへの課金に悩まれている方」「AI教育・AI保育の課題に詳しい方(教育・保育者含む)」を探しています。
取材に協力していただける方は、簡単なプロフィールと提供いただける情報を明記の上、著者・石井光太氏のホームページから連絡下さい。
(石井 光太)
