「もっとやって!」は愛着障害のサインかも……なぜ、あの子の要求は次々とエスカレートするのか
「暴言、暴力をくりかえす」「構うと要求がエスカレート」「注意すると逆ギレ」「褒めたのに怒る」そんな手ごわい“不適切行動”をする子が激増している。その原因が「愛着障害」にあることをいち早く指摘したのが、米澤好史氏だった。わかりにくい「愛着」の概念から、独自の愛着障害論、そして効果的な支援の方法まで、渾身の力で書き切った新刊『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』より見どころを抜粋して紹介する。
愛情欲求エスカレート現象
愛着とは、特定の人と情緒、感情、気持ちで結ばれるこころの絆であると述べましたが、大人がこどもと一対一でかかわる場面ではその絆を実感しやすいので、愛着障害を抱えたこどももポジティブな感情を得て落ち着くことができます。
そして落ち着けるからこそ、大人を手放せなくなります。
愛着障害のこどもは、いくら愛情を注がれても〈足りない!〉と感じています。いわば、注がれた愛情をこころにためておくことができない状態にあるのです。
目の前の大人が、明日も自分にかかわってエネルギーを与えてくれるとは限りません。
また、他の大人が同じようによくしてくれるかどうかもわかりません。どんなによくしてもらっても足りない感じがするうえ、このあとも得られるかどうかわからないから、〈もっと愛情を!〉と求め続けてしまうのです。
感情が育っていないと自分の期待どおりのことをしてもらっても満足感には至れず、むしろ〈もっとしてほしい〉という気持ちが強くなってしまうので、このような現象があらわれます。
邪魔する者を排除しようとする
〈もっと愛情を!〉と渇望する気持ちから、周囲の人(クラスメートなど)への嫌がらせなどの行動が起こる場合もあります。
たとえば、補助教員とこどもがいる教室に、別の子が忘れ物を届けに来たとします。すると愛着に問題を抱えた児童は、画像のようにして、そのこどもを追い払おうとすることがあります。
こんな行動に及んでしまうのは、一対一を邪魔されて、自分への愛情が減ってしまったように感じたからです。言い換えると、「邪魔者」であるクラスメートを排除したいという気持ちからくる行動なのです。
また、たとえば「自分ができなかったことを、他のこどもができたとき」にも同じような排除行動に及ぶことがあります。この場合は、羨うらやましさや妬ねたましさ、あるいは劣等感からくる嫌な気持ちが原因となっています。
被害者から「やめてよ」と抗議されると余計に嫌な気持ちが増えるので、嫌がらせが長引いたり、「叩く」などの攻撃行動へとエスカレートしたりすることもあります。
受容・傾聴してはいけない
優しい大人、あるいは熱心な支援者ほど、〈要求に応えてあげれば、こどもはきっと満足する〉と期待してこどもの要望を受け入れて(受容)叶えようとしたり、言うことに耳を傾けたり(傾聴)するのですが、残念ながらそれらのかかわりが奏功することはありません。
むしろ、「これもして!」「もっとして!」「やり方が悪い! こうするんだ!」とエスカレートするか、傾聴したことでかえってこどもが感情的に混乱します。
感情の発達が十分でない愛着障害のこどもは、自分の感情を振り返って気づくことができません。全面的な無条件の受容(カウンセリングマインドでよく強調されます)は、自分の感情を自分でわかっているときにこそ、支援として意味があります。だから受容・傾聴の支援をいきなり行っても愛着障害には合わないのです。
後手に回ってこどもの要求に応じるのではなく、主導権を確保して先手支援を行う、あるいは、行動・認知・感情の連合学習の支援などによって先回りしてポジティブな感情を生じさせ、愛情欲求が起こらないように導くことが大切です。
