アルツハイマー病と関連する心血管疾患とは? 約79万人のデータから分かった意外な病気
「将来、認知症にならないために何をすればいいの?」と考えたことはありませんか。実は、心臓や血管の健康が、将来の認知機能とも関係している可能性があります。米ミシガン工科大学の研究員らが、英国と米国の計約79万人分のデータを分析したところ、複数の心血管疾患とアルツハイマー病との関連が確認されました。この研究結果について、後平先生に伺いました。
監修医師:
後平 泰信(医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院)
2009年に旭川医科大学医学部を卒業。循環器内科のスペシャリストとして、長年、札幌東徳洲会病院を中心に救急医療や心疾患の治療に従事。2023年には睡眠・無呼吸・遠隔医療センター長を歴任し、最新技術を用いた診療体制の構築に尽力。2024年より病院長に就任し、2025年10月の「札幌もいわ徳洲会病院」への名称変更。日本循環器学会 認定循環器専門医。日本睡眠学会 総合専門医・指導医。日本スポーツ協会公認 スポーツドクター。日本内科学会 認定内科医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
米ミシガン工科大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
後平先生
米ミシガン工科大学の研究員らは、心血管疾患(心臓や血管の病気)とアルツハイマー病の関係を調べる大規模研究を行いました。英国と米国の合計約79万人分のデータを分析した結果、多くの種類の心血管疾患がアルツハイマー病と関連していることが分かりました。特に、これまであまり研究されていなかった低血圧との関連が、今回の研究では最も強く一貫して認められました。高血圧や脳梗塞との関連も強く見られました。一方で、急性心筋梗塞との明確な関連は見られませんでした。
さらに遺伝子解析では、アルツハイマー病と心血管疾患に共通する遺伝子領域が見つかり、特にAPOE(脂質代謝に関わる遺伝子)やMAPT(脳内のタンパク質に関わる遺伝子)の近くが目立ちました。この結果は、血管の健康を保つことが、将来の認知機能低下を防ぐ手がかりになる可能性を示しています。
テーマになった疾患とは?
編集部
今回のテーマに関連する心血管疾患について教えてください。
後平先生
心血管疾患とは、心臓につながる血管や心筋などに異常が生じ、心臓や全身に十分な血液を送りにくくなる病気の総称です。狭心症や心筋梗塞、不整脈、心房細動、心臓弁膜症、心不全などが含まれます。原因には動脈硬化や血栓のほか、喫煙や食生活などの生活習慣が関係する場合があります。胸の圧迫感や締め付け感、動悸、息切れ、めまい、むくみなどは重要なサインです。特に強い胸痛が続き、冷や汗や吐き気を伴う場合は緊急性が高いため、即座に医療機関を受診しましょう。日頃から生活習慣を見直し、気になる症状を放置しないことが大事です。内容への受け止めは?
編集部
米ミシガン工科大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
後平先生
今回の研究は、約79万人という大規模なデータを用いて、心臓・血管の健康とアルツハイマー病との関連を幅広く検討した点で興味深い研究です。特に注目したいのは、高血圧や脳梗塞だけでなく、「低血圧」がアルツハイマー病と強く関連していた点です。脳は多くの血液と酸素を必要とする臓器です。そのため、血圧が低すぎる状態や心臓の機能低下などによって脳への血流が十分に保たれない状態が続けば、認知機能に影響する可能性が考えられます。
ただし、今回の研究は「低血圧がアルツハイマー病を引き起こす」と証明したものではありません。反対に、アルツハイマー病に伴う自律神経機能などの変化によって血圧が低下している可能性もあり、因果関係については今後の研究が必要です。
大切なのは、「血圧は低ければ低いほどよい」ということではなく、年齢や病気の状態に応じて適切な血圧を維持することです。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの心血管リスクを適切に管理することは、心筋梗塞や脳卒中の予防だけでなく、将来の脳の健康を守るという観点からも重要だと考えます。
編集部まとめ
心臓や血管の健康は、認知機能とも関係する可能性があります。今回の研究だけで病気の因果関係が分かったわけではありませんが、血圧や血糖、コレステロールなどを日頃からチェックすることは大切です。バランスのよい食事や適度な運動、禁煙など、心血管疾患を防ぐ生活習慣を意識していきましょう。

