『ラストノート』©︎フジテレビ

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 「私も気に入ってるの。特に、ラストノートが意外で。最初はこんな香りが残るなんて思わなかった」

参考:『ラストノート』の地獄展開に騒然 20歳差恋愛より“優子劇場”坂井真紀から目が離せない

 貴和子(多岐川裕美)の言葉が物語るように、『ラストノート』第10話もまた衝撃的なラストを迎え、思いがけない余韻を残していった。

 澄晴(寺西拓人)に別れを告げた葵(内田有紀)は休暇を取り、湖の近くにあるペンションへ。周囲との連絡を断ち、一人静かに過ごすなか、芳しい香水をまとう貴婦人・貴和子と出会う。

 かつて恋人とこの場所を訪れたことを明かし、「懐かしい」と振り返った貴和子。そんな彼女とは対照的に、葵は澄晴と過ごした時間をまだ思い出にできずにいた。忘れるにはあまりにも大切な時間で、気持ちの置き場が見つからないと打ち明ける葵に、貴和子は「置き場なんてないわ。その気持ちはあなたの中に閉じ込めておくべきものじゃないもの」と告げる。

 「私が彼を懐かしいと言えるのは、それ以外の言葉が出てこないくらい気持ちを出し切ったからよ」

 眞澄(佐々木蔵之介)の父親としての思いや、澄晴の将来を尊重し、自ら身を引いた葵。その選択に頭では納得しているつもりでも、心はまだ澄晴を愛していると叫んでいることに気づかされる。さらに、彼女を後押ししたのは、優子(坂井真紀)がわざわざペンションまで届けにきた眞澄からの手紙だ。そこには、これまでの無礼を詫びる言葉とともに、「澄晴とあなた自身を信じて道を選んでください」という最後の願いが綴られていた。

 葵はまた、周囲の言葉に惑わされ、自分の声を信じられなくなっていたのだろう。“誰かのため”を口実に、自分の気持ちに蓋をする。それは一見、大人の美徳に思える。けれど、どんなに押さえ込んでも、その気持ちは綺麗に消えてなくなることはなく、前へ進もうとする足を止めるのだ。「どうしたいの?」という優子の問いかけで、葵はようやく澄晴を諦めきれない気持ちを認めることができた。

 優子は澄晴の心を射止めた葵への嫉妬に駆られ、2人の仲を壊そうとしたこともある。莉奈(桜井日奈子)もまた澄晴への思いを抑えられず、葵の会社にまで押しかけた。どちらの行動も決して褒められたものではないし、相手を傷つけてもいる。でも、少なくとも2人は物分かりのいいふりをして、自分の気持ちに蓋をすることはなかった。

 恋をすると、感情は簡単にぐちゃぐちゃになる。普段の自分ならしないようなことをして、後から恥ずかしくなることもあるだろう。それでも、みっともない姿をさらしてまで思いを出し切ったからこそ、優子も莉奈もようやく澄晴への恋に区切りをつけ、今度は葵の背中を押すことができたのではないだろうか。その先で、岩村(平原テツ)や龍太(草川拓弥)のように、ずっとそばにいた人の存在にも気づけたのかもしれない。

 葵は自ら澄晴に電話をかけ、翌日会う約束を交わす。誰かのためではなく、自分が彼と一緒にいたいから戻る。その決意が感じられた。

 ところが、約束の場所で葵を待っていたのは、思いがけない言葉だった。互いに「会いたかった」と伝え合い、今度こそ同じ未来へ歩き出すかに思えた直後、澄晴は葵に「一緒にはいられない」と告げたのである。

 なぜ澄晴は、覚悟を決めて戻ってきた葵を拒んだのだろうか。葵と別れてからスランプに陥っていた彼は、彼女から連絡を受けた途端、一気にコンペに出す絵を描き上げた。ところが、斎木(白鳥晴都)に創作の原動力を尋ね、「自分自身です。描きたいものって自分の中から湧いてくるものじゃないですか」と返されると、その表情が曇る。

 澄晴が一度は諦めた絵の道に進むことができたのも、葵のおかげだった。でもそれゆえに、葵がいたから描けたのか、それとも葵がいなければ描けないのか、わからなくなってしまったのかもしれない。さらに、奥田(徳井義実)の「50を過ぎてからの決断は、一生を見据えたもの」という言葉も、澄晴の胸に残っていたのだろう。自分の迷いがあるうちに、一緒にいたいという気持ちだけで突っ走れば、また葵を振り回してしまうかもしれないと考えたのではないだろうか。この別れが、葵への依存から抜け出すための決断なのか、周囲の言葉に揺さぶられただけなのかは分からない。

 ただ現時点では、結局また葵を振り回しているようにも見える。2人が残すラストノートは、甘い香りか、それともビターな香りか。残すところあと1話。葵と澄晴の恋の行方を、最後まで見届けたい。(文=苫とり子)