〈10億円の宝くじが売れ残り〉1等8億円+後賞2億円はどこへ? みずほ銀行が明かした誰も受け取らない当せん金のその後
1等8億円、後賞2億円。計10億円の当せん券が、買われないまま“紙切れ”になった。SNSでは驚きや疑問の声が相次ぐなか、売れ残った当せん金はどうなるのか。それでも人はなぜ宝くじを買うのか。みずほ銀行宝くじ部に聞いた。
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売れ残った10億円の行方は…
栃木県宇都宮市の宝くじ売り場で起きた、なんとも皮肉な“10億円事件”が話題を呼んでいる。
宇都宮市の「宇都宮ベルモールチャンスセンター」で販売された「サマージャンボプレミアム」。1等8億円と、その後賞2億円の計10億円分の当せん券が、客の手に渡ることなく売れ残っていたのだ。
一方、前賞2億円の券は販売されていた。もし隣り合う3枚すべてが売れていれば、1等・前後賞合わせて12億円という夢が現実になっていたことになる。売れ残りから当せん券が出たことでSNSではさまざまな意見が上がった。
「宝くじは買ってから抽選日までの間、当たったら何に使おうかどうしようかと考え楽しむ為の代金だと思ってる」
「本来であれば売れ残りを省いた、販売されている番号から抽選するべきだと思う」
「販売されている番号から抽選が出来るということは売れ残りクジから当選は出ないことになる。当選番号が操れる(不正が出来る)ことになる」
「換金されなかった当選金など、公共のために使われるお金を、もっと将来への投資に回してもいいのでは」
さらに、「もったいない」「あと少し買っていれば……」と驚く声が続出した。その一方、「そもそも売れ残った券まで抽せんするのはなぜ?」「誰も受け取らない10億円はどこへ行くのか」と、宝くじの仕組みそのものを疑問視する反応もみられた。
では、誰にも渡らなかった10億円は“消えて”しまうのか。みずほ銀行宝くじ部の担当者がいう。
「売れ残った宝くじの当せん金は、宝くじの収益金と同様に、発売元である全国都道府県及び20指定都市へ納められ、公共事業などに役立てられます」
つまり、売り場やみずほ銀行が10億円を手にするわけではない。誰にも支払われなかった当せん金は、最終的には自治体側へ納められる仕組みになっている。
宝くじ公式サイトによると、2024年度の宝くじ販売実績額7598億円のうち、36.2%にあたる2750億円が収益金として自治体に納められた。道路や公園、防災、少子高齢化対策、教育・福祉施設など、身近な行政サービスにも使われている。
とはいえ、もう一つ気になるのが、なぜ、最初から「誰も持っていない」と分かっている売れ残り券まで当せんする可能性があるのか。
それでも宝くじを買いたくなる心理
宝くじ部の担当者が説明する
「売れ残った宝くじも抽せん対象ですが、これはジャンボ宝くじでは賞金条件がユニット単位で決定されているためです。『100000番』から『199999番』までの10万枚を1組としており、組の数によって1ユニットの枚数が決まり、ユニットごとに当せんが発生します」
今回のサマージャンボプレミアムも1ユニット1000万枚という設計で、賞金体系はあらかじめユニット単位で設定されている。実際に何枚売れたかに応じて「当たり番号だけを販売済みの券から選び直す」という仕組みではない。
では、抽せん前に、「この番号は売れた」「これは売れ残った」という情報を把握しているのだろうか。この点について、みずほ銀行宝くじ部は、こう回答した。
「恐れ入りますが、本項目につきましては事務手続に関する事項であり、非開示のため、お答えいたしかねます。なお、抽せんは厳正に実施しております」
売れ残った10億円――。
こうしたニュースを見ると、「結局、当たらないのでは」と宝くじから距離を置きたくなる人もいるだろう。それでも毎年、多くの人が宝くじを買う。
なぜなのか。
行動経済学では、その理由の一つとして、人は極端に小さな確率であっても「起きたら人生が大きく変わる出来事」を実際の確率以上に魅力的に感じやすいことが指摘されている。宝くじはまさに「当たる可能性は低いが、当たったときの利益が桁違いに大きい」商品の典型だ。
500円で買っているのは、紙の券だけではないのかもしれない。
「もし8億円当たったら会社を辞めよう」「家を買おう」「家族を旅行に連れていこう」――抽せん日までのあいだ、現実には簡単に手に入らない未来を想像できる。
今回、10億円の“夢”は誰にも買われないまま終わった。
だがその事実さえ、「もしかしたら、自分が買った一枚だったかもしれない」と思わせる。宝くじが売り続けている最大の商品とは、当せん金そのものではなく、その「もしかしたら」なのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部
