『ウィル』がクルマ好きを惹きつける理由【森口将之の『もびり亭』にようこそ 第24回】
2012年設立のモビリティカンパニー
WHILL(ウィル)という歩行領域の電動モビリティ(電動車いす)の会社をご存知でしょうか。
自動車メーカーなどにいた若者が、「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という車いすユーザーの言葉に衝撃を受け、障害のある人や高齢で足腰が弱くなった人が自慢でき、健常者も乗りたくなるパーソナルモビリティを作りたいという思いから、2012年に設立しました。

9月3日に発売されたウィルのモデルCライト。 森口将之
僕は会社設立前の2011年の東京モーターショーでプロトタイプに出会って衝撃を受け、すぐに取材を敢行。2014年にデビューした市販第1号車のモデルAは、審査委員を務めていた翌年度のグッドデザイン賞で、もっとも優れたデザインと認められた1件のみに贈られる、グッドデザイン大賞を受賞しました。
その後のウィルは、ニューモデルを次々に送り出す一方で、販売だけでなく空港や観光地、商業施設などでのモビリティサービスも展開。
さらには自動運転も実現するなど、テクノロジーとサービスを両立したモビリティカンパニーとして、確固たる地位を築いています。
日本より車いす人口が多く、障害のある人への理解度が高い米国を当初から主要マーケットと考えていたことも特筆すべき点で、現在は欧州や東南アジアなどにも進出しています。
そんなウィルから「ニューモデルを発表するので見にきてください」と連絡が来たので、東京品川の発表会場を訪れました。
ウィル最軽量の18.6kg
同社の製品には現在、ジョイスティックで操作するタイプと、ハンドルで操作するタイプがあります、前者はモデルC2とモデルF、シニアカーと呼ばれるカテゴリーに入る後者はモデルRとモデルSがあります。
そこに今回加わったのが、9月3日に発売されたこのモデルCライトです。

左右のパネルは違う色に交換可能。 森口将之
フラッグシップであるモデルC2のコンセプトを受け継ぎながら、バッテリーなしで18.6kgと、ウィル最軽量を実現し、折り畳みもできるようにしたものです。
価格は46万8000円から。福祉用品なので非課税で、介護保険を使ってのレンタルもあります。
実車は写真でもわかるとおり、とにかくスタイリッシュです。これはウィルの製品全般に言えることで、それまでの車いすのイメージを変えたと言えるデザインは、たしかに健常者の僕も使いたくなります。
左右の斜めの長円形パネルのおかげで、ひと目でウィルとわかるのもポイント。ブランドのアイデンティティをしっかり確立しています。
ちなみにここのパネルは変更可能で、好みの色を選ぶことができるし、着せ替えも可能です。
日本人は欧米に比べると、車いすを利用することに引け目を感じる人が多いそうですが、これならむしろ自慢できるんじゃないでしょうか。
カーボンは帝人と共同開発
中でもモデルCライトで目立つのが、カーボンファイバー素材でしょう。
一部はあの帝人と共同開発した素材を使っているそうで、軽量化と走りの良さを両立するための起用とのこと。レーシングマシンを思わせる考え方です。

帝人と共同開発したカーボンファイバー部品。 森口将之
折り畳みもしやすい。畳むときは背もたれを前に倒して、アームレストとフットプレートを格納し、後ろ側のグリップを握ってロックを解除し、持ち上げるだけ。畳んだ状態ではモーターのついた駆動輪が浮き、補助輪で支えるので、そのまま転がすことができます。
グリップの部分がライトグリーンで色分けされているのはわかりやすいし、絶妙なアクセントにもなっています。会場にはクルマも持ち込まれていましたが、たしかに軽いのでクルマに積んで、必要なときだけウィルに乗るという使い方もできそうです。
免許返納後の最右翼
試乗もしました。操作系はモデルC2と基本的に同じ。僕は2023年のジャパンモビリティショーで、会場を巡るのにモデルC2をお借りしたこともあるのでコクピットドリルは不要でしたが、初めての人でもすぐに慣れるはずです。
走り出して最初に感じたのは、安定した走行感と、しっとりした乗り心地です。フロントがコイル、リアがカーボン製リーフスプリングを用いたサスペンションのおかげでしょう。

オムニホイールと前後サスペンション。 森口将之
その仕掛けが目で見てわかるのも、メカ好きには嬉しいところ。座面の下の薄いカーボンも、たわみ効果があるそうで、限りなくクルマに近い設計思想の持ち主です。
クルマにできないアクションもあります。
その場でクルッと旋回できることはそのひとつ。こちらは特許を取得した、前輪のオムニホイールのおかげです。タイヤに10個の横向きローラーが組み込まれているので、後輪のモーターを左右で逆方向に回転させれば、『回れ右』も一発。
さらにオムニホイールは走破性にも優れていて、5cmまでの段差なら乗り越えることが可能です。
そんなウィルを見る目は、この15年間で大きく変わりました。最近は運転免許返納後のことを考えて、接するようになったのです。
それがいつになるかはわからないけれど、そのときになって慌てなくてもいいように、いまからカッコいいパーソナルモビリティをチェックしておくのは大事と考えるようになったのです。
その中でウィルは最右翼と言えます。
スタイリッシュで、メカもこだわっていて、走りを大事にしている。クルマ好きの気持ちに刺さる車いすというところは大きいと、自分なりに思っています。

