さまざまな研究結果により、「座りっぱなしの生活は健康に悪い」ということが明らかにされています。新たな研究では、座りっぱなしの時間が増えるとがんリスクが高まるものの、「座りっぱなしの時間を軽い運動で中断すること」により、がんリスクを軽減できる可能性があると報告されました。

Accelerometry-measured prolonged and interrupted sedentary behavior and cancer incidence and mortality: A cohort study of 91,292 UK Biobank participants | PLOS Medicine

https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1004767

University of Glasgow - University news - Replacing sedentary behaviour could lower the risk of cancer death

https://www.gla.ac.uk/news/headline_1277314_en.html

Just One Extra Hour of Uninterrupted Sitting Raises Cancer Risk, Study Finds : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/just-one-extra-hour-of-uninterrupted-sitting-raises-cancer-risk-study-finds

起きている間に座ったり横になったりする時間が増えることは、心血管疾患やがんなどのリスクに影響を与えることが知られています。しかし、1日を通して座りっぱなしの時間がどのように蓄積されるのか、そして座りっぱなしの時間を中断する軽い運動がどのような影響を与えるのかは、よくわかっていませんでした。

そこでイギリス・グラスゴー大学の疫学者であるフレデリック・ホー教授らの研究チームは、イギリスの大規模バイオバンクであるUKバイオバンクに参加した9万1000人以上のデータを分析しました。対象となった被験者の平均年齢は56歳で、いずれもがんの既往歴はなかったそうです。

被験者らは加速度付きのアクティビティトラッカーを7日間連続で装着し、その間の運動レベルに基づいて、行動が「座りっぱなしの行動」「軽度の運動」「中程度の運動」「激しい運動」のいずれかに分類されました。被験者らの健康状態はその後平均12年間にわたって追跡され、研究チームは被験者の行動パターンと、がんによる死亡リスクや発症リスクとの関係を分析しました。



被験者らの年齢・性別・民族・社会経済的富・教育レベル・食事といった要因を考慮に入れて分析したところ、座りっぱなしの時間が多いことはがんによる死亡リスクや発症リスクの増加に関連していることが判明。しかし、被験者が座っている時間のパターンに目を向けたところ、すべての座りっぱなしの時間が同じではないことがわかりました。

研究チームは座りっぱなしの時間を2種類に分類しました。1つは、30分以上にわたって全体の90%以上を座り続ける「長時間座り続ける行動」です。もう1つが、30分未満の座り続ける行動や、それ以上の時間でもさまざまな活動によって座りっぱなしの状態が中断される「中断される座りがちな行動」です。

分析では、「長時間座り続ける行動」が1日1時間増えるごとに、あらゆるがんの死亡リスクが9%高くなることが示されました。また、がん全体の発症リスクは3%、肥満に関連するがんと2型糖尿病に関連するがんはいずれも5%上昇しました。対照的に「中断される座りがちな行動」が1日1時間増えるごとに、がんによる死亡リスクは18%低下し、がん全体の発症リスクは6%減少。肥満に関連するがんは9%、2型糖尿病に関連するがんは10%減少しました。

研究チームは、「私たちの研究結果は、座りがちな行動が健康に及ぼす影響は座っている時間の総量だけでなく、それが長時間の連続した状態として蓄積されるか、活動によって中断されるかにも左右されることを示唆しています。このパターンは生物学的に妥当です。実験的研究によると、長時間座っている状態を短い運動で中断すると、座りっぱなしの場合と比べて代謝反応が改善されることが示されています」と述べました。

以下のグラフは、「A」が全体的ながんによる死亡リスクの変化を表したグラフで、「B」が全体的ながんの発症リスクの変化を表したグラフ。いずれも横軸が蓄積された時間、縦軸がリスクの変化を示しており、左が座りがちな時間全体、真ん中が「長時間座り続ける行動」、右が「中断される座りがちな行動」です。「長時間座り続ける行動」は増えるごとにがんによる死亡リスクや発症リスクが上昇するのに対し、「中断される座りがちな行動」は増えるごとに死亡リスクや発症リスクが低下していることがわかります。



また、今回の研究では座りっぱなしの時間のうち1時間を軽い運動に置き換えると、がんによる死亡リスクが12%、発症リスクが6%減少することが示されました。これらの軽い運動には、ゆっくり歩くことやアイロンがけ、皿洗いなどが含まれます。ホー氏は、「現在の健康ガイドラインは中強度または高強度の運動に重点を置いていますが、私たちの研究結果は、軽い運動も無視すべきではないことを示しています」と述べています。

今回の研究はあくまで観察研究であり、得られたデータからは関連性が示されているに過ぎません。そのため、「座りっぱなしの時間を中断することでがんリスクが減る」という因果関係を証明したわけではない点に注意が必要です。

その上で研究チームは、今回の研究結果はがんのリスクを決定する上で重要なのは座っている時間の総量だけでなく、座っている時間がどのように蓄積されるのか、それがどのような活動によって分断されているのかも重要であることを示していると指摘。ホー氏は、「良いニュースは、座っている時間を短い散歩などの簡単な行動で中断することが、がんから保護してくれる可能性があるということです」と述べました。