伊勢志摩や高野山へ観光列車で優雅な旅を…沿線人口減少で「新たな収益源に」鉄道各社が注力
鉄道各社が観光列車に注力している。
高級感のある内装やこだわりのグルメが楽しめるのが特徴で、関西の私鉄にも広がってきた。沿線の人口が減少する中、単なる移動手段にとどまらない魅力的な体験を提供することで、幅広い観光客を呼び込み、新たな収益源にしたい考えだ。(北野浩暉)
近畿日本鉄道は11月1日、近鉄名古屋駅(名古屋市)-賢島駅(三重県志摩市)間で、観光列車「Les Saveurs(レ・サヴール) 志摩」の運行を始める。1日1往復、週6日運行する。定員は50人。今月、専用サイトで予約の受け付けを開始した。
志摩観光ホテルの総料理長が監修したフランス料理が目玉で、伊勢エビなど沿線の食材を使った本格的なコース(3万3000~3万6000円)を提供する。価格を抑えたフレンチ膳(1万9000~2万1000円)もある。車両内のキッチンで調理する。
約8億円を投じて特急を改装した車両は、大理石調のテーブルや革張りの座席など高級感のある内装になっている。40~60歳代の女性を中心に利用を見込み、首都圏からも呼び込みたい考えだ。担当者は「伊勢志摩への優雅な旅を楽しんでもらえたら」と話す。
南海電気鉄道は4月、大阪・難波と世界遺産の高野山を結ぶ「GRAN(グラン) 天空」の運行を始めた。車内には伝統工芸品の「大阪欄間」をあしらい、朝食や昼食、アフタヌーンティーが楽しめる食事付きのプランを用意している。
鉄道ファンらからの人気を集めており、1本あたりの定員は70人ながら、運行開始から4か月間の累計乗客数は約1万8000人に達している。
観光列車が広がる背景には、乗客数の減少がある。日本民営鉄道協会によると、私鉄大手16社の2024年度の輸送人員は約96億人で、ピークの18年度から10億人近く減った。収益を維持するには沿線外からも乗客を呼び込む必要がある。
観光列車に詳しい北海学園大の藤田知也准教授(交通経済学)によると、観光列車は、JR九州が10年代に成功したのを機に他の鉄道各社に広がったという。藤田准教授は「沿線の活性化に観光列車は有効だが、列車の開発には多大なコストがかかり、十分な利益につながっているとは言い難い。常に内容をブラッシュアップし、リピーターを確保できるかが成功の鍵となる」と指摘している。
