タバコやワクチンの影響は?『腟がん』のリスクを“下げる方法”【医師監修】

腟がんのリスク因子が明らかになっている以上、日常生活の中で取り組める予防策を知っておくことはとても大切です。HPVワクチンの接種や定期検診の受診、禁煙や免疫機能を保つ生活習慣など、実践しやすい対策があります。ここでは、腟がんの原因に対応した具体的な予防的アプローチについて、一つひとつ丁寧に解説します。

監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

腟がんの原因に対する予防的アプローチ:リスクを減らすための具体的な方法

腟がんのリスク因子が明らかになっている以上、日常生活の中で取り組める予防策を知ることはとても重要です。このセクションでは、腟がんの原因に対する具体的な予防的アプローチについて、実践しやすい内容を中心に解説します。

HPVワクチン接種と性感染症予防の重要性

腟がんの予防において、HPV感染を防ぐことは非常に重要な取り組みのひとつです。HPVワクチンは、現在日本で使用されている製品として、2価・4価・9価ワクチンがあります。9価ワクチンはより多くのHPV型(7種類の高リスク型を含む9種類)をカバーしており、子宮頸がんをはじめとするHPV関連のがんに対する予防効果が期待されています。

ワクチン接種の効果は、HPVに感染する前(性交渉を経験する前)に接種した場合が最も高いとされており、早期接種が推奨されています。日本の定期接種のスケジュールでは、小学6年生から高校1年生相当の女性が対象となっていますが、定期接種の対象年齢を過ぎた方でも、自費による接種が可能です。また、2022年度からは過去にワクチン接種の機会を逃した方への「キャッチアップ接種」も実施されるようになりました。

HPV感染の主要な経路は性的接触であるため、コンドームの適切な使用も感染リスクの軽減に一定の効果があるとされています。ただし、コンドームはHPV感染を完全に防ぐものではなく、感染のリスクを下げる補助的な手段として位置づけるのが適切です。

性感染症全般への対策として、定期的な性感染症検査の受診や、パートナーとの率直なコミュニケーションも重要な要素です。性感染症内科や婦人科では、HPVをはじめとするさまざまな性感染症の検査・治療を受けることができます。

生活習慣の改善と定期的な受診による長期的な予防

腟がんのリスクを長期的に低減するためには、日常生活における健康習慣の見直しも欠かせません。特に喫煙は、子宮頸がんや腟がんを含む婦人科系のがんのリスク因子として知られており、禁煙はがん予防において有効なアプローチのひとつとして位置づけられています。喫煙によって体内の免疫機能が低下し、HPVを含むウイルス感染への抵抗力が下がることが一因と考えられています。

また、免疫機能を適切に保つためには、バランスのとれた食事、十分な睡眠、適度な運動が基本となります。免疫機能が低下した状態では、HPVをはじめとするウイルスへの感染リスクが高まり、また感染後のウイルス排除能力も低下するため、日常的な体調管理が予防の土台となります。

長期にわたるペッサリーの使用がリスク因子として挙げられていることからも、婦人科での定期的なフォローアップが大切であることがわかります。使用している器具や治療が適切に管理されているかどうかを確認するためにも、担当医との定期的な診察を怠らないことが重要です。

過去に婦人科系がんの治療を受けた方は、治療後も定期的な検診(フォローアップ)を続けることが必要です。特に放射線治療を受けた方は、照射部位の状態を定期的に確認し、異常があれば早期に対処できる体制を整えておくことが望ましいとされています。

日常的にできる予防策をまとめると、以下のようになります。

* HPVワクチンの接種(年齢・状況に応じた適切な接種)

* 定期的な婦人科検診・子宮頸がん検診の受診

* 喫煙習慣がある場合は禁煙に取り組む

* バランスのとれた食生活・適度な運動・十分な睡眠による免疫機能の維持

* コンドームの適切な使用による性感染症リスクの軽減

* 婦人科系がんの治療歴がある場合は、定期フォローアップの継続

これらを継続的に実践することが、腟がんのリスクを下げるうえで有効な手段となります。どれかひとつを完璧にこなすより、できることから少しずつ取り組む姿勢が長続きするコツです。自分の身体に関心を持ち、異常を感じたら早めに専門の医師に相談することが、腟がんを含む婦人科系疾患への最善の備えとなります。

まとめ

腟がんは、決して「まれな病気だから自分には関係ない」と言えるものではありません。知識を持ち、前兆に気づき、適切な行動を取ることが、女性の身体を守るうえで大切な一歩です。

腟がんに関して気になる症状がある方、または検診を受けたことがない方は、ぜひこの機会に婦人科・産婦人科への受診を前向きにご検討ください。自分の身体を守るための行動を、今日から始めることが勧められます。

参考文献

国立がん研究センターがん情報サービス「腟がん」

日本産科婦人科学会「子宮頸がん・HPVワクチンに関する患者さんへの情報」

公益社団法人日本産婦人科医会「女性の健康週間・がん検診啓発資料」