次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線
第25回 富山GRNサンダーバーズ・根本剛希

 根本剛希(ごうき)が右打席に入る。

 身長182センチ、体重83キロの均整の取れた体躯。ヘルメットからなびく後ろ髪。左足を高く上げてボールを呼び込み、バットのしなりを利かせるスイング。どこか既視感を覚えたのだが、あとになって若き日の坂本勇人(巨人)の姿と重なっていたことに気づいた。

 主観的な表現になってしまうが、「画(え)になる選手」は存在すると思う。根本のユニホーム姿からは、独特の色気が漂っている。


豪快なスイングが持ち味の富山GRNサンダーバーズ・根本剛希 photo by Takahiro Kikuchi

【NPB屈指の剛腕に真っ向勝負】

 そんな印象を伝えると、根本は苦笑を浮かべながらこう答えた。

「『雰囲気がいい』と言ってもらうことはあります。自分の実力、ポテンシャルには自信があるんですけど、そううまくいかないのがドラフト会議なので」

 根本は日本海リーグ・富山GRNサンダーバーズに所属する内野手兼外野手。今年10月には21歳になる。

 7月14日、CAR3219フィールド(西武第二球場)で埼玉西武ライオンズ(三軍)対日本海リーグ選抜の交流試合が実施された。根本は日本海リーグ選抜の「2番・右翼」で先発出場している。

 西武の先発投手は、高卒5年目の羽田慎之介。日本人左腕最速の160キロをマークしたこともある速球派である。そんな羽田を前にしても、根本は臆することなくバットを振った。

 1打席目は155キロのストレートをバットの芯付近でとらえた投手ゴロ。2打席目は一死三塁の好機で、155キロのストレートを強振。打球は詰まりながらも二塁手の右を抜ける適時打になった。

 試合後、根本は充実した表情で羽田との対戦を振り返った。

「真っすぐで勝負してくるピッチャーは自分も燃えるというか、怖いものなく踏み込めるので」

 そして、根本はこんな反省も口にした。

「そうじゃないピッチャーに対しても、気持ちをつくっていかないとダメですね」

 羽田が降板したあとの2打席は、いずれも変化球中心の配球に対応できず、三振に倒れた。根本という選手の魅力と課題が見え隠れする打撃内容だった。

【大学中退で一度は野球を断念】

 コアなアマチュア野球ファンであれば、根本の存在を知っているかもしれない。

 学法石川(福島)ではプロ志望届を提出したものの、指名漏れ。帝京大に進学すると、1年春から右翼のレギュラーとして活躍。いきなり首都大学リーグのベストナインに選ばれ、大学選手権にも出場している。

 帝京大の同期には履正社(大阪)の主砲として甲子園で活躍し、侍ジャパンU-18代表の4番も務めた森田大翔がいた。だが、根本は森田に対して劣等感を抱くこともなかったという。

「甲子園でホームランを打っていた選手ですけど、『負けてないな』という感じだったので。自分も全然いけるじゃんと思ってしまって」

 守備位置は異なるとはいえ、鳴り物入りで入学した森田が本来の調子を出せずにいるなか、根本は先発出場を勝ち取っている。それなのに、根本は同年の夏に大学を中退している。

「8月頃に家庭の事情で中退しました。野球をやるにもお金がかかるので、親の負担が軽減できるようにと思って」

 大学中退後は、コンビニでのアルバイトを始めた。新年度には就職することを視野に入れ、自動車免許の取得にも取り組んだ。もう野球はやめるつもりだった。

 だが、多くの関係者は根本の才能を惜しんだ。根本は「もったいない」「野球をやめるな」といった声に、心を揺さぶられた。

「中学の時の先生とか、大学の監督さんとか、いろんな人に声をかけてもらって。一番大きかったのは、親から『やってみたらいいんじゃない』と言ってもらえたこと。じゃあ、もう1回、違うステージでやってみようかなと」

 2025年3月、かねてより帝京大と縁のあった富山GRNサンダーバーズに根本は入団する。同年秋、筆者がシャピロマシュー一郎(現・オリックス)の取材で富山に行った際、永森大士総合コーチ(現監督)は「来年は根本が化けてくれると思います」と期待を寄せていた。

 入団2年目の今季を、根本は「勝負の年」と位置づけている。

 シーズンオフに根本が母校の学法石川で打撃練習をしていると、佐々木順一朗監督からこんな言葉をかけられたという。

「今年は躍動すると思うよ」

 尊敬する恩師からの言葉は、根本に大きな自信をもたらしたという。

【独立リーグでやるのは今年いっぱい】

 ところが、根本はシーズン開幕後にアクシデントに襲われる。6月上旬に扁桃炎を発症したのをきっかけに、体調不良が続いた。6月末まで試合欠場が続き、西武との交流戦はようやく状態が上向きになったタイミングだった。

 本来であれば日本海リーグで圧倒的な数字を残してアピールしたいところだが、ここまでは本人が思い描いていたほどの成績を残せていない。

 それでも、NPBのスカウトが見るのは数字だけではない。思いきりのいい打撃に加え、俊足や強肩といった高い運動能力。根本には、NPBで勝負できるだけの素材がある。そして、筆者が感じた「画になる選手」という要素を評価するスカウトもいるかもしれない。

 もし、今秋にドラフト指名を受けられなかったら、どうするのか。そう尋ねると、根本は淡々と答えた。

「独立リーグでやるのは、今年いっぱいだと考えています。やっぱり生活とか、しんどいんで。けじめもつけないといけないですから。プロになれなかったら親孝行できるように、しっかり自立しないといけないなと」

 そこまで言うと、根本は意を決したように言葉を紡いだ。

「だからこそ、今年はやりきりたいです。アピールできることをしっかりアピールして、やりきります」

 多くの人が惜しんだ才能は、花開くのか。そのユニホーム姿は、きっと華やかな舞台でこそ映えるはずだ。

菊地高弘●文 text by Takahiro Kikuchi