「糖尿病治療」における”インスリン注射の注意点”はご存じですか?医師が解説!

インスリン注射開始時に最も注意すべき低血糖の症状と対処法、シックデイや緊急入院が必要な状態について解説します。

※この記事はメディカルドックにて『「インスリン注射」が必要な”血糖値”はいくつかご存じですか?注意点も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
上田 莉子(医師)

関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

糖尿病治療のインスリン注射とは?

糖尿病の治療として、インスリンというホルモンを注射する方法が存在します。「いったん始めたらやめられないのではないか」「注射なんて怖いし、自分で刺すなんてもっとできない」など、いろいろな意見を聞くことがあります。この記事では、インスリン注射という治療法を見つめ直し、どのような方に必要か、また、継続が必要なのはどういった場合かなどを詳しく説明します。

インスリンの役割と糖尿病の治療・血糖コントロールで注射を行う目的

インスリンとは、同化ホルモンと言って筋肉と脂肪を蓄えるホルモンで、血糖値を下げる作用を持つ唯一のホルモンです。膵臓という臓器で作られており、2型糖尿病では、糖尿病を発症した時点で、糖尿病でない人の半分くらいしか自分で作ることができなくなっているといわれます。このインスリンというホルモンが枯渇した場合、一日平均4回のインスリン注射が必要です。体内から分泌されるインスリンは、血糖値が低すぎる時に減少し、高すぎる時に増加します。血糖値が変動した時にひどい低血糖や高血糖を来たさないためのクッションのような働きをしているともいえます。糖尿病の治療において、血糖管理のためにインスリンを使う目的は、主に「身体に不足しているインスリンを補う」こと、「インスリンを外から注射し、膵臓を補佐することで、身体のインスリン分泌を回復させる」ことの二点です。インスリンが発明される以前は、糖尿病は瘦せ細って死に至る病気でした。インスリン注射ができたことで、インスリンが身体から出せなくなっても瘦せて死ぬことはほとんどなくなっています。

インスリン注射はどんなケースの糖尿病で導入が検討される?

まず、1型糖尿病といって、インスリン分泌が徐々にまたは急激に枯渇する病気では、生涯のインスリン注射が必要です。1日1回の持効型という種類のインスリンと、食べる度に打つ速効型というインスリンを使用します。1型糖尿病でも、1日1回のインスリンから経過をみる場合もありますが、これはほぼ「緩徐進行1型糖尿病」という場合のみです。2型糖尿病でインスリン注射を使う場合は、インスリン分泌が枯渇していき、身体から分泌できなくなってきた場合や、薬剤をたくさん使っても十分な血糖低下を見込めない場合などが挙げられます。

糖尿病でインスリン注射による血糖コントロールを始めるときの注意点

糖尿病でインスリン注射を行う場合、注意点がいくつかあります。

インスリン注射を行うタイミングと注意点

糖尿病でインスリンを行う場合、最も注意すべきなのが「低血糖」です。インスリンで注意すべきは主に「低血糖」です。低血糖では、例えば以下の症状が出現します。

手の震え

冷汗

動悸

イライラ

異常な空腹感

こうした症状が出たときは、砂糖10gを内服してください。夜寝る前など、しばらくご飯を食べない場合、砂糖10gに加えてカロリーメイトやヨーグルトなどの、脂質やタンパク質を含む食事を行いましょう。低血糖の他には、病気になって吐いたり、下痢をしたり、食欲不振が起きたりした時(シックデイ)のインスリンの調整が注意事項として挙げられます。シックデイの時の薬剤調整については、主治医と日頃からよく相談しておきましょう。インスリンの管理に迷った際は、病院を受診して下さい。

糖尿病の緊急性の高い症状と血糖値の高さで入院する可能性について

糖尿病では、低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧状態という3つの状態で入院の可能性があります。これらは、血糖の高さ、低さ、その他の症状を鑑みて医師が診断します。こうした病気は、意識障害を伴うことが多いです。糖尿病の治療中に、意識がおかしい、もうろうとするといった場合は、必ず病院を受診してください。

糖尿病治療・インスリン注射は自己判断を中断せず必ず医師と相談を

インスリン注射を含め、糖尿病治療を中断すると、1型を含む進行した糖尿病では24時間以内に救急車が必要な状態になる場合があります。また、糖尿病治療を自己中断すると、ゆくゆくは症状が強くなりまた受診される方が多いのですが、その際には糖尿病が悪くなり、治癒しない合併症が出たり、インスリンが必要でなかった場合でもインスリン注射が必要になったりします。どんなに億劫でも、内服薬が抜けることがあっても、病院受診はなんとしても続けるようにしましょう。

「インスリン注射と血糖値」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「インスリン注射と血糖値」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

血液検査でHbA1cが高く糖尿病の診断が出たら必ずインスリン注射が必要なのでしょうか?

上田 莉子(医師)

インスリン注射の必要性は担当医が総合的に判断します。最近は良い内服薬や週1回の注射薬なども出てきているため、HbA1cが高いだけでは必ずしもインスリンが必要というわけではありません。

糖尿病でインスリン治療を始める明確な基準値は決まっているのでしょうか?

上田 莉子(医師)

2型糖尿病では明確な基準値はありませんが、尿検査や血液検査をみて医師が総合的に判断します。1型糖尿病では基本的にインスリン注射が必要です。

糖尿病は完治しないと聞きましたがインスリン注射で安定的な血糖コントロールは可能ですか?

上田 莉子(医師)

糖尿病が進行し、膵臓からインスリンを出す力が枯渇した場合は、インスリン注射を用いても血糖値が乱高下することが知られています。しかし、2型糖尿病の適切な時期から、インスリン注射を1回からでも開始することで、膵臓のインスリン分泌を助けることができます。これにより、インスリンの枯渇を防ぐことができると考えられているのです。インスリンを用いるとしても、用いないとしても、糖尿病は、継続的な治療が大切です。

まとめ

この記事では、糖尿病やインスリンの適応などについて説明しました。糖尿病では、膵臓から分泌するインスリンが枯渇しないように、内服薬やインスリン注射を用いて継続的に治療することが大切です。糖尿病は「困らないことに困る病気」と言われています。自覚症状がないゆえに放置してしまうと、病気が進行して脳梗塞や足切断に至る感染など取り返しがつかない状態となり後悔する可能性があります。「困っていない」時期に、しっかりとした治療が必要です。食事運動含む治療は多少さぼってしまっても、絶対に病院受診は継続してください。

「インスリン注射と血糖値」の異常で考えられる病気

「インスリン注射と血糖値」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

循環器系

心筋梗塞狭心症

整形外科の病気

整形外科系

足壊疽

腎臓系の病気

腎臓系

腎不全

糖尿病腎症

眼科系の病気

眼科系

失明

糖尿病網膜症

神経系の病気

神経系

糖尿病性神経障害

糖尿病の合併症は多岐にわたります。合併症が出現しないように、進行しないように、治療を続けましょう。

「インスリン注射と血糖値」に関連する症状

「インスリン注射と血糖値」に関連する症状は7個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

意識障害

もうろうとする

多尿

多飲

口渇

夜間頻尿

痩せ

糖尿病は症状に乏しいですが、高血糖をきたすと口渇や多飲、多尿などある一定の症状をきたします。意識状態がおかしいときは、必ず病院を受診しましょう。

参考文献

日本糖尿病学会. 糖尿病ってどんな病気?

妊娠糖尿病|日本内分泌学会

1型糖尿病|日本内分泌学会

緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)|日本内分泌学会

2型糖尿病|日本内分泌学会