「性的な意図の撮影は分かる」アスリートの盗撮被害は“法の抜け穴”状態?「規制される世の中になってほしい」現役女子選手が実名&顔出しで訴え…「性暴力」と定義する県も

アスリートが競技で成績を伸ばすために努力を重ねる一方で、競技中の盗撮や、望まない視線を向けられる悩みが深刻な問題となっている。選手自身が気づかないうちに撮影され、性的な意図を持って拡散される被害が後を絶たない。
ニュース番組『わたしとニュース』では、アスリートの盗撮問題やその規制のあり方について、弁護士の三輪記子氏とともに考えた。
■「性的に撮っているかいないかは分かる」一方で、エゴサーチは避ける現実

S&B SPICE所属の泉谷莉子選手(陸上・七種競技)は、自身の競技中の盗撮被害について、「競技中に関しては気づけない」と語る。一方で、「盗撮があるのも事実ですし、身近な選手がそういう被害に遭ったというのも聞いたことがある」と実態を明かす。
泉谷氏は、自分が競技をしている写真や映像を見ること自体は好きだと話すが、心理的な影響を受ける投稿を避けるため、SNSでのエゴサーチは行わないようにしているという。
「撮ってくださっている方の写真やアングルは、性的に撮っているかいないか、受け取り側からしたら分かる。本当に格好よく競技を撮ってくれてるんだな、写そうとしてくださったんだな、というのが分かるし、自分もそれが魅力だと思っている。そこからファンになって、自分の人間性や活動の内容、結果などを応援するようになったと言ってくださる方がいるので難しい」(泉谷氏)
しかし、性的に撮影して拡散し、利益を得ようとする行為に対しては、「いなくならないのは分かっているが、それでも例えば刑事処罰できるくらいの制度や、よほどひどいものは選手たちが被害届を出して、それが規制されるような世の中になればいいなと」と法的な規制を求めている。
実名かつ顔出しで取材に応じることについては、ネットで批判されるリスクを自覚しつつも、自身がコーチを務めていることもあり、「当事者が声を上げないと匿名で好き勝手にあることないこと言われるのが自分の性格上本当に嫌なので。だから表に立って取材を受けさせてもらっている。この活動で次世代の子たちを守れるとは思っていないが、その子たちのために声を上げていこうと思っている」と思いを述べた。
これに対し三輪氏は、「当事者の方のリアルな気持ちがすごくよく分かった。性的に悪質な意図を持って撮っている人とそうでない人は分かるというのは、全ての撮影を悪いと思っているわけではなく、自分の魅力を伝えてくれる人がいることへの嬉しい気持ちもお持ちなのだと分かった。一律に撮影を禁止できない理由はそこにある」と指摘した。
一方で、「悪質な意図を持って撮影する人、あるいはそれを拡散して利益を得ている人がいる問題もある。これは撮る人の問題であり、放置・拡散に間接的に加担しているプラットフォーム(SNSの運営会社など)の問題でもある。法律だけでなくプラットフォーム側をどうするかという観点もあり、被害届をどこに出すのかも含めて工夫の余地はある」と述べた。
また、アスリートの競技以外の発信についても「アスリートも一社会人として、この社会に起きている問題、自分が当事者になる問題について、本当に喋りたい気持ちがあるならどんどん発信していけばいい」と支持を示した。
■撮影罪の対象外も「無法地帯ではない」現状の法的アプローチと自治体の定義
アスリートへの盗撮をめぐる日本の法規制について、2023年7月には正当な理由なく胸や下半身などを撮影する行為を処罰する「撮影罪」が施行された。しかし、ユニフォーム着用状態での撮影であるため処罰の対象にすることが難しく、アスリートへの特定の盗撮は現時点で規制の対象外となっている。
三輪氏は「法技術的にアスリートの盗撮を特別に取り上げて条文にすることは困難であるため、対象外という整理でいい」としつつも、「都道府県の迷惑防止条例や、テレビ局の映像を加工してアップする行為への著作権法違反、場合によっては名誉毀損や侮辱罪が成立することもある。撮影罪の範囲に入っていないだけで、他の方法で処罰すること自体は不可能ではない」と述べ、決して無法地帯ではないことを説明した。
また、2025年6月に成立した「改正スポーツ基本法」では、国や自治体がアスリートへの盗撮を含む性的な言動に対し必要な措置を講じる義務が明記された。福岡県や茨城県、三重県などでは、条例に罰則はないものの、アスリートへの盗撮などを「性暴力」と定義し、県に根絶を目指す施策の実施責務を定めている。
この動きについて三輪氏は、「まずはアスリートへの盗撮が『性暴力』だと定義していくことはすごく大きい。罰則がないことで実効性がないと思われがちだが、撮影している人に対して『都道府県によっては性暴力と判断されること』と言えるようになる。名前がつくのはすごく大事なことなので、まずはスタート地点」と評価した。
■欧州の撮影ガイドラインに見る、当事者との「対話」によるルール作り
海外では、競技中継の放送ルールそのものを見直す動きも出ている。ヨーロッパの放送連合は、女性アスリートを中心とした話し合いを経て、今年6月に新たなガイドラインを発表した。
そこでは、走り高跳びや棒高跳びの際、選手の下から低い角度でカメラを向けることを避けること、選手の体の特定部位を長時間クローズアップで捉えないこと、不要なスローモーションやリプレイ映像の使用を控えることなどが定められ、不要な性的対象化から選手の尊厳を守る方針が打ち出されている。
このガイドライン作成のプロセスについて、三輪氏は「ルール作りとは『対話』だ。規制してほしい人と、その規制が本当に可能か、あるいは誰かの権利を侵害しやすい立場にいる人が『ここまではやらせてくださいよ』といった様々なせめぎ合いがある。その中で当事者が何を嫌がり、何をされると侵害的だと感じるかを聞いて、それに応じていくルール作りのあり方は素晴らしい」と語った。
また、日本における今後の対応についても「表面的なルールだけをどこかから持ち込むのではなく、対話をしてルールを作っていくのが非常に良い。極端な議論にならないように調整していくことが必要だ」と提言した。
(『わたしとニュース』より)
