最大震度7を観測した2026年熊本地震の震源断層「日奈久(ひなぐ)断層」は、2016年熊本地震の震源断層でもありました。この時は、「日奈久断層」と「布田川断層(ふたがわ)」の2つが動きました。今回の地震発生前、国の地震調査研究推進本部(地震本部)は「日奈久断層」を、最も危険性が高い「Sランク」としていました。Sランクの活断層は全国に32カ所あります。今回は、中部エリアにあるSランクの活断層と、その下のAランクの活断層を紹介します。地震本部が2026年8月28日に発表した新しい評価で、東海地方にかかわる2つの活断層がSランクにランクアップしています。

活断層のランク

地震調査委員会は「活断層による地震」や「海溝型地震」ついて、過去の記録や調査結果から発生確率を計算して発表しています。基本的に「同じ場所で同じような地震がほぼ一定の間隔で繰り返す」という考えに基づいています。

しかし、「発生確率の数字が何を意味しているのかが分からない」という声もあることから、地震本部は発生確率に基いて決めた「ランク」も合わせて発表しています。活断層のリスクを正しく理解し、適切な防災・減災行動につなげてほしいとの思いからです。

普段、海溝型地震の発生確率、例えば「南海トラフ地震の発生確率は向う30年間で60~90%」という数字に接しているので、活断層による地震の発生確率を見ると「なんだ。大丈夫じゃん!」と思ってしまいます。

海溝型地震は数百年に1度のサイクル、活断層による地震は5000年~1万年・数万年に1度です。ですので発生確率を計算すると小さな数字になります。因みに1995年阪神・淡路大震災の直前の発生確率は0.02%~8%、今回の熊本地震を起こした日奈久断層(日奈久区間)の地震発生確率は、ほぼ0%~6%でした。

数値が小さくても侮ってはいけません。

東海地方にある主要な活断層

地震本部の資料に基づき、愛知県、岐阜県、三重県にあるSランク(高い)とAランク(やや高い)の活断層を紹介します。(※地震発生確率は30年以内)

(1)

S:高山・大原断層帯(国府断層帯)

【予想規模】M7.2程度 【発生確率】ほぼ0%~5%

A:高山・大原断層帯(高山断層帯)

【予想規模】M7.6程度 【発生確率】0.7%

(2)

S:阿寺断層帯(主部/北部)

【予想規模】M6.9程度 【発生確率】6%~11%

(3)

A:屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯(屏風山断層帯)

【予想規模】M6.8程度 【発生確率】0.2%~0.7%

(4)

A:屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯(恵那山―猿投山北断層帯)

【予想規模】M7.7程度 【発生確率】ほぼ0%~2%

(5)

A:屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯(加木屋断層帯)

【予想規模】M7.4程度 【発生確率】0.1%

(6)

S:木曽山脈西縁断層帯(主部/南部)

【予想規模】M6.3程度 【発生確率】ほぼ0%~4%

(7)

養老-桑名-四日市断層帯

S:北部区間

【予想規模】M7.4程度【発生確率】ほぼ0%~4%

S:中部区間

【予想規模】M6.9程度【発生確率】0.04%~14%

A:南部区間

【予想規模】M7.1程度【発生確率】2%

A:鈴鹿沖区間

【予想規模】M6.8程度【発生確率】 0.4%~0.6%

(8)

A:伊勢湾断層帯(白子―野間区間)

【予想規模】7.0程度 【発生確率】0.1~6%

(9)

A:頓宮断層帯

【予想規模】M7.3程度 【発生確率】1%以下

(10)

A:布引山東縁断層帯

【予想規模】M7.3程度 【発生確率】ほぼ0%~2%

日本には約2000の活断層 未知の活断層も

日本には、約2000の活断層があります。この中の主要なものについて地震本部はS、A、Z、Xのランクづけをしています。Zランク・Xランクの活断層だからと言って油断できないことは、冒頭の表のXランクの解説欄に「すぐに地震が起こることが否定できない」と書かれていることからも分かります。

さらに未知の活断層もあります。ですので、生活圏に既知の活断層が無いからと言って、「地震への備えをしなくても大丈夫」というわけではありません。「どこでも地震・災害が起こる可能性がある」と考えて暮らす必要があります。

<どうすればいいのか?>

「建物の耐震対策」「部屋の耐震対策」「食料・飲料水の備蓄」「非常持ち出し袋の準備」「避難先の確認・連絡方法の確認」など、いつも紹介している「防災、減災対策」を行うことしかありません。継続的な地道な行動・作業が、被害を減らす一番の近道です。

被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕

東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。