「女のお笑いって、びっくり箱みたいなもの」下ネタでブレイクした女性芸人が明かす、男性芸人との決定的な違いと「地上波で下ネタは無理」でも気にしないワケ
〈「吐き気よりオモシロが勝ったら出す」女性芸人が語る“令和の下ネタ論”…「おもしろくない」批判より怖いのは「親にネタを見られること」〉から続く
「ちんこと言えばちんこと返ってくる」。下ネタコントでブレイク中の男女コンビ・ニッキューナナのこっちゃん選手は、下ネタと客の関係を「やまびこ」と表現する。
【画像】「中毒性やばい」「モザイクだらけ」YouTubeから収益化停止された“下ネタコント”を見る
自分が面白いと思った下ネタで引かれるのが悔しい。どうにか笑わせたい。しかしそこに立ちはだかる「下ネタで地上波は難しい」「女の笑いって面白くない」という壁。こっちゃん選手はその壁をどのように乗り越えようとしているのか。(全3本の2本目/つづきを読む)

こっちゃん選手 ©︎石川啓次/文藝春秋
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「下ネタがつなぐ思いやり」がYouTubeにはある
--最初の頃に作ったネタと現在の下ネタには何か変化はありますか。
こっちゃん選手 特には変わってない気もするけど、ボキャブラリーが増えたくらいかな。あの手この手になってきた感じはあります。ちょっと複雑にしてみたりとか。
--下ネタをやっていたら地上波に出れないと言われることは?
こっちゃん選手 でも、テレビに出たいなって思ったら、こっち側からアプローチする、それ用のネタを作ればいいと思ってるので。別にそこまで地上波のために根本から変えるということはないかもしれないです。
--YouTubeはいつから始められたんですか。
こっちゃん選手 6年前ですね。「ちんこ」「おっぱい」みたいなことから始めて、現在も「ちんこ」「おっぱい」みたいなのを上げてる感じなんですけど。単独ライブで私たちが下ネタをやって、お客さんが笑ってくれるのはすごいありがたいな、楽しい空間だなって思います。「ここが理想郷だったんだ」というか。下ネタがつなぐ思いやりのような、YouTubeでもそういう循環があるんですよ。
コンプラに厳しくても、下ネタで笑う人は多い
--ニッキューナナさんはTikTokでもすごく人気ですが、今の若者と下ネタってどういう関係にあるのでしょう。
こっちゃん選手 どうなんだろう……密接な関係にあるんじゃないでしょうか。若い子もやっぱり感性は一緒で、下ネタで笑う人は多い感じがします。街で若い子から「おもしろかったです」って声をかけられることもあって、何のネタ見てくれたのって聞くと「(小声で)セックスの……」「おな、オナニーの……」って。「ありがとうございました」みたいな感じでこそこそっと言ってくれるんですよ。
--若者の性離れが叫ばれる中で、若者も下ネタに興味があるし、見てますって言える。ニッキューナナさんの下ネタは希望ですね。
こっちゃん選手 ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。たまにゲロ出るんじゃないかなっていうネタもちゃんとあります。私の中でせめぎ合ったやつ。本当にギリギリおもしろさが勝ったから出してるけど。
「日本のお笑いの始まりも下ネタだったんだ」
--あえてそこもちゃんと残したい感じですか。攻めたネタもやりたい?
こっちゃん選手 そこまで考えてはないですね。「今回は攻めちゃいました、みんなのライン超えると思います」みたいな感じでネタ出すのもめっちゃおもしろいですけど、やっぱり自分がおもしろいと思ったかどうかっていうところが軸になるのかな。
私が大好きなエピソードがあって、日本神話でアマテラスが天岩戸に入ったとき、アメノウズメが全裸で踊って、爆笑を起こして、結果的にアマテラスが天岩戸から出てきたっていう。芸能の神が裸で踊って、爆笑が起きるって、日本のお笑いの始まりも下ネタだったんだって思いました。日本に根付いてるお笑いって下ネタなんじゃないかって。
--結局裸で踊っているのが一番おもしろいっていう。
こっちゃん選手 今も昔もそうなんですよね(笑)。
自分の好きなことで生活をしていきたい
--こっちゃん選手さんは「売れる」というのをどれぐらい意識されてきましたか。
こっちゃん選手 私たちが小さい頃は、テレビにめっちゃ出るのが売れるっていう感覚だったと思うんです。今は当時よりいろんな媒体がありますけど、結局「売れる」っていう言葉はテレビに出まくることのような気がします。難しいな、売れる……。
--いつか大金をつかんでやるみたいな野心や目標があって芸人を続けられてきたのか。それとももっと別の目的があったのか。
こっちゃん選手 昔から目立ちたがり屋だし、すごい人気者になりたいっていうのはもうずっと念頭にあって。でも一番は、自分の好きなことで生活をしていきたいっていう感覚ですね。お笑いもずっとやっていたいし、漫画も好きなので、漫画を描く仕事もできたら嬉しいなとか。
--芸人一筋というよりは、自分が興味があることを続けていける環境を求めている。
こっちゃん選手 そうですね。でもたぶん芸人はずっとやっていたいかもしれない。ライブで大声出すのも楽しいし、コントを考えてそれを形にして、みんなに見てもらうのもすごく楽しいので。でも私、全然テレビも好きだし、自分が輝ける場所があるなら出たいなっていう気持ちはあって。自分が輝けるのであれば、全然ドラマとか雑誌もやりたいし。
--そうなると、地上波がもうちょっと女性の下ネタに慣れなきゃいけないかもしれませんね。
こっちゃん選手 でも、下ネタ全然ダメって言われてるところで、下ネタ言うのもおもしろいんですけどね~。
男女コンビは“男と女のケンカ”がすごい
--男性芸人、特に先輩の方々は女性の下ネタを喜びますよね。自分たちが奪われた武器を若手の女子がぶん回してる感じというか。
こっちゃん選手 ある程度の地位を確立すると難しいのかもしれないですよね。いろいろ考えちゃうんでしょうね。別に必ずしもこの言葉で言わなくてもいいしという、選択肢が増えていくから。
--男女コンビの難しさを感じることはありますか? 付き合ってるんじゃないかっていまだに言われたり。
こっちゃん選手 全然あります。でももう気にしてないですね。女の子と男の子がいたら一番最初に浮かぶことってそれでしょうし。もうそれはデフォルトなんだなと思って過ごしてます。男女コンビでネタをやること自体は全然難しくないんですけど、それよりも“男と女のケンカ”がすごい。
--ネタづくりではなく?
こっちゃん選手 私たちはありがたいことにおもしろいと思うことが一緒なので、ネタで揉めることはほとんどなくて、ほぼネタ以外でのケンカですね。私がめっちゃダイエットしてたときに、峯がテーブルにだるそうに肘ついて「うーん」みたいな相槌をしてきたんですよ。それに私がイラッとして、「肘!」みたいな。
男と女の感覚のズレは「ネタに使えるかも」
--男女だからこそ遠慮しないで言ってしまうのかも。
こっちゃん選手 結構バチバチにケンカすることも多いです。全然寝ればリセットなんですけど、お互い。男と女のケンカって、違いがおもしろいんですよね。男の感覚と女の感覚の違い。そういうズレを「これネタに使えるかもな」と思ったり。
--例えばどんな?
こっちゃん選手 男性のお笑いって、割とロジカルじゃないですか。私はそれが嫌なんですよ。お笑いを1個1個解剖したり、「このボケがあったからここのツッコミ効いてくんねん」みたいなのが。男の人はどちらかというと、段階的に積み重ねていく笑いが好き。でも女性のお笑いって本当にびっくり箱みたいな、何が出てくるか分かんない感じだと思うんですよ。私的にはそれがすごくおもしろくて。だから女性のびっくり箱に、男性のロジカルな部分が加わったら、めっちゃおもしろいネタになる。それがあるから男女コンビでのネタ作りって意外に楽しいのかなって思います。
エロ考察、下ネタ考察してほしいです(笑)
--びっくり箱って確かにそうですね。
こっちゃん選手 『女芸人No.1決定戦 THE W』とかも、もう全部びっくり箱すぎて、マジでおもしろくて好きです。女って突拍子もない。お笑いってほんと解剖するだけ損で、分析とかやめてよって思う。お笑いって「何か分かんないけどおもしろい」で良くない?みたいな。
--わかります。ファンとしても「◯◯が好きな人ってこうだよね」みたいに分析されるとサッと冷める。
こっちゃん選手 名前つけなくていいよ、みたいな。でも『M-1』のような競技になってくると、それはしょうがないかもしれない。基準があるから。
--ニッキューナナさんの下ネタも、考察されるファンの方はいらっしゃいますか?
こっちゃん選手 下ネタの考察、おもしろい! ちょっと聞きたいですね。だって私たちマジでなんも考えてないのに。エロ考察、下ネタ考察してほしいです(笑)。
--もし女性とコンビを組んでいても、同じような下ネタをやってたと思いますか?
こっちゃん選手 今の脳みそで考えるからやってたような気もしますけど、女の子と組んでたら漫才やってたかな。でも結局、組んですぐに私から下ネタを提案しちゃってるから、そういう要素は入れたかもしれないですね、スパイスとして。
漫才やりたいって思うときもあるけど…
--漫才への未練はないですか?
こっちゃん選手 全然やりたいって思うときもあるし、やろうと思うときもありますけど、でも今はコントのほうが楽しくて、コント大好きなんで、全然未練はないかもしれない。
--どういうところにコントの魅力を感じますか?
こっちゃん選手 世界観に入り込めるところでしょうか。ぱっと見て、どういう情景でどういうことがあったのか、顔の表情から感情を読み取ったりとか、没入できる。主婦の役だったら、こういうふうに言うかな、コンビニの店員だったら……とか。そうやってネタを組み立てていくのが楽しくて。
--演技が下手だったとおっしゃっていましたが、そこを乗り越えた瞬間ってあるんですか?
こっちゃん選手 乗り越えた瞬間は……もういいかなって思って。別に下手ならもう下手で、そういう人間として見てもらおうと。
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(西澤 千央)
