《もしも豪雨の被害に遭ったら…》避難する際に心がけておくべきこと「マンションの低層階なら早めに」「運転中なら安全な場所に停車して徒歩で」…事前の備えが命を守る
日本各地で豪雨が相次いだ8月。そのたびに「直ちに命を守る行動をとってください」と警鐘が鳴らされたが、痛ましい惨事となってしまった。9月になってからも、安心できものではない。では、水災などの災害にあった場合、どのように避難すればいいのか。注意すべきことを紹介する。【前後編の後編】
【写真】腰まで水が迫る中、住人の救助活動を続ける消防隊員(富山県氷見市)など。他、命を守る防災情報ツール5選なども
浸水が起きたら「垂直避難」
では実際に避難する際、注意すべきことは何か。まずは「避難のタイミング」だ。危機管理教育研究所代表の国崎信江氏が、過去の痛ましい事例を挙げてこう解説する。
「2019年10月の台風19号では、神奈川県の武蔵小杉周辺が内水氾濫で大きな被害を受けました。当時はタワーマンションの設備被害ばかりが注目されましたが、同じ川崎市内の高津区では、あふれた川の水に浸かったマンションの1階で、60代の男性が亡くなりました。
浸水が始まると水圧でドアが開かなくなります。2階建ての戸建てであれば自宅の上階への"垂直避難"ができますが、マンションの1階では、部屋から出られなくなると上の階へ逃げられません。マンションの低層階に住む人は、冠水が始まる前の早めの避難を心がけてください」
国土交通省によれば、浸水深が50㎝(ひざ上)を超えた場所での歩行避難は極めて危険であり、流れが速い場合は20㎝程度の冠水でも歩けなくなるとされている。内閣府の指針でも、冠水がひざ上に達した場合には無理に避難所へ向かわず、上の階へ移る垂直避難に切り替える方が安全とされる。ただし土砂災害の危険がある場所では、家に留まること自体が危ない。
一方、戸建てであっても上階への垂直避難が阻まれてしまったケースがあるという。国崎氏が続ける。
「室内に水が流れ込んでくると、ソファや冷蔵庫といった大型の家具や家電でさえ水に浮かびます。実際、浮いた家具が移動して階段へのルートをふさいでしまい、2階へ逃げ遅れて溺死してしまった事例もあります。事前に固定器具などを活用して、大型家具を上下に固定しておくことが対策のひとつです」
移動中に豪雨にあったらどうするか
千葉豪雨では放置車両が約2700台に上ったうえ、冠水した道路で車に閉じ込められるなどして亡くなる人が相次いだ。防災システム研究所所長の山村武彦氏が、強く警戒を呼びかける。
「運転中に大雨警報などを確認したら、すぐに近くの安全な場所に車を止め、徒歩で避難してください。運転中は"早く帰りたい""車内なら大丈夫"といった心理から車を降りる判断が遅れがちですが、非常に危険。車は思っている以上に水に弱く、水深30cmほどでエンジンが止まります。床下の配線が冠水でショートすれば、窓が開かなくなることも。水圧でドアも開かず、閉じ込められたまま浮いた車ごと流されてしまう可能性もある」
電車に乗っているときに豪雨に見舞われたらどうか。
「駅や車内にいる場合は、基本的に駅員や鉄道会社の指示に従うべきでしょう。特に地下空間では、どこから水が入ってきているのか、どの出口が安全なのかを自分だけで判断するのは難しい。地上へ出た後も、"電車が止まったから歩いて帰ろう"と考えて冠水した道路へ入ることは危険です。しばらくは駅周辺の一時滞在施設など安全な場所に留まってください」(防災アドバイザーの岡部梨恵子氏)
濁った水で地面が見えないなかを歩く場合は、傘など棒状のもので足元を確かめながら、一歩ずつ慎重に進みたい。
「私は常々、"互近助"という考え方を提唱しています。同じ地域で同じ災害に遭ったら運命共同体です。もし避難の際に近くで歩いている人や立ち往生している人がいたら、声をかけ合ってほしい。1人で逃げるよりも2人、3人の方が情報交換ができたり、手を引いて助け合うこともできるので安心にもつながります」(山村氏)
命の危険は、すぐそこに迫っている。いまのうちに、ハザードマップで避難する道を確かめ、予測ツールをチェックし、逃げるルートを決めておきたい。その事前の備えが、あなたと大切な人の命を守る。
(前編を読む)
※女性セブン2026年9月17日号
