梅宮辰夫から「お前か、俺の顔好き勝手使ってるやつは」と…ロバート秋山と梅宮アンナが語る、空気が凍った“初対面の真相”と大スターの神対応〉から続く

 梅宮辰夫の「体モノマネ」で一世を風靡したロバートの秋山竜次さん。今年の6月にがん闘病と家族の日々を綴った書籍『フルコース』を出版した梅宮アンナさんとのスぺシャル対談では、梅宮辰夫の豪快すぎる武勇伝と家族への細かすぎる愛情話が次々と明かされました。

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梅宮アンナさん

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梅宮辰夫を悪く言う人が誰もいない

秋山竜次さん(以下、秋山) 特に僕らの世代からすると、やっぱり『仁義なき戦い』のイメージが強い。画面の中からでも伝わってくる凄みがありましたから。

 うちの親父が梅宮辰夫さんが大好きで、任侠映画も大好きで。だから、オーラのあるスーパースターで、近寄りがたい怖いイメージで入り口は接したんですけど、まあ、いざ会うと、こんなに優しい人いないだろっていうぐらい。本当に優しいんですよね。

梅宮アンナさん(以下、アンナ) ほんとに優しい。みんなよく「梅宮辰夫って本当は怖いの?」とかって聞くけど、もちろん私には父親としてすごい厳しかったけど、他人様にはね。あんなに優しい人いないんじゃないかなって思う。家では雷親父でしたけど、一歩外に出ると仏様みたいでしたから。

秋山 梅宮さんの周りの方、俳優さんとかスタッフさんとかにお会いしてお話しするんですけど、悪く言う人、本当に誰もいないんですよね。

アンナ 珍しいよね。この業界、大体みんなほら、人のいいこと言わないじゃない(笑)。

秋山 でも、梅宮さんの話になるとみんな「いやー、辰っちゃんはなぁ」って良い話しか出てこない。みんな本当に嬉しそうに話すんですよ。結果、若い頃のやんちゃな部分も全部含めてかっこよすぎるっていうか。男として憧れるな、みたいな。

アンナ 生きているものに対してものすごい愛情を注ぐ人だったから。人に対しても優しいし、動物に対しても植物に対しても、みんな全部同じ態度、同じ対応なんだよ。命あるものすべてに平等。虫一匹も殺さないような人でした。

秋山 人間以外にも、ですか。

アンナ うちのベランダに観葉植物がたくさんあったんだけど、それ全部父親のもので、毎朝1個1個に話しかけてんの。「おはよう。今日は水やるからな」とか。

秋山 え、マジっすか。植物に話しかけるんですか。あの梅宮辰夫が? あのドスの効いた声で「おはよう」って?

アンナ 「元気か?」って。そんな感じなの。うちで飼ってたワンちゃんに対してもそうだったし。トリミングに連れていくのも全部自分で、1匹1匹、トリマーさんのところに行って、「この子は耳を1センチ切ってください」とか、「こっちは丸刈りで」とか、全部自分で細かく指示を出しに行ってた。トリマーさんへのこだわりもすごくて。

秋山 自分で言ってるんですか。あの梅宮さんが、トリマーさんにセンチ単位の指示出すって、想像つかないですね。

「僕がやります」イボ痔手術後の娘を想う父の奇行

アンナ 今年の6月に『フルコース』っていうがんの闘病と家族の日々を綴った本を出したんです。ここにね、父がどんなにおかしくて、どれだけ愛情深い人だったかっていうことが書いてあるんですよ。基本家族愛の本なんですけど。例えば、私、若い頃にイボ痔になったんですけど、それも包み隠さず書いてある。

秋山 え、いいんすか、そんなにさらっと。すごい話の入り方ですね。いきなりトップギアじゃないですか。

アンナ 手術したんですけど、術後が結構大変で。傷口が変にくっついちゃいけないから、毎日消毒して、金属の棒を入れられるのね。

秋山 マジっすか。お尻の穴のとこに? うわー、痛そう。想像しただけで鳥肌立ちました。

アンナ 外来で毎日通院して、先生がステンレスの棒を入れるんです。その棒が、日を追うごとにだんだん太くなっていって。

秋山 イボ痔ってそんな大変なんだ。初めて知りました。壮絶な治療ですね。

アンナ で、ちょうどそのとき家族でハワイに行く予定があって。でも私、もう無理だと思ったの。毎日通院しなきゃいけないから。パパに「ごめん、今回はハワイ行けないから」って言ったら、もう大変ですよ。「なんでだ!」って烈火のごとく怒って。どうしても私と行きたい、家族全員で行きたいっていう人だから。

秋山 治療を中断するわけにはいかないですよね。

アンナ そうなんです。先生が毎日棒を入れなきゃいけないからダメって言ってるよって言ったら、うちのパパは「分かった」って言って、なんと先生のところへ自ら行って、すごい真剣な顔で「先生、その棒の入れ方を私に教えてください」って。

秋山 え、お父さん自ら「俺がやるからハワイに連れていく」って? 

アンナ そう。「僕がやります。僕がハワイで娘にやりますんで、やり方を教えてください」って。私、隣で聞いてて凍りついちゃってさ。信じらんないと思って。お医者さんも「えっ……」って固まってましたよ、そりゃ。完全に思考停止してました。

秋山 ハワイのホテルで、あの梅宮辰夫が娘の尻に棒を……。

アンナ やらせるか馬鹿野郎って感じじゃないですか(笑)。でも、それぐらい、もうほんとに娘を愛してるんだよね。常識とか世間体とか、そういうのを全部飛び越えちゃう。

秋山 いや、最強のエピソードですよ。そんな話、まだ残ってたんですか。俺、結構いろんな話を聞いたつもりでしたけど。底が知れないですね、梅宮さん。

アンナ こんな恥ずかしいこと私言ったことないからね、世の中に。でも、こういう話がいっぱい本にはありますよ。

 私が中学のときに初めて男の子とデートした時も、尾行されて。渋谷の109で待ち合わせしたんですけど、うちのママに車を運転させて、自分は後部座席でこうやって双眼鏡で私を見てたっていうんですよ。後から母に聞いてゾッとしました。

秋山 マジっすか。やってること探偵じゃないですか。完全に刑事ドラマの世界ですね。自分が一番怪しいですけどね。

アンナ ね、そうだよね。周りから見たら完全に不審者。

秋山 いやでも愛情ですよね、結局。心配で仕方ないっていう。お弁当とかも、ずっと作ってたんですよね。

アンナ そうだよ、中学1年生から高校3年生まで、6年間毎日。一度も休まずに。

秋山 考えられないですよ、ほんとに。あの梅宮辰夫が毎朝早起きして。しかも、食べやすいように海苔を小さく切って四角く散らしてくれたり。1枚ベロンと貼っちゃうと、噛み切れなくて全部持っていかれちゃうからって。いやー、あの豪快なイメージからは想像もつかない繊細さ。優しさの塊なんだよな、結局。

テレビに噛みつき、娘を叱る「日記」

秋山 俺、こないだマジで泣きそうになって。アンナさんの家に行ったロケで読ませていただいた日記、あれはもう正直、ちょっとやばかったですね。魂が揺さぶられるというか。笑えるのに、なぜか泣けるんです。

アンナ あれねー。こないだ秋山さんがうちにロケ来たときに、うちのパパが晩年に書いてた日記をちょっとこう朗読してもらったときに、やっぱりこれは世に出さなきゃだめだなってすごい思って。父の生きた証として、残すべきだなって。

秋山 笑えるし、なんか昭和の男の生き様みたいなものも全部詰まってるんですよね。毒舌も愛情も、全部が凝縮されている。スーパースターが日々テレビを見てるときに感じたこととか。なんなら、僕の芸人の先輩の不倫も痛烈にいじり倒してたし。

アンナ そうそう。テレビ見て芸人さんに向かって、「なんでお前が出るんだ」っていうことをずっと言うわけよね。「お前なんかちっともおもしろくないんだ」とか。1人でテレビにツッコミ入れてるんです。

 もう今のテレビは世も終わりだみたいなことをいつも言うからさ、「そんなに文句があるんだったら見なきゃいいじゃん」って言うんだけど、でも結局ずっと見てるんだよね。

文章から滲み出る愛情

秋山 テレビが大好きなんですかね、結局は。

アンナ 大好きなんだと思う。通販番組に昔の女優さんとかが出てくるとすごいショックを受けてて。「こんなのに出ちゃいけないんだ」とか「プライドはないのか。だめだぞ、こんなの出ちゃ」みたいなことをすごい言ってたし。スターはスターらしくあれ、みたいな。テレビに出るんだったら、ちゃんとおもしろくないとだめだよっていう美学をすごい持ってて。

秋山 日記にもそんなこと書いてましたよね。「番組の1コマとしてただ呼ばれてるだけで、要は芸がない」みたいなことを。ちゃんと見てるし、分析してるんでしょうね、多分ね。鋭い視点ですよね。

アンナ 長くても4行ぐらいの短い日記なんだけど、その短い文章で人を笑わせられるってすごいよね。切れ味がすごいの。私のこともいっぱい書いてあるんですよ。「何月何日、アンナが今日家にやってきた。何をしに来たかと言えば、家の電気代を払わずに電気が止まったそうだ。なんて野郎だ」って書いてあった。

秋山 なんて野郎だ(笑)。それもちゃんと日記にしてるんですね。

アンナ 「どうしてこんなことができるんだ。信じられない」っていう感じなんだよね。でも、それも愛情の裏返しで。当時はうるさいなと思ってたけど、叱ってくれるだけありがたいですよね、今思うと。

秋山 ほんとに細かかったですもんね、字も綺麗だし。几帳面。ご自身で「A型のA型のA型」っていうのは言ってたって。

アンナ そう。マメなのよ、とにかく。料理もそうだし、何でも。

写真=橋本篤/文藝春秋

(「文春オンライン」編集部)