体型管理に我慢はどの程度必要か。元三菱商事でhandsoming代表の宮村和宏さんは「体型管理も仕事と同じで、重要なのは気合や根性ではなく設計だ。食事量を半分にしたり、毎日走ったりする必要はない。満足感はそのままに、カロリーだけを投資対効果よく削ればいい」という--。

※本稿は、宮村和宏『太らない 人生を変える体型管理戦略』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

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■仕事も体型もマネジメントは同じ

私は三菱商事で働いていた頃から、ずっと不思議に思っていたことがあります。

何十億円ものプロジェクトを緻密に管理し、複雑な人間関係やトラブルにも冷静に対処できる人が、なぜか自分の2、3kgの体重になると、うまく管理できないのです。

冷静に考えれば、体型管理はそれほど複雑なプロジェクトではありません。難しいのは「どうすれば体重が落ちるか」ではなく、それを自分の生活の中で無理なく実行し、継続できる形にすることです。

仕事であれば、成果を出すために「どこを変えれば最も少ないコストで大きなリターンが得られるか」を考えるはずです。重要なものは残し、成果にほとんど貢献していない無駄を削る。それが普通のマネジメントです。

ところが体型管理になると、突然「ご飯を半分にしよう」「糖質を全部やめよう」「毎日走ろう」と、コストの高い施策を選んでしまう。

実は、体型管理も仕事と同じです。大切なのは、気合ではなく、最も投資対効果の高いところから変えることです。

体型管理において、大好きなものを我慢する必要はありません。

食事の量を一気に半分に減らす必要もありません。

必要なのは「置き換え」です。

自分にとってそれほど執着がないものを、満足感を変えずに少し軽いものへ入れ替える。

これだけで、天秤は少しずつ傾いていきます。

1日250kcalの差が、1カ月で約1kgの差になります。

気合いゼロ、我慢ゼロ。ただ選ぶものを少し変えるだけ。

この事実を理解すると、体型管理の見え方が全く変わります。

毎日完璧にカロリー計算をする必要もありません。

現状の生活の中から「自分にとってそれほど執着のないもの」を見つけ、それを「満足感を変えずに少し軽いものへ置き換える」。それだけで、体重の天秤は確実にマイナス方向へ傾き始めます。

ただし、置き換えには「投資対効果の高いコツ」があります。

何を何に置き換えれば、我慢することなく体型を管理できるのか。

それを知るために、まずは「栄養素の基本構造」を見ていきましょう。

■三大栄養素と置き換えの考え方

置き換えを実践するときに知っておきたいのが、PFCの基本です。

PFCとは三大栄養素と呼ばれる

Protein(タンパク質)、Fat(脂質)、Carbohydrate(炭水化物)

の頭文字を取ったものです。

タンパク質(Protein):1g=4kcal
脂質(Fat):1g=9kcal
炭水化物(Carbohydrate):1g=4kcal

脂質のカロリー密度は、タンパク質・炭水化物の2倍以上です。

つまり、同じ重さでも脂質が多いものほどカロリーが高くなる。

これを知ると、置き換えの方向が見えてきます。

豚バラを豚ロースにする。揚げ物を焼き物にする。ドレッシングをノンオイルにする。

量は同じでも、脂質を減らすだけでカロリーがかなり下がります。

難しい計算は必要ありません。

「脂質が多そう→少ないものへ」という方向感だけ覚えておけば十分です。

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■ただ「選び方」を変えるだけ

食事量を半分にすれば痩せますが、常に空腹という大きな「我慢」を伴います。

糖質をすべてゼロにするのも、主食を奪われるためほとんどの人にとっては苦行です。

これらはどちらも心的コストが高く、リバウンドのリスクをはらんでいます。

一方で、「脂質が多いものを、タンパク質が多いものに変える」という戦略は、食べる量そのものを大きく減らす必要がありません。

肉も魚も卵も食べる。食べるという行為自体は否定せず、ただ「選び方」を変えるだけです。

毎日完璧な選択をする必要はありません。

肉を選ぶなら、脂の多い部位から赤身の部位に少しずらす。

揚げ物ばかり食べていたなら、焼き物や蒸し物を選ぶ。

なんとなく惰性で頼んでいた高脂質なサイドメニューを、冷や奴や枝豆に変える。

「食べる量(満足感)」という自分にとって大切なものはキープしたまま、「カロリー(脂質)」だけをしれっと削る。

これが、忙しいビジネスパーソンにとって最も現実的で、一生続けられる戦略です。

■カロリーだけをしれっと削り落とす

例えば、「豚バラの野菜炒め」と「豚ロースの野菜炒め」は同じ豚肉を使った野菜炒めで、お皿にのっている料理のボリューム(見た目の量)は全く同じです。

しかし、使う部位を変えただけで、カロリーには劇的なインパクトが生まれます。

実際に、お肉100gで数字を比較してみましょう。

豚バラ肉(100g):約366kcal(脂質 約35g)
豚ロース肉(100g):約248kcal(脂質 約19g)

その差は、約118kcal。食べる量も、お腹の満足感も全く変えていないのに、ただ部位を置き換えるだけで100kcal以上のカロリーカットができてしまうのです(ロースカツをヒレカツかチキンカツに置き換えてもいいかもしれません)。

この「100kcal」という数字は、ご飯ならお茶碗半分程度、体重70kgの人なら約1.5kmのランニングで消費するエネルギーに相当します。

「ご飯1杯を我慢する」のも「忙しい合間を縫って3km走る」のも、心的コストや時間的コストが非常に高い行動です。

しかし、定食の注文を「ロース」に変えるだけなら、かかる労力はゼロ。まさに圧倒的な投資対効果の高さです。

理由は先述の通り、脂質です。豚バラ肉は非常に脂質が多く、豚ロースは脂質が少ない。

食べる量を半分にしたわけでも、肉を我慢して野菜だけにしたわけでもありません。

ちゃんと「豚肉の野菜炒め定食」を食べてお腹いっぱいになりながら、カロリーだけをしれっと削り落としているのです。

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■地味な変化こそが最強

もちろん、「私はどうしても豚バラのあの脂の甘みが大好きなんだ!」という熱烈なこだわりがあるなら、それはあなたにとって価値が高いものなので、無理に変える必要はありません。

でも、「とくに部位へのこだわりはなく、なんとなく豚バラを食べていた」のであれば、ここが絶好の置き換えポイントになります。

豚ももでも、ロースでもいい。鶏むねや鶏ももに変えてもいい。 大事なのは、「自分にとって我慢にならないことで、カロリー削減を狙うこと」です。

置き換えと聞くと、特別な食品を買わないといけないようなイメージを持つかもしれませんが、実際はもっと地味な作業です。

飲み物を変える。間食を変える。肉の部位を変える。調理法を変える。派手ではありませんが、この地味な変化こそが最強なのです。

なぜなら「我慢していないから続く」からです。

続くものは必ず積み上がり、確実な結果へとつながります。

■「健康的なもの」と「低カロリーなもの」は別

私が指導させていただいたある経営者の受講者も同じ罠にハマッていました。

宮村和宏『太らない 人生を変える体型管理戦略』(実業之日本社)

その方は健康意識がかなり高かったため、毎晩クライアントとの会食がある中でも、日頃から体に良いものを食べるように心がけていました。

お腹が空くと健康に良いからとナッツを食べ、朝食サラダにはオリーブオイルをたっぷり使っていたのです。

彼が変えたのは、ナッツとオリーブオイルだけです。

ナッツを低カロリーのスナックに替え、ノンオイルドレッシングにオリーブオイルを少しだけ足してかける。たったそれだけです。夜の会食は以前と全く同じ。本人が楽しみにしているものは何一つ変えていません。

それだけで3カ月で6kg落ちました。

さらに面白いのは、その後です。

体重が落ちてくると、その人は会食でも自発的に変わり始めました。

「お酒を少し減らしてみようか」
「揚げ物はたまには焼き物か蒸し物に替えてみよう」
筋トレも始めてみよう」

私が何も言っていないのに、本人が勝手に動き始めました。

天秤が傾き始めると、次の行動も自然に変わっていくのです。

「健康的なもの」と「カロリーが低いもの」は別のものです。

ナッツもオリーブオイルもとても体に良い食品です。

でも、体重の天秤はカロリーを見ています。

ここのズレに気づくことが、置き換えの最初の一歩です。

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宮村 和宏(みやむら・かずひろ)
handsoming(ハンサミング)代表取締役CEO
横浜国立大学卒業後、三菱商事に入社。石炭のトレーディング、事業投資、グループ・本部の経営企画部にて戦略立案に携わる。本業の傍らで、脳科学・行動心理学を活用し、①論理的に正しい、②実行可能、③継続可能な体型管理法であるハンサミングメソッドを開発。2023年に三菱商事を退職、handsomingを創業し、代表取締役CEOに就任。また、アスリートとしても活動しており、2019年に長崎で開催された日本ウルトラロングディスタンストライアスロン選手権で総合2位、その後もハワイでのアイアンマン世界選手権に2度出場。フルマラソンの自己ベストは2時間44分などの実績がある。
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(handsoming(ハンサミング)代表取締役CEO 宮村 和宏)